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◇103 探検に行こうよ!

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  ギルドホームでのまったりとした時間を過ごす中、不意に雷斬が口にした。

「そう言えば本日は静かですね」
「フェルノがいないからね」

 アキラはすぐさま返す。
 別にフェルノが騒がしいわけではない。
 アキラも同調するからうるさく聞こえるだけだ。
 そこにNightが巻き込まれる形で捕捉するので話の展開が速くなり、雷斬とベルはその話しに耳を傾ける。
 けれど今日はその中心人物の2人が欠けている。
 そのためここまで静かな居住空間が完成したことに繋がった。

「お2人は何かご用事ですか?」
「うん。フェルノは部活で、3日間ぐらい合宿でいないんだ。Nightは家族旅行。今はハワイの方に言っているみたいだけど、夜にはログインできるって」

 2人の都合は最初から織り込み済みだ。
 フェルノに至っては数日前から山の方に部活の合宿があるとかで張り切っていた。
 夏なのに蒸し暑い山に行くことには不満を垂らしていたけれど、楽しそうで何よりだ。
 一方のNightは久々に帰って来た両親と兄と姉に引っ張られて海外旅行。
 お金持ちなのは知っていたけれど、意外にハワイなのはベタすぎた。
 だけど食事とかは凄いらしく、本人がインドアな気質なせいもあり普段から旅行の際はいやいや引っ張られるらしい。

「お土産楽しみだなー」
「お土産って、もしかして頼んでたの?」

 ベルが尋ねる。
 アキラはそれに対して首を横に振った。
 別に頼んではいないけど、Nightの性格的にアキラの考えていることを読んできそうだった。

「ううん。でもNightなら買って来てくれると思うんだ」
「どれだけ信頼しているのよ」
「信頼しているからこそ、わざわざメッセージのやり取りで事細かに教えてくれるんでしょ? だって、ゲームの中でまで勉強を見てもらったんだもん」

 あの日、1学期期末テストの数日前だ。
 冒険もせずダンジョンにも潜らず、アキラたち3人はNight先生の徹底した予測を武器にしてテスト勉強に励んだ。
 その結果なんと普段は中間ぐらいの点数しか取れないアキラは上位に食い込み、社会のテストではフェルノがトップ10入りを果たした。

「それって元々ポテンシャルは合ったんじゃないの?」
「そうかも。でも予測って凄いよね」
「予測ができるのはそれだけ知識を有しており、経験を積んだ証でしょうね。Nightさんは何かされていたのでしょうか?」
「FPSをやっているらしいよ。ソロで100人規模のガン・アクションゲームで何度も1位を取っているんだって。大型大会で優勝したこともあるらしいよ」
「それは凄いですね。道理で周りの様子を把握する力が優れているわけです」

 雷斬の見立ては正しかった。
 そんなこんなでアキラたちはこの場にいない人たちの話をしていると、ふとしたことでアキラは2人に提案した。

「そうだ。このメンバーだけって珍しいから、何かしようよ」
「何かってなによ」
「そうですね。アキラさんは何かやりたいことがあるのですか?」
「うん。さっきベルと少し話をしていたけど、この島の探索をしたくて」

 アキラは唐突だった。
 しかしベルも「あー」と口にして肯定的な反応を示す。

「いいわね、それ。私もこの島のこと気になっていたのよ」
「正直1人で探索するのは怖くて。2人の協力が欲しいんだ」

 アキラは2人にお願いした。
 しかしベルは最初からそのつもりで、雷斬も考える時間は持たない。
 もちろんアキラたちに従う。
 雷斬もこの島のことには少し興味があった。

「わかりました。早速準備をしましょうか」
「うん。マッピング能力が少し薄いメンバーだけど、何処まで行けるか挑戦してみようよ!」
「そうね。マッピング苦手なね」

 ベルが強調した。
 破壊不可のエフェクトがないといいんだけど、この島のことを何も知らない3人だった。
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