VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

文字の大きさ
上 下
116 / 591

◇116 欲しいのはあの角

しおりを挟む
 今回の依頼の品は、ブラックメタルライノスの角だ。
 硬くて丈夫な角は加工には手間暇がかかるが、その分鋭い武器になる。
 主に使われる用途は短剣や槍の先端だ。
 熱にも強く、武器以外には置物に加工もされる。
 黒くて艶のある角の表面は見ているだけで美しかった。
 しかしそれだけ入手も困難で、ブラックメタルライノス自体が頻繁でもない。

「ここで逃せば違約金も大きい。絶対に捕まえるぞ」
「それはそうだけど、あの角ってもう生えてこないの?」
「どうしてそんなことを気にするんだ」
「だ、だって。元々サイの角って毛でしょ? 確かその角を求めて乱獲された事例もあるって……」
「絶滅危惧もいたよね」

 今更だが忍びない。
 実際のリアルでは際の密猟や乱獲があって問題視された。
 それにより数を減らした種もいる。
 だからゲームで自分たちのしていることが、リアルのそれと重なってしまい、踏み込もうにも踏み込めない。

「こっちでのサイは違う。確かに似たような種はいるが、だからと言ってこっちはモンスターだ。勝手にリスポーンする上に、ブラックメタルライノスは鉱石を食べる。それを主原料に1日もあれば完全復活だ」
「「そんなに早いの!」」
「ああ。だから気にするな」

 急にリアリティが消えた。
 アキラとフェルノも気合を入れ直す。
 もちろんさっきの設定は本当で、2人を丸め込む嘘じゃない。

「とにかく今は祈るしかない。このまま直進してくれればいい」
「そうだね。万が一に備えて追ってるけど、このままいけば」
「苦労が実るねー」

 3人には確信があった。
 無策ではないのはまさにこのこと。
 ブラックメタルライノスはエンジンを吹かしながら、直進していた。

「行ける行ける。このままいけば……」

 ブラックメタルライノスが盛り上がった地面を上った。
 すると突然動きを止め、目の前から消えた。
 ドカーン! と爆発音にも似た落下音が聞こえてきた。

「よしっ!」

 Nightが珍しくガッツポーズをした。
 そのことに目を奪われながらも3人は盛り上がった地面を上る。
 崖でもない。ただの小さな斜面を上ると、そこに広がるのは思い描いた予想図。

「うわぁ、本当に落ちてるよ。深く掘っておいてよかったね」
「深すぎるのも大変でしょ」

 ブラックメタルライノスは地面に彫られた穴の中の落ちていた。
 ブルーシートを被せられ、その上には砂が盛ってある。
 完全に外からでは視認できないように細工をした完璧な落とし穴だ。
 もちろん自然物ではない。意図的に用意した。

「流石に製作時間に3時間を掛けた甲斐はあったね」
「そうだよ。Nightがもっと早く重機を作ってくれたらよかったのに」
「そんなもの部品ごとででしか間に合わないだろ」

 ちなみに作ったのは穴掘り用のドリルだ。
 1つ1つ【ライフ・オブ・メイク】で部品を作り、簡易的ではあったが作ることができた。
 そして今回新たに追加されたのは、Nightの【ライフ・オブ・メイク】で作ったものは耐久値があり、その内壊れて消滅してしまうこと。
 一度作ったものは次に作る際に精度が上がることが判明した。
 新事実に驚いたのは言うまでもないので、想像してほしい。

「でもさ、まさかこんな原始的な方法に頼るなんてね」
「一番成功率は高い。奇襲や奇策は人間の深層心理の外側にあるものだからな。ドッキリ番組でも落とし穴はあるだろ」
「クッション用の発泡スチロールが敷かれてるけどね」
「だが地雷を見てみろ」
「それは……言えません」

 とにかく、しょぼい罠でも規模と注意を散漫化させればはまる。
 にしても新しい戦法も現実味がありすぎるが、ブラックメタルライノスはすぐに這い上がる。
 その前に少しだけ角の先端を貰い、睨まれる前にとんずらするする姿が何とも滑稽だった。
しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

New Life

basi
SF
なろうに掲載したものをカクヨム・アルファポにて掲載しています。改稿バージョンです。  待ちに待ったVRMMO《new life》  自分の行動でステータスの変化するアビリティシステム。追求されるリアリティ。そんなゲームの中の『新しい人生』に惹かれていくユルと仲間たち。  ゲームを進め、ある条件を満たしたために行われたアップデート。しかし、それは一部の人々にゲームを終わらせ、新たな人生を歩ませた。  第二部? むしろ本編? 始まりそうです。  主人公は美少女風美青年?

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

絶世のディプロマット

一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。 レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。 レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。 ※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

処理中です...