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◇148 第二の通路が開かれても…

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 Nightはカチッと言うまでクリスタルを回した。
 というか自分が回っていて、奥歯を噛んでいた。左腕が疲れて来たのか、今にも吊りそうになっている。しかしアキラたちの手は借りず、自分で1人で頑張っていた。
 けれどアキラはNightの体を持ち上げる。本当に子供みたいだ。

「よいしょ」
「お、おい。やめろ!」
「こうした方が早いでしょ? ほら、早く回して」
「チッ。わかった、動くなよ」

 Nightは舌打ちしたがこうなったアキラは止まらない。
 思った以上に体重が軽く、35キロから40キロぐらいか。アキラはNightを抱えてもまるで動じない。体幹を鍛えているのはアキラも同じだった。
 足腰でしっかりと固定し、気が付けば圧倒的に速く作業を終わらせていた。

 カチッ!

 軽快な音がした。絶対にはまってくれたはずだ。
 アキラとNightは赤く光るクリスタルがから光が照射されるのを真下で見届けていた。
 光は青龍を射している。つまり東、右側の壁だ。

「この奥に何かあるのか。探してみるぞ」
「探してみるって、そんな当てもなくやって大丈夫なの?」
「当てがないわけでもないぞ。どうやら最初の空洞。それがヒントだったらしい」

 確かに超古代文明の遺物を調べるような壮大なアドベンチャー映画だと、空洞の奥には部屋が続いているなんてかなりありがちな展開だ。

「とは言え、ヒントは簡単だ。光が照射されている壁面の煉瓦を押し込んでみればいい」

 Nightは赤く光ったクリスタルから照射される光に視線を移動させた。確かに一部の煉瓦だけが赤くなっている。
 コンコンコン! と軽快なリズムで叩いていた。しかし反応がない。
 アキラはNightの頼もしい背中を見守りながら、壁が開くのを待った。だけど一向に開かない。

「おかしいな。この煉瓦のはずなのに押しても叩いてもびくともしないぞ。もしかすると何か別のアプローチが」
「例えばなんだけどね……」

 アキラは困っていたNightを手伝おうとした。
 よくあるのは叩いたりなぞったり押し込んだりしたら空洞の先に行ける。けどアキラの発想はもっと単純シンプルだった。

「抜いてみればいいんじゃないかな?」
「はっ!? そんな馬鹿なことをすれば壁が……崩壊しないな」
「うん。壁が浮いてるね。って言うか、奥に何かない?」
「支柱のようだな。これで抑えていたのか。だとすればこれはブラフ……ん?」

 すると今度は部屋の中がガタガタと揺れ始めた。
 煉瓦を引き抜いた拍子に部屋が崩壊しかけているのか。雷斬とベルは周囲を警戒していつでも3人を連れて逃げられるように準備をする。
 けれど部屋の中心でNightはある違和感に気が付いていた。
 天井から埃が落ちてこない。おまけに揺れもない。
遺跡が崩壊するのなら何かを起動の合図にして基礎から破壊すればいいのだが、床は全く揺れておらず、壁面だけが揺れていた。まるで心理的トリックを利用して作り出された架空の恐怖を体験するアトラクションか何かのようで、子供騙しにすら感じる。

「変だね。床も天井も動いてないよ」
「そうだな動いているのは壁面だ。しかも上下に動いている……はぁっ!」

 Nightはあることに気が付いた。
 壁の中にあった支柱は何かスイッチになっており、いわゆるシャッターのような仕組みになっているのではないか。
 その予感は見事的中した。

「ねえ、正面の壁が動いているよー!」
「正面が動いているんじゃない。左右が上下に動くことで、床の高さを一段下げたんだ」

 フェルノが正面の壁が動いていることに気が付き指を差した途端、全てが確信に変わった。この古代遺跡は一種のアトラクションだ。
 Nightの予想通り、床の高さが変化して先程までなかったはずの階段が現れる。
 入り口から降りられるようになっており、床の高さが一段下がる。
奥に見えてきたのは一本の細い通路。人一人が歩くのがやっとなくらいだ。

「どうやらこれで謎は解けたな」
「でもこんな大規模な仕掛けが施されているなんて流石よね」
「おそらく相当時間をかけて作ったオブジェクト何だろうな。にしてもここまで安いとは……逆に度肝を抜かされた」

Nightなりの最高の誉め言葉。
単に難しい謎じゃなくて、一回頭の中を空っぽにすることが攻略の鍵なんて新しくて面白い。アキラも満足していて、Nightも笑みを浮かべていた。
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