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◇130 【月跳】

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 早速白ウサギの突破口を見出すべく、アキラとNightの2人は攻撃を仕掛ける。
 【甲蟲】で腕の籠手をガントレットの代替え品に使い突撃するアキラに対し、皮ベルトの中からナイフを取り出し、白ウサギの足元を狙って投げつけるNight。
 全てのナイフにはもれなく火薬が仕込んである。ファンタジーゲームらしくはないが、Nightなりに最善を尽くそうとしてくれていた。

「ベル、点火しろ!」
「わかったわ」

 ベルは火の矢を放ち、投げつけたナイフに点火させる。
 見事な腕前は変わらずで、白ウサギの周りを囲うように地面に突き刺さった6本のナイフを連鎖的に燃やした。
 火薬に引火して炎が立ち込め、白ウサギの体を爆炎の中に閉じ込める。

「これでどうだ……」

 Nightらしくないが不安そうだった。
【ライフ・オブ・メイク】が使えない今、これ以上の手立ては残っていない。
 しかし検討空しく、白ウサギは爆炎の中でピンピンしていた。

「ダメみたいね。Nightも一回離れて」
「そうだな。……アキラ?」
「このままタイミングを逃すのは嫌だな。よし、とりあえず一撃浴びせるぞ!」
「おい、待て!」

 アキラは制止を振り切り白ウサギに飛び出した。
 根拠などは特にない。この隙を見過ごすなんてできないと、意識の切り替えが叫ぶ。
無鉄砲だが行けるという気持ちだけで突っ走り、砂埃の中を駆ける。
しかし爆炎を振り払った白ウサギの拳が、アキラの目の前を通り過ぎた。

「ヤバいっ! でも負けないよ。私の方が思いは強いんだよ!」

 アキラの拳が白ウサギの右脚を貫いた。
 ダメージはそれほどでもない。だけど手応えはあった。目の前にウィンドウがポップアップする。
 そこに映し出されたのは【キメラハント】文字と見慣れないスキル名。素早く読み込んだアキラだったが、白ウサギの拳が繰り出され忽然と姿を消した。

「アキラ!」
「ちょっとどうしよう。アキラの姿が消えちゃったよ!」
「落ち着け。アキラはやられたわけじゃない。きっと何処かに……」

 フェルノとNightはアキラの姿がないのでプチパニックになる。
 ベルも気配を辿るが平行線にはない。
 けれど雷斬は三次元的に気配を捉えると、不意に月明かりを気にした。

「皆さん、上です。上を見てください」

 雷斬は空を見上げて叫んだ。
 満月が彼方で眩い存在感を放つ一方で、一部を覆うように人の影が差し込んでいる。
 そこにいたのは紛れもなくアキラなのだが、何処となく首を捻る。
腕は【甲蟲】で武装しているが、足元が白くなっている。さらに頭からはウサギの耳が生えたみたいに見え、月ウサギのようだ。しかもその姿はまるで空を跳んでいるように映し出される。

「アキラ? アキラなの。どうして空を跳んでいるのさー!」
「フェルノの声? はぁ……さてと、せいやっ!」

 けれど持続時間は短く、アキラは空から落ちてきた。
 遠心力で体を回転させながら発達した足で白ウサギを叩きつける。
 HPは大幅に削れ、追撃を食らう前に空中を駆けた。まるで二段階ジャンプのようだ。

「アキラその足どうしたの?」
「ウサギのように白いですね。かなり発達しています」
「どうやら手に入れたようだな。久しぶりのスキルだ」
「そうだね。これが白ウサギから奪えたスキル、【月跳げっと】って言う空中を一度だけ跳べる能力だって」

 白ウサギから奪ったスキルは空中を跳ねる能力だった。
 月を跳ぶのはまさしく月ウサギに相応しい。
 しかも今回は頭に耳が付いている。初めてモンスターっぽい見た目にはなったが、何も意味がない。別にウサギのように360度めが付いているわけでもなく単なる飾りだった。

「つまり空中を駆る能力なのですね」
「うん。本当は360度見渡したかったけどね」
「欲張りが過ぎるぞ。にしても跳ぶだけはありきたりなものだな。だけどそれでいい。フェルノと一緒に翻弄してこい」
「「私達がやるんだね」」

 アキラとフェルノはNightに言われ、白ウサギを翻弄することにした。
 体が軽い。酸素の供給も追いついてきたみたいだ。
 ここからが本番。アキラ達は反撃を開始した。
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