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◇125 閑散とした村

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 ゴーストタウン。
 ホラー映画とかで聞いたことがあるかもしれない。
 人が寄り付かなくなり寂れてしまった町。常に静かで、幽霊がいるような不気味さを感じる町のことだ。
 目の前の村はまさにその体をなしていて、アキラ達も不気味さを感じていた。

「誰もいないのかな?」
「そんなことはないだろう。ここを見てみろ」

 Nightは門の入り口付近に設置された鉄製の籠を見つける。
 棒の先端に籠が取り付けられ、まるで玉入れの籠だ。
 けれど中には燃え尽きた木片の破片や黒炭が入っている。

「これって?」
篝火かがりびですね。火を点けて目印にする道具ですね。現実で言うところの街灯のようなものです」
「なるほどねー。ってことは人がいてもおかしくないかなー」
「そうね。この燃えカス、まだ時間が経っていないみたい」

 フェルノとベルも即座に理解した。
 アキラも説明されたことを頭の片隅に遺しておくと、どうしてもここまで閑散としているのかが気になる。
 とは言え村の中に入ればわかるだろう。
 継ぎ接ぎの絆パッチワーク・フレンズの面々は、警戒は怠らないながらも村の中に入る。


 村の中はやはり静かだった。とは言え、閑散としているは間違いかもしれない。
 理由は村の中に入るとすぐに見えてくる。
 畑が立派に育っていた。大根のようなものが生えている。

「しっかりと葉が育っていますね。この世界の季節は現実のものに酷似しているとされていますが、冬になればいい大根ができるでしょうね」

 雷斬の見立てだとそのような見解が出る。
 しかし畑には誰もいない。今日は作業日じゃないのだろうか?
 それにしてはあまりにも寂しすぎる村の様子で、家畜などの心優しい動物系のモンスターの姿もない。

「もしかしてお祭りとかなのかな?」
「お祭りって?」
「だってこの季節イベントってお祭りみたいなものでしょ? もしかしたらその一環かもしれないよ」
「それならいいだろうが……残念だな」

 Nightは濁しながらだが否定する。
 周囲を見回して祭りのような雰囲気がないことは誰にもわかる。
 ましてや祭りのための装飾もなく、閑散として明るさは何もない。

「どうしたらいいのかな?」
「考えるも何も、村の奥に向かうぞ。誰かいるかもしれない」

 村の奥を目指して歩き始めた。
 左右には畑が広がっているが、緩やかな用水路を水が流れるだけで虫の囀りすら聞こえてこない。
 アキラは少し身震いしたが、村の様子は完全にゴーストタウンだった。

「誰もいないね」
「うん。人のぬくもりを感じない。都心部だとありえないよね」
「東京都心と比べるな。にしても暗いな。おーい、誰かいないのかー!」

 Nightは珍しく叫んだ。
 シーンと空気が冷たくなる。アキラ達も家々の戸を叩いて回った。けれど誰も出てこない。

「本当に誰もいないのかな?」
「そうかもねー。あっ、村長とかいるんじゃないの?」
「それもそうですね。村長のお宅を伺ってみましょうか」

 村のことを一番知っているはずの人に声を掛けてみる。
 情報収集も兼ねて村長の家に行ってみようとした。
 その時……

「村長様は今は外に出られませんよ」
「「「うわぁ!?」」」

 背後から声を掛けられた。
 素早く振り返ると白装束を身に付けた女性が立ち尽くしていた。
 頭は頭巾のようなもので覆い、冷たい目をしている。底が見えない。

「えーっと、貴女は」

 アキラは名前を伺った。
 彼女の名前は小雪。雪のような手をした肌の白い女性だ。
 
「村長様のところに行かれるのでしたらご案内いたします。ですがお気をつけてくださいね」

 急に不安になるような文言を吐かれて、アキラはごくりと喉を鳴らした。
 不気味な忠告はNPCが提供してくれる重要な情報源ソースだ。
 アキラたちは「警戒しようね」とコクコクと頷くと、いつでも逃げられるようにそそくさと村長の家に向かう。
 
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