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◇97 不思議な馴染み方

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  アキラはリスが目覚めるのを待っていた。
 仰向けのまま動かないニードル・スクオロルをじっと観察していると、尻尾がへなっていた。
 何だか触りたくなってしまい、右手を近づけると急に目を開けた。

「あっ、起きた」

 スッと手を引いた。
 リスは周囲を見回しながらキョロキョロしている。可愛い。
 アキラはしゃがみ込んだまま目線を下げると、ニードル・スクオロルは敵意を示さなかった。

「大丈夫? 疲れてるみたいだったけど」

 アキラは声をかけてみた。
 しかし何も反応はない。
 それもそうだよね。野生のモンスターに声をかけても何も返ってくるはずがない。
 動物と仲良くなったら意思疎通ができると思ったんだ。

 だけど……

「あれ?」

 キョロキョロと周囲を見回すリス。
 するとアキラにすり寄って来た。
 もしかしたら針で刺されるかもしれないと思い一瞬身構えるが、針が飛び出てくることはなかった。

「あれ? もしかして仲良くなったのかな?」

 すり寄っては来てくれた。
 肩に乗ったりしてくれる。
 ちょっと重たいなと思ったが嬉しかった。だけどこれもプログラムと考えると少し冷めてしまうが、リスは急に声を上げて走り出した。

「えっ!? ちょっと待ってよ」

 何が起きているんだ。
 アキラは驚きつつも、リスを追いかけて走り出した。


 アキラはリスを追いかけた。
 小さいから途中で見失ってしまうけど、その度に声を上げて教えてくれる。
 まるでアキラを導いてくれているようだった。

「何処に行こうとしているんだろう。それになんで私に……」

 アキラは少し怖くなった。疑問に思う前に考えるのはやめる。
 意識を切り替えようにも、何故か不思議な空気が流れてしまいそれが出来ない。
 ポワポワした気分になる中、私はふと意識を切り替えるのを止めてみた。

「すぅーはぁーすぅーはぁー」

 呼吸を整える。
 すると頭がすっきりしてくる。
 先程までの重苦しさが抜けていき、ポワポワ感がまとまった空気に変わる。

「あれ? いつもより体が軽い? と言うよりも馴染むのかな」

 不思議な感覚に襲われる。
 襲われるというよりも、肌に馴染んで纏まった。
 アキラは澄んだ空気に包まれて何かこう、一歩先に行った気がする。
 悪い感覚はなく、むしろ好意的な馴染み方だ。

「ごめんね、それで何処に行くの?」

 リスが待っていてくれた。
 クリクリの可愛いお目目でアキラを凝視し、アキラも腰を低くして話しかけた。
 するとリスが首を左に捻る。アキラも反射的に首を向けると、何故か茨でできた道が広がっていた。

「嘘でしょ! さっきまでなかったよね」

 アキラは叫んでしまった。
 声が虚空の何処かに消えてしまう。
 けれどリスは反応することもなく、モンスターが寄ってくることもない。
 かと思えばニードル・スクオロルは茨の道の中に向かっていた。

「今度はこっちなの? うわぁ、痛そう」

 ツンツンしている棘に触ってみると普通に痛い。
 HPは削れていないが、痛みだけははっきりと伝わった。

「あっ、ごめんごめん。ちょっと待ってね」

 リスはずっと待っていてくれた。
 アキラは注意しながら茨の道を進んでいく。
 少しでも広く取ろうとすれば、体が茨に触れて痛い。ゆっくり慎重に進んでいく。

「今度はこっちなの?」

 どんどん茨の道が狭くなる。
 トンネル状になっているので、天井の高さも低くなるんだ。
 腰を曲げてゆっくり慎重に進むけど、リスはどんどんと先に行ってしまう。

「ちょっと待ってよ。本当何処に連れて行ってくれるんだろう」

 アキラは少しだけ不安になった。
 もしかしたら騙されているんじゃないかと思ってしまう。
 しかし考えても仕方ない。ここまで付いて来てしまった以上、何の成果もなしに振り返って帰るなんてできない。そもそも物理的にできない。

「ほんと、この森ってどうなってるの。生態系が不思議だよ」

 ちょっと頭いいふりをして口にする。
 正直アキラの頭の中は空っぽだった。
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