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◇137 PⅴPの続き

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  圧倒的勝利で終わった。
 かに思えたのはほんの一瞬のことだった——

「ふざけんなっ。何だそれ。俺達が負けるだと、冗談じゃねえ!」

 背後からアキラに倒されたリザードマンの男が立ち上がり、槍を突き出した。
 その顔は人間のものからトカゲの頭に変わっている。種族スキル【蜥蜴化】だ。

「あんなお遊びはノーカンだ。これでも食らえ!」

 アキラに槍の切っ先が迫る。けれどその刃が届くことはなかった。
 アキラ達無関係の人達を守るように白い鎧を纏ったNPCの騎士達が現れる。

「我ら警備騎士。町中での殺傷を含む戦闘行為を抑制する」
「敗北後24時間のログインを禁止する。総員かかれ!」

 警備騎士達が3体現れた。
 凄い迫力と表示されるレベルの高さに目を奪われる。

「レベル83! これなら……」
「どうだろうな」

 不穏な気配を感じ取ったNightは警備騎士の勝利を確信していない。
 起き上がったヘドロ男はリザードマンの男に近づこうとする警備騎士を感知すると、種族スキル【ヘドロ】を使って町中の広場に大量のヘドロがまるで沼のように出現する。
 警備騎士達は足を取られて動けなくなった。

「何だと!」
「お前ら弱い。攻略は簡単すぎる」

 種族スキル【ヘドロ】によって機動力を奪われた警備騎士達は乱雑に振り回す。
 しかし攻撃は一切当たることはなく、背後に忍び寄っていた鳥男が風を纏った短剣で背中を切り裂いた。

「ぐはっ!」

 警備騎士が消滅した。アキラが倒した時とは比べ物にならないぐらい強い。
 集まっていた観衆が散り散りになり逃げようとする中、ヘドロがどんどん溜まっていく。
 逃げ道はほとんど残されていない。
 気が付けば警備騎士達は全員やられてしまい、男達は集まっていた観衆に怒りを吐き散らす。

「やっぱり戦闘はこうでなくちゃな!」
「ここにいる全員血祭りにあげてやる」
「そうだね。風剣もそう言っているよ」

 NPCもプレイヤーもお構いなしだった。
 次から次へと剣や槍が集まっていた人たちを襲う。抵抗する人もいたが、圧倒的な戦闘スキルの前に成すすべなく散っていく。
 アキラはその光景に腹を立て、内側から悍ましい何かが飛び出そうとしていた。

「どうするのNight!」
「逃げるもしくは戦うだな。……アキラどうした?」

 さっきから黙り込んでいるアキラに違和感を感じたNightが声を掛けた。
 けれどアキラはNightの声が聞こえておらず、完全に1人だけの空間に入り込んでいる。
 まるで誰かと会話をしているようにも見える頷き方が違和感の種だった。

「どうしよう。このままじゃ……」
『どうしたいのかは貴女が決めることです。アキラにはその力がある』
「みんなを助けられるの? でもあんなに強いんだよ」
『こっちも奥の手を使いましょう。大丈夫です、【ユニゾンハート】は心を繋ぐ力。その能力は想えば想う程強く絡み合う』
「絡み合う?」
『そうです。【ユニゾンハート】は進化するスキルです。大丈夫、心をに打ち込めばきっと思いは届きます。さあ、皆さんの声を聞いてください』

 内側に潜む龍と会話していた。
 精神世界から帰還した時、既に10秒が経っていた。
 心配そうにしてるNight達。だけどアキラに迷いはない。

「これは私の対戦の延長戦。だから私が決着をつけるよ!」
「馬鹿何言っている。ここは全員で……」
「だから全員で行くの。みんな、私に力を貸して」

 Nightには理解できない域だった。
 少し前まで黙り込んでいたはずのアキラが宣言した後、自分達に見せた目には真っ直ぐな闘志が宿っていた。この惨状を見ても尚折れないで、全てを嫌悪するではなく包み込んで繋げてしまいそうな表情をしている。
 到底自分にはできない。Nightは改めてアキラの凄みを目の当たりにした。
 アキラには繋げる力がある。
 だからだろうか、ヘドロがこっちには来ていない。

「勝てるのですか、アキラさん?」
「勝てるかじゃなくてもちろん勝つよ。私負けないから」
「負けないって、凄いこと平気で言うわね。でも頑張って」

 雷斬もベルも最初は心配だったが、アキラの熱意を汲み取り背中を押す。
 フェルノも親指を立て、アキラを応援した。本当は戦いたくてうずうずしているはずだ。
 それからNightも溜息を込め「負けるなよ」と鼓舞すると、アキラは頷き叫んだ。

「行くよ、【ユニゾンハート】!」

 そう叫んだアキラの胸の内から湧き立つようなものを感じた。
 これまで感じたことのない波動と同時に、全身が一瞬龍のようなエフェクトに包まれたことをアキラは気が付いてはいなかった。
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