143 / 556
◇142 歯車をはめてみよう
しおりを挟む
アキラ達は目を奪われていた。視線が自然と高い位置にある。
目の前にはその偉大さを遺憾なく発揮する巨大な建造物。所々が苔むしていて、蔦が絡まっている。
しかも見たこともない石でできており、これが大理石だろうか。
「大理石……にしては、色が濃いな。しかも不思議だ」
「何が不思議なの?」
アキラには正直何もわからなかった。フェルノも同じくだ。
けれど雷斬とベルは経験からか、周囲に視線を行き交わせる。
目にも耳にも、それこそ鼻にも生き物の気配を感じ取ることができない。
「アキラの後を追って正解だったみたいね」
「そうですね。あのまままっすぐ進んでいたら危かったようです」
「どうしてそんなことが言えるのさー」
フェルノは2人の違和感に口をはさむ。
アキラのあの感じは間違いない。だけどこの違和感は何だ。2人の思うところがフェルノにも伝染していた。
「そう言えばモンスターがいないね」
「おそらくだがあのまま道を順当に進んでいたら死んでいたな。運営も相当なペテンをしてくれる」
「それだけじゃないみたいだよー」
フェルノが感じた違和感の意図は別にある。
周囲から訳のわからない“熱”を感じていた。
「なんださー、この地面が温かいんだ。わからないけど」
「温泉でもあるのかな?」
「この辺りには日影がない。太陽熱が直射して熱が溜められている可能性だってある」
「そんな感じじゃなくて、【吸炎竜化】が警戒しているって感じかなー?」
フェルノ感じた違和感のソースはない。
だけど拳をかち合わせてわくわくしていた。フェルノは炎に引き寄せられるみたいに、胸が湧き立つ。
「ねえ、早く行こうよ! この先に何があるのか私気になるんだー」
フェルノが戦いたくてうずうずしていた。調子が上がってきたみたいだ。
アキラは意欲を汲み取り、遺跡の入り口に近づく。
入り口のようなでっぱり部分には屋根が付いており、扉のようなものもあるが閉ざされている。
中央には窪みのようなものがあり、Nightは指でなぞった。
「かなり特殊な加工だな。内側の二層目には細かい切込みがある」
「まるで歯車のようなものが入りそうですね。ですがどうしてあんな場所にやって来たのでしょうか?」
「それはわからない。こんな形のものを複数用意することは不可能だ」
これがゲームでなければ。
だから次がいつ来るかわからない。焦りは出てくる。だって自分たちだけの特権をいつ他のプレイヤーやギルドに奪われるかわからない。
うずうずしてたまらないところに、アキラが手を伸ばした。
「じゃあはめ込んでみるよ」
アキラはインベントリから歯車を取り出した。
ギザギザとした独特な形状の面を下にし、押し込むようにはめ込んだ。
パチッとパズルのピースが合うような気持ちのいい感覚。
歯車が扉を開くための鍵であると証明された。
ゴォォォォォォォォォォォォォォォ!
「な、何だか鈍い音だね」
「おそらく相当な時間熟成されていたんだろうな。老朽化のせいで仕掛け自体が欠けて古くなっているんだ」
「それで本当に開くのかな?」
「さあな。開かないようなら強硬手段でこじ開けるだけだ」
Nightはてこの原理を利用しようと画策する。
けれどそんな心配など最初から要らなかった。鈍い音を立てる一方で扉はゆっくりとだが開かれる。
驚きなのは、ゲームや映画でよくあるような下から上に上がる無茶な仕様ではなく、左から右にスライドする開き方だった。
「思ってたのと違うねー」
「そうですね。もう少し凝った仕掛けかと思っていましたが、意外に昔ながらの横開きを採用されているようです」
「この仕掛けを考えたプログラマーは、少しでも定説を覆したかったのかもしれないな。だが、そのせいで安いな仕上がりだ」
「それは可哀そうな言い方ね。えーっと、意外だったわ」
ベルも言葉に苦しんだ。
掃除機のようなけたたましい音を発しながらゆっくりと扉が開く。非常にゆっくり。5分経っても開かない。
「遅いね。こんなに仕掛けが開くのって遅いんだ」
「どれだけカビを再現したんだ。杜撰な仕掛けだ」
けれどその分だけ中はきっと凄いことになっているはずだ。ごくりと喉を鳴らして唾液が落ちてくる。
アキラ達は今か今かと待ちわびていた。待ちわびていた……のだが。
「あ、あれれ?」
「何だこれは。殺風景だな」
楽しみにしていた気持ちを壊された気分になり、アキラ達は古代遺跡の中を見て絶句した。
入り口が開かれた瞬間、待っていたのは暗く太い一本道。
そこに他の目ぼしいものはなく、謎の次も謎だった。謎と言うよりも杜撰だった。
目の前にはその偉大さを遺憾なく発揮する巨大な建造物。所々が苔むしていて、蔦が絡まっている。
しかも見たこともない石でできており、これが大理石だろうか。
「大理石……にしては、色が濃いな。しかも不思議だ」
「何が不思議なの?」
アキラには正直何もわからなかった。フェルノも同じくだ。
けれど雷斬とベルは経験からか、周囲に視線を行き交わせる。
目にも耳にも、それこそ鼻にも生き物の気配を感じ取ることができない。
「アキラの後を追って正解だったみたいね」
「そうですね。あのまままっすぐ進んでいたら危かったようです」
「どうしてそんなことが言えるのさー」
フェルノは2人の違和感に口をはさむ。
アキラのあの感じは間違いない。だけどこの違和感は何だ。2人の思うところがフェルノにも伝染していた。
「そう言えばモンスターがいないね」
「おそらくだがあのまま道を順当に進んでいたら死んでいたな。運営も相当なペテンをしてくれる」
「それだけじゃないみたいだよー」
フェルノが感じた違和感の意図は別にある。
周囲から訳のわからない“熱”を感じていた。
「なんださー、この地面が温かいんだ。わからないけど」
「温泉でもあるのかな?」
「この辺りには日影がない。太陽熱が直射して熱が溜められている可能性だってある」
「そんな感じじゃなくて、【吸炎竜化】が警戒しているって感じかなー?」
フェルノ感じた違和感のソースはない。
だけど拳をかち合わせてわくわくしていた。フェルノは炎に引き寄せられるみたいに、胸が湧き立つ。
「ねえ、早く行こうよ! この先に何があるのか私気になるんだー」
フェルノが戦いたくてうずうずしていた。調子が上がってきたみたいだ。
アキラは意欲を汲み取り、遺跡の入り口に近づく。
入り口のようなでっぱり部分には屋根が付いており、扉のようなものもあるが閉ざされている。
中央には窪みのようなものがあり、Nightは指でなぞった。
「かなり特殊な加工だな。内側の二層目には細かい切込みがある」
「まるで歯車のようなものが入りそうですね。ですがどうしてあんな場所にやって来たのでしょうか?」
「それはわからない。こんな形のものを複数用意することは不可能だ」
これがゲームでなければ。
だから次がいつ来るかわからない。焦りは出てくる。だって自分たちだけの特権をいつ他のプレイヤーやギルドに奪われるかわからない。
うずうずしてたまらないところに、アキラが手を伸ばした。
「じゃあはめ込んでみるよ」
アキラはインベントリから歯車を取り出した。
ギザギザとした独特な形状の面を下にし、押し込むようにはめ込んだ。
パチッとパズルのピースが合うような気持ちのいい感覚。
歯車が扉を開くための鍵であると証明された。
ゴォォォォォォォォォォォォォォォ!
「な、何だか鈍い音だね」
「おそらく相当な時間熟成されていたんだろうな。老朽化のせいで仕掛け自体が欠けて古くなっているんだ」
「それで本当に開くのかな?」
「さあな。開かないようなら強硬手段でこじ開けるだけだ」
Nightはてこの原理を利用しようと画策する。
けれどそんな心配など最初から要らなかった。鈍い音を立てる一方で扉はゆっくりとだが開かれる。
驚きなのは、ゲームや映画でよくあるような下から上に上がる無茶な仕様ではなく、左から右にスライドする開き方だった。
「思ってたのと違うねー」
「そうですね。もう少し凝った仕掛けかと思っていましたが、意外に昔ながらの横開きを採用されているようです」
「この仕掛けを考えたプログラマーは、少しでも定説を覆したかったのかもしれないな。だが、そのせいで安いな仕上がりだ」
「それは可哀そうな言い方ね。えーっと、意外だったわ」
ベルも言葉に苦しんだ。
掃除機のようなけたたましい音を発しながらゆっくりと扉が開く。非常にゆっくり。5分経っても開かない。
「遅いね。こんなに仕掛けが開くのって遅いんだ」
「どれだけカビを再現したんだ。杜撰な仕掛けだ」
けれどその分だけ中はきっと凄いことになっているはずだ。ごくりと喉を鳴らして唾液が落ちてくる。
アキラ達は今か今かと待ちわびていた。待ちわびていた……のだが。
「あ、あれれ?」
「何だこれは。殺風景だな」
楽しみにしていた気持ちを壊された気分になり、アキラ達は古代遺跡の中を見て絶句した。
入り口が開かれた瞬間、待っていたのは暗く太い一本道。
そこに他の目ぼしいものはなく、謎の次も謎だった。謎と言うよりも杜撰だった。
10
お気に入りに追加
214
あなたにおすすめの小説
【完結済み】VRゲームで遊んでいたら、謎の微笑み冒険者に捕獲されましたがイロイロおかしいです。<長編>
BBやっこ
SF
会社に、VRゲーム休があってゲームをしていた私。
自身の店でエンチャント付き魔道具の売れ行きもなかなか好調で。なかなか充実しているゲームライフ。
招待イベで魔術士として、冒険者の仕事を受けていた。『ミッションは王族を守れ』
同僚も招待され、大規模なイベントとなっていた。ランダムで配置された場所で敵を倒すお仕事だったのだが?
電脳神、カプセル。精神を異世界へ送るって映画の話ですか?!
VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
病弱な私はVRMMOの世界で生きていく。
べちてん
SF
生まれつき体の弱い少女、夏凪夕日は、ある日『サンライズファンタジー』というフルダイブ型VRMMOのゲームに出会う。現実ではできないことがたくさんできて、気が付くとこのゲームのとりこになってしまっていた。スキルを手に入れて敵と戦ってみたり、少し食事をしてみたり、大会に出てみたり。初めての友達もできて毎日が充実しています。朝起きてご飯を食べてゲームをして寝る。そんな生活を続けていたらいつの間にかゲーム最強のプレイヤーになっていた!!
Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組
瑞多美音
SF
福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……
「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。
「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。
「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。
リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。
そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。
出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。
○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○
※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。
※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。
ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り
星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
注意事項
※主人公リアルチート
暴力・流血表現
VRMMO
一応ファンタジー
もふもふにご注意ください。
現実逃避のために逃げ込んだVRMMOの世界で、私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
この作品は 旧題:金運に恵まれたが人運に恵まれなかった俺は、現実逃避するためにフルダイブVRゲームの世界に逃げ込んだ
の内容を一部変更し修正加筆したものになります。
宝くじにより大金を手に入れた主人公だったが、それを皮切りに周囲の人間関係が悪化し、色々あった結果、現実の生活に見切りを付け、溜まっていた鬱憤をVRゲームの世界で好き勝手やって晴らすことを決めた。
そして、課金したりかわいいテイムモンスターといちゃいちゃしたり、なんて事をしている内にダンジョンを手に入れたりする主人公の物語。
※ 異世界転移や転生、ログアウト不可物の話ではありません ※
※修正前から主人公の性別が変わっているので注意。
※男主人公バージョンはカクヨムにあります
【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-
双葉 鳴|◉〻◉)
SF
Atlantis World Online。
そこは古代文明の後にできたファンタジー世界。
プレイヤーは古代文明の末裔を名乗るNPCと交友を測り、歴史に隠された謎を解き明かす使命を持っていた。
しかし多くのプレイヤーは目先のモンスター討伐に明け暮れ、謎は置き去りにされていた。
主人公、笹井裕次郎は定年を迎えたばかりのお爺ちゃん。
孫に誘われて参加したそのゲームで幼少時に嗜んだコミックの主人公を投影し、アキカゼ・ハヤテとして活動する。
その常識にとらわれない発想力、謎の行動力を遺憾なく発揮し、多くの先行プレイヤーが見落とした謎をバンバンと発掘していった。
多くのプレイヤー達に賞賛され、やがて有名プレイヤーとしてその知名度を上げていくことになる。
「|◉〻◉)有名は有名でも地雷という意味では?」
「君にだけは言われたくなかった」
ヘンテコで奇抜なプレイヤー、NPC多数!
圧倒的〝ほのぼの〟で送るMMO活劇、ここに開幕。
===========目録======================
1章:お爺ちゃんとVR 【1〜57話】
2章:お爺ちゃんとクラン 【58〜108話】
3章:お爺ちゃんと古代の導き【109〜238話】
4章:お爺ちゃんと生配信 【239話〜355話】
5章:お爺ちゃんと聖魔大戦 【356話〜497話】
====================================
2020.03.21_掲載
2020.05.24_100話達成
2020.09.29_200話達成
2021.02.19_300話達成
2021.11.05_400話達成
2022.06.25_完結!
Beyond the soul 最強に挑む者たち
Keitetsu003
SF
西暦2016年。
アノア研究所が発見した新元素『ソウル』が全世界に発表された。
ソウルとは魂を形成する元素であり、謎に包まれていた第六感にも関わる物質であると公表されている。
アノア研究所は魂と第六感の関連性のデータをとる為、あるゲームを開発した。
『アルカナ・ボンヤード』。
ソウルで構成された魂の仮想世界に、人の魂をソウルメイト(アバター)にリンクさせ、ソウルメイトを通して視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、そして第六感を再現を試みたシミュレーションゲームである。
アルカナ・ボンヤードは現存のVR技術をはるかに超えた代物で、次世代のMMORPG、SRMMORPG(Soul Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)として期待されているだけでなく、軍事、医療等の様々な分野でも注目されていた。
しかし、魂の仮想世界にソウルイン(ログイン)するには膨大なデータを処理できる装置と通信施設が必要となるため、一部の大企業と国家だけがアルカナ・ボンヤードを体験出来た。
アノア研究所は多くのサンプルデータを集めるため、PVP形式のゲーム大会『ソウル杯』を企画した。
その目的はアノア研究所が用意した施設に参加者を集め、アルカナ・ボンヤードを体験してもらい、より多くのデータを収集する事にある。
ゲームのルールは、ゲーム内でプレイヤー同士を戦わせて、最後に生き残った者が勝者となる。優勝賞金は300万ドルという高額から、全世界のゲーマーだけでなく、格闘家、軍隊からも注目される大会となった。
各界のプロが競い合うことから、ネットではある噂が囁かれていた。それは……。
『この大会で優勝した人物はネトゲ―最強のプレイヤーの称号を得ることができる』
あるものは富と名声を、あるものは魂の世界の邂逅を夢見て……参加者は様々な思いを胸に、戦いへと身を投じていくのであった。
*お話の都合上、会話が長文になることがあります。
その場合、読みやすさを重視するため、改行や一行開けた文体にしていますので、ご容赦ください。
投稿日は不定期です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる