124 / 591
◇124 満月山の道中
しおりを挟む
次の日。継ぎ接ぎの絆の面々は『スタット』の町を飛び出していた。
正直ここまで来たらモミジヤに行った方が近い気がするが、今回は我慢する。
アキラたちが向かっているのはとある山だ。
名前は満月山。満月と書いて『みつき』と読む。
「満月山って、月が綺麗なのかな?」
「どうだろうな。流石にそこまでは調べていない」
「そっか。Nightらしくないね」
「関係がないことだからな。それに何も調べていない訳じゃない。聞きたいか?」
Nightの好戦的な目が気になった。
知識勝負に持ち込まれたら論破される。ここはスルーパスだ。
「いいよ。それにNightが頼りになるのは知っているから」
「頼られ過ぎても困るがな。それで、この季節イベントはなんだ」
Nightは絶句した。
手に持った紙に視線を落とすと、そこには月のイラストに『お月見』と書かれていた。
まさか季節行事を持ってくるとは思わなかったが、それはそれで意外だ。
「まさかお月見なんてね。団子が食べられるのかなー?」
「花より団子じゃないんだ。お月見の体を守る意味でも、団子は出ないだろ」
「そんなー」
「ちょっと残念よね」
フェルノとベルは落ち込んだ。
肩を落とす2人に手を差し伸べる私は不意に気になることがあった。
今は何処に向かっているのか。
「そう言えば今って山に向かっているんだよねー?」
「いいえ違いますよ。このイベントのためにはとあるアイテムが必要ですから、そのアイテムの調達に向かっているんです」
「アイテムの調達?」
確かにこの季節限定イベントには特殊なアイテムが要ると書いてある。
けれどそのアイテムは何なのかは現地で調べる必要があり、誰も参加したがらない訳に納得がいく。
報酬が特に設定されているでもないので、時間の無駄を過ごす羽目になる。
しかも……
「推奨レベル35以上って書いてあるけど、2人は大丈夫なの?」
「オッケーだよ」
「問題ないわ。そのために必死でレベル上げしたんだからね」
フェルノは親指を立てた。
ベルはピースサインを作るとどちらも同じレベルまで上げて来たらしい。
お互い部活で忙しいので、まともにログインできなかったがレベル上げは効率的ではないにしろ、頑張っていたみたいだ。
その調子で今度の秋季大会も頑張って欲しい。
「しかもベルは弓を新調しましたよね」
「そうよ。だから使った分は稼がないと!」
ベルは雰囲気的に好調だった。
この間まで使っていた弓もシンプルで素敵だったが、今度のはどんな形だろう。
自分が使うではないが、楽しみなアキラはNightに言われて目が覚める。
「アキラも初期装備のショートソードからいい加減変えろ」
「でもまだ使えるよ?」
「そうとは言っても、【キメラハント】も上半身ばかりに集中しているだろ」
「確かに……」
正直自分でも納得した。
痛いところを突かれたというか、何故か上半身の特徴が多いモンスターとよく戦う。
今度は足元も強化したいと素直に願ったところ、雷斬がぽつりと唱えた。
「お月見と言えばウサギですよね」
「そのイメージは日本だけだ」
Nightはすぐさま論破する。別に雷斬も意図していったわけではないので、まるで傷つかない。アキラは補助的に回ろうとしたが、雷斬は「お気になさらないでください」と答えた。
それから視線を戻すと、目の前に小さな塊が見えてくる。
雷斬はまた首を後ろに回した。
「皆さん見えてきましたよ。あれが村です」
雷斬は指差した。
目の前には、丸太でできた手作りの門と柵がある。
しかし立派な造りで、アキラたちは少しだけ足早になった。けれどおかしなことに気が付く。
「何だか閑散としていませんか?」
「そうだな。不気味だ」
雷斬とNightは表情を曇らせる。
村に到着したものの、何故かはわからないが活気がなかった。
NPC達の声も聞こえないので、不審に思う。
もしかしてゴーストタウンかとゾクッとした。
正直ここまで来たらモミジヤに行った方が近い気がするが、今回は我慢する。
アキラたちが向かっているのはとある山だ。
名前は満月山。満月と書いて『みつき』と読む。
「満月山って、月が綺麗なのかな?」
「どうだろうな。流石にそこまでは調べていない」
「そっか。Nightらしくないね」
「関係がないことだからな。それに何も調べていない訳じゃない。聞きたいか?」
Nightの好戦的な目が気になった。
知識勝負に持ち込まれたら論破される。ここはスルーパスだ。
「いいよ。それにNightが頼りになるのは知っているから」
「頼られ過ぎても困るがな。それで、この季節イベントはなんだ」
Nightは絶句した。
手に持った紙に視線を落とすと、そこには月のイラストに『お月見』と書かれていた。
まさか季節行事を持ってくるとは思わなかったが、それはそれで意外だ。
「まさかお月見なんてね。団子が食べられるのかなー?」
「花より団子じゃないんだ。お月見の体を守る意味でも、団子は出ないだろ」
「そんなー」
「ちょっと残念よね」
フェルノとベルは落ち込んだ。
肩を落とす2人に手を差し伸べる私は不意に気になることがあった。
今は何処に向かっているのか。
「そう言えば今って山に向かっているんだよねー?」
「いいえ違いますよ。このイベントのためにはとあるアイテムが必要ですから、そのアイテムの調達に向かっているんです」
「アイテムの調達?」
確かにこの季節限定イベントには特殊なアイテムが要ると書いてある。
けれどそのアイテムは何なのかは現地で調べる必要があり、誰も参加したがらない訳に納得がいく。
報酬が特に設定されているでもないので、時間の無駄を過ごす羽目になる。
しかも……
「推奨レベル35以上って書いてあるけど、2人は大丈夫なの?」
「オッケーだよ」
「問題ないわ。そのために必死でレベル上げしたんだからね」
フェルノは親指を立てた。
ベルはピースサインを作るとどちらも同じレベルまで上げて来たらしい。
お互い部活で忙しいので、まともにログインできなかったがレベル上げは効率的ではないにしろ、頑張っていたみたいだ。
その調子で今度の秋季大会も頑張って欲しい。
「しかもベルは弓を新調しましたよね」
「そうよ。だから使った分は稼がないと!」
ベルは雰囲気的に好調だった。
この間まで使っていた弓もシンプルで素敵だったが、今度のはどんな形だろう。
自分が使うではないが、楽しみなアキラはNightに言われて目が覚める。
「アキラも初期装備のショートソードからいい加減変えろ」
「でもまだ使えるよ?」
「そうとは言っても、【キメラハント】も上半身ばかりに集中しているだろ」
「確かに……」
正直自分でも納得した。
痛いところを突かれたというか、何故か上半身の特徴が多いモンスターとよく戦う。
今度は足元も強化したいと素直に願ったところ、雷斬がぽつりと唱えた。
「お月見と言えばウサギですよね」
「そのイメージは日本だけだ」
Nightはすぐさま論破する。別に雷斬も意図していったわけではないので、まるで傷つかない。アキラは補助的に回ろうとしたが、雷斬は「お気になさらないでください」と答えた。
それから視線を戻すと、目の前に小さな塊が見えてくる。
雷斬はまた首を後ろに回した。
「皆さん見えてきましたよ。あれが村です」
雷斬は指差した。
目の前には、丸太でできた手作りの門と柵がある。
しかし立派な造りで、アキラたちは少しだけ足早になった。けれどおかしなことに気が付く。
「何だか閑散としていませんか?」
「そうだな。不気味だ」
雷斬とNightは表情を曇らせる。
村に到着したものの、何故かはわからないが活気がなかった。
NPC達の声も聞こえないので、不審に思う。
もしかしてゴーストタウンかとゾクッとした。
11
お気に入りに追加
226
あなたにおすすめの小説

New Life
basi
SF
なろうに掲載したものをカクヨム・アルファポにて掲載しています。改稿バージョンです。
待ちに待ったVRMMO《new life》
自分の行動でステータスの変化するアビリティシステム。追求されるリアリティ。そんなゲームの中の『新しい人生』に惹かれていくユルと仲間たち。
ゲームを進め、ある条件を満たしたために行われたアップデート。しかし、それは一部の人々にゲームを終わらせ、新たな人生を歩ませた。
第二部? むしろ本編? 始まりそうです。
主人公は美少女風美青年?

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。


妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる