140 / 592
◇140 人の精神を変える力
しおりを挟む
カチッ! カチッカチッ!
部屋の中でパソコンをカタカタとさせる音が響く。
マウスカーソル片手に、明輝はパソコンのディスプレイを睨めっこしていた。
「本当だ。精神レベルが高いとプレイヤーとの戦闘で有利になるんだ」
蒼伊に言われたことが気になってどうしても調べてしまった。
すると公式ホームページのQ&Aコーナーに答えが書いてあった。
そこにはこんな一文がある。
Q 精神のパラメータはどんな意味があるんですか?
A 精神のパラメータはステータス上における個人の精神レベルに値します。この数値が高ければ高いほど精神攻撃に耐性があることを差します。またプレイヤーや特定のモンスターとの戦闘における相手のMP(メンタル・ポイント)の損傷に繋がります。
Q MPを失うとどうなりますか?
A HPを失ったとき同様消滅し強制的にログアウトされます。行こう24時間の再ログインができません。また極度に自分と相手の精神に差異がある場合、精神のパラメータが高いプレイヤーの攻撃はその差の割合分だけMPを消費させます。
Q MPを失いログアウトすると虚無感に襲われますが、病院に行った方がいいですか?
A 本商品はある種の実験的な意味合いがありますが、必要とあれば病院に行くことをお勧めします。ただし本商品を使用している場合、消費者は契約書に合意したこととなります。本商品を使用される前に認証を要求されたものがその証明になります。
またMPが0になった場合、一時的な虚無感に苛まれるでしょうがご心配ありません。
その状態は体と精神がトランス状態に入っていることを表し、急速に回復することへの暗示です。稀にそのような現象が起こらない場合がございますが、日常生活には何ら支障がございません。
※ 現時点で確認されているMPO(メンタル・ポイント・アウト)を起こしたプレイヤーはMPOされる以前よりも良好に過ごせております。衛星により確認させていただ
きました。
Q 精神はどのようにすれば上がりますか?
A 精神のパラメータは個人の成長によるもののため、ステータス上での上り幅は操作できません。
とか何とか書いてあった。
どうやら蒼伊の言っていたことは本当らしく、明輝は少し怖くなった。
確かにゲームを開始する前に同意書がデータ上で出てきたが、ほとんど読まなかった。
自分のせいなのだが、そんな情報が公開されていたなって初耳だ。
「凄いね。じゃあ私ってなかなか凄いことしたのかな?」
放心状態になっていた。つまり昨日明輝が倒したプレイヤー達はみんな虚無感に苛まれているはずだ。
だけどその効果で二度とこんな酷いことはしないで欲しいと願った。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
パソコンのディスプレイに目を落とした彼女は期待以上の変化ににやけ顔をしていた。
そこにやって来たのは短髪で長身の男。
口元をマフラーで覆い隠し、細い目だけが窺える。
「どうですか、社長」
「素晴らしい成果です。期待以上のものですよ」
「ありがとうございます。今回は、彼らにも手伝っていただきましたよ」
男は不敵な笑みを浮かべていた。
NPCを平気で襲うプレイヤー達を見つけ声を掛け、誰かに倒させようと試みていた。
それが彼がゲーム内で行っていた行為。本物の警備騎士はプレイヤーだったというわけだ。
「それにしても、相変わらず彼女は面白いですね。流石は社長が目を付けた子です」
「やはり彼女は想像を超えてくる。だから面白いんです。そして……とても愛おしい」
社長と呼ばれた女性は、うっとりと頬杖をついた。ディスプレイに浮かぶたくさんの緑色のラインが脈打つ。常に精神が進化している。
この結果がどう転ぶか。おそらく良い方に転ぶでしょう。彼女は常に読んでいた。
まるで未来を視ているかのように、ことごとくが彼女の思い通りだった。しかしディスプレイに浮かぶ少女、××だけはその範疇を凌駕していた。
だからこその期待以上だとは彼女以外は気づいていない。
成長しているのは精神力だけではないことを。
部屋の中でパソコンをカタカタとさせる音が響く。
マウスカーソル片手に、明輝はパソコンのディスプレイを睨めっこしていた。
「本当だ。精神レベルが高いとプレイヤーとの戦闘で有利になるんだ」
蒼伊に言われたことが気になってどうしても調べてしまった。
すると公式ホームページのQ&Aコーナーに答えが書いてあった。
そこにはこんな一文がある。
Q 精神のパラメータはどんな意味があるんですか?
A 精神のパラメータはステータス上における個人の精神レベルに値します。この数値が高ければ高いほど精神攻撃に耐性があることを差します。またプレイヤーや特定のモンスターとの戦闘における相手のMP(メンタル・ポイント)の損傷に繋がります。
Q MPを失うとどうなりますか?
A HPを失ったとき同様消滅し強制的にログアウトされます。行こう24時間の再ログインができません。また極度に自分と相手の精神に差異がある場合、精神のパラメータが高いプレイヤーの攻撃はその差の割合分だけMPを消費させます。
Q MPを失いログアウトすると虚無感に襲われますが、病院に行った方がいいですか?
A 本商品はある種の実験的な意味合いがありますが、必要とあれば病院に行くことをお勧めします。ただし本商品を使用している場合、消費者は契約書に合意したこととなります。本商品を使用される前に認証を要求されたものがその証明になります。
またMPが0になった場合、一時的な虚無感に苛まれるでしょうがご心配ありません。
その状態は体と精神がトランス状態に入っていることを表し、急速に回復することへの暗示です。稀にそのような現象が起こらない場合がございますが、日常生活には何ら支障がございません。
※ 現時点で確認されているMPO(メンタル・ポイント・アウト)を起こしたプレイヤーはMPOされる以前よりも良好に過ごせております。衛星により確認させていただ
きました。
Q 精神はどのようにすれば上がりますか?
A 精神のパラメータは個人の成長によるもののため、ステータス上での上り幅は操作できません。
とか何とか書いてあった。
どうやら蒼伊の言っていたことは本当らしく、明輝は少し怖くなった。
確かにゲームを開始する前に同意書がデータ上で出てきたが、ほとんど読まなかった。
自分のせいなのだが、そんな情報が公開されていたなって初耳だ。
「凄いね。じゃあ私ってなかなか凄いことしたのかな?」
放心状態になっていた。つまり昨日明輝が倒したプレイヤー達はみんな虚無感に苛まれているはずだ。
だけどその効果で二度とこんな酷いことはしないで欲しいと願った。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
パソコンのディスプレイに目を落とした彼女は期待以上の変化ににやけ顔をしていた。
そこにやって来たのは短髪で長身の男。
口元をマフラーで覆い隠し、細い目だけが窺える。
「どうですか、社長」
「素晴らしい成果です。期待以上のものですよ」
「ありがとうございます。今回は、彼らにも手伝っていただきましたよ」
男は不敵な笑みを浮かべていた。
NPCを平気で襲うプレイヤー達を見つけ声を掛け、誰かに倒させようと試みていた。
それが彼がゲーム内で行っていた行為。本物の警備騎士はプレイヤーだったというわけだ。
「それにしても、相変わらず彼女は面白いですね。流石は社長が目を付けた子です」
「やはり彼女は想像を超えてくる。だから面白いんです。そして……とても愛おしい」
社長と呼ばれた女性は、うっとりと頬杖をついた。ディスプレイに浮かぶたくさんの緑色のラインが脈打つ。常に精神が進化している。
この結果がどう転ぶか。おそらく良い方に転ぶでしょう。彼女は常に読んでいた。
まるで未来を視ているかのように、ことごとくが彼女の思い通りだった。しかしディスプレイに浮かぶ少女、××だけはその範疇を凌駕していた。
だからこその期待以上だとは彼女以外は気づいていない。
成長しているのは精神力だけではないことを。
11
お気に入りに追加
226
あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。


元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

New Life
basi
SF
なろうに掲載したものをカクヨム・アルファポにて掲載しています。改稿バージョンです。
待ちに待ったVRMMO《new life》
自分の行動でステータスの変化するアビリティシステム。追求されるリアリティ。そんなゲームの中の『新しい人生』に惹かれていくユルと仲間たち。
ゲームを進め、ある条件を満たしたために行われたアップデート。しかし、それは一部の人々にゲームを終わらせ、新たな人生を歩ませた。
第二部? むしろ本編? 始まりそうです。
主人公は美少女風美青年?

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる