93 / 555
◇92 風の中、真の一射
しおりを挟む
アキラとNightがツインビーを相手取る中、弓を携えたベルは神経を研ぎ澄ませる。
すると彼女の周りを風が吹き抜けた。
柔らかい風、激しい風。全てを入り交えたみたいに、体中を駆け巡る。
「一射必中。心象の矢! 【心射必中】行けっ!」
指先から弦を放すまでに伝わったのは、僅か0.2秒。
今までにない集中力が功を奏したのか、矢は綺麗に放たれる。
風や気流の流れを完全に無視し、放たれた一射はツインビーの細い体を繋ぎ目から貫いた。
「言ったでしょ。私は風が吹いている時の方が精度がいいのよね」
ツインビーはバラバラになった。
空中分解してしまい、塵になるよりも早く本体が崩れていた。
「こんなに強いのに、ベルのスキル」
「大概だ。一射目は確実に敵を射抜き、精神にまでダメージを与えるなんてな」
「うーん、そこまでは考えたことはないかな。でもありがとう、助けに来てくれて」
「Nightに伝えたら、教えてくれたんだ。この場所は危険だって」
「そうらしいわね。でもなんで……」
ベルは考え出した。
それもそのはず、先程まで何も起きなかったはずなのに急に襲って来たんだ。
しかしNightは答えを知っていたので、空に向かって指を差した。
「正解はこれだ」
「太陽? もしかして陽が出ているときに襲って来るの?」
「そうだ。ツインビーはその性質で暗闇での行動は極力しない。理由は単独行動故に、群れでの戦闘には不向きだからだ。だから活動時間は昼間、しかも午後からに限られる。この世界では、例外を除いて時間帯が固定されていない。リアルの1日でこの世界は3日の時を過ごす。それを鑑みればわかるだろう」
つまりツインビーは午後から出てきて、1人でいるところを襲う。
強力な毒針で敵を殺してしまうんだ。何て恐ろしい。改めて言うが、怖いと思った。
「そっか。でもそんな相手の攻撃をよく受けきったわね」
「私のスキルです。って、Night上手くいったよ。久しぶりに獲得したみたい」
アキラはポップアウトしたメッセージを見て驚いた。
だけどいつもと少し違う様子だ。
固有スキル:【キメラハント】
『新しいスキルを構築しました。ツインビー:【2段階攻撃】』
まさかの毒強化じゃなかった。
それもそうだ。私はオロチコンダを倒したから【毒無効】が使える。
その影響かは知らないが、いつもとは違う様相のスキルを奪い取っていた。
「【2段階攻撃】? テイストが違うな」
「そうだよね。もしかして、ダメージが倍加するのかな」
「そんなチートスキル……いやお前はチートみたいなものか」
「どういう意味それ!」
アキラは抗議を入れる。しかしNightは勝手に納得してしまい聞く耳を持たない。
本当に変わっていると感じた。しかしベルは何処となく自分の肌に合っていると思い、気が抜けてクスッと笑ってしまう。
「ふふっ。やっぱりこのパーティー面白いわね」
「パーティーじゃなくてギルドだけどね」
「どっちでもいいわよ。でも決めた。私も入ってみるわ、貴女達のギルド」
あまりに急すぎて理解が追い付かなかった。
アキラは意識の切り替えが早いとはいえ、Nightでさえ何も繋がりが見えないので一瞬動揺したが、すぐに気を取り直す。
「随分と風向きが変わったな」
「そうかな? 私はこんなよ」
「……まあいい。それで決め手は何だったんだ」
「決め手? うーん、面白いからかな」
Nightは言葉を失う。
長い沈黙の間アキラは考えていた。ベルが如何してパーティーにいやギルドに加入してくれたのか。それはきっとツインビーに襲われた自分を助けてくれたから。そのことに気が付いているのに、心のどこかで言い出せない気持ちがあるんだと、素直になれないベルの心を同調することで完全に見透かしていたんだ。
だけどそれがまた可愛いと思い眺める、いつものアキラなのだった。
すると彼女の周りを風が吹き抜けた。
柔らかい風、激しい風。全てを入り交えたみたいに、体中を駆け巡る。
「一射必中。心象の矢! 【心射必中】行けっ!」
指先から弦を放すまでに伝わったのは、僅か0.2秒。
今までにない集中力が功を奏したのか、矢は綺麗に放たれる。
風や気流の流れを完全に無視し、放たれた一射はツインビーの細い体を繋ぎ目から貫いた。
「言ったでしょ。私は風が吹いている時の方が精度がいいのよね」
ツインビーはバラバラになった。
空中分解してしまい、塵になるよりも早く本体が崩れていた。
「こんなに強いのに、ベルのスキル」
「大概だ。一射目は確実に敵を射抜き、精神にまでダメージを与えるなんてな」
「うーん、そこまでは考えたことはないかな。でもありがとう、助けに来てくれて」
「Nightに伝えたら、教えてくれたんだ。この場所は危険だって」
「そうらしいわね。でもなんで……」
ベルは考え出した。
それもそのはず、先程まで何も起きなかったはずなのに急に襲って来たんだ。
しかしNightは答えを知っていたので、空に向かって指を差した。
「正解はこれだ」
「太陽? もしかして陽が出ているときに襲って来るの?」
「そうだ。ツインビーはその性質で暗闇での行動は極力しない。理由は単独行動故に、群れでの戦闘には不向きだからだ。だから活動時間は昼間、しかも午後からに限られる。この世界では、例外を除いて時間帯が固定されていない。リアルの1日でこの世界は3日の時を過ごす。それを鑑みればわかるだろう」
つまりツインビーは午後から出てきて、1人でいるところを襲う。
強力な毒針で敵を殺してしまうんだ。何て恐ろしい。改めて言うが、怖いと思った。
「そっか。でもそんな相手の攻撃をよく受けきったわね」
「私のスキルです。って、Night上手くいったよ。久しぶりに獲得したみたい」
アキラはポップアウトしたメッセージを見て驚いた。
だけどいつもと少し違う様子だ。
固有スキル:【キメラハント】
『新しいスキルを構築しました。ツインビー:【2段階攻撃】』
まさかの毒強化じゃなかった。
それもそうだ。私はオロチコンダを倒したから【毒無効】が使える。
その影響かは知らないが、いつもとは違う様相のスキルを奪い取っていた。
「【2段階攻撃】? テイストが違うな」
「そうだよね。もしかして、ダメージが倍加するのかな」
「そんなチートスキル……いやお前はチートみたいなものか」
「どういう意味それ!」
アキラは抗議を入れる。しかしNightは勝手に納得してしまい聞く耳を持たない。
本当に変わっていると感じた。しかしベルは何処となく自分の肌に合っていると思い、気が抜けてクスッと笑ってしまう。
「ふふっ。やっぱりこのパーティー面白いわね」
「パーティーじゃなくてギルドだけどね」
「どっちでもいいわよ。でも決めた。私も入ってみるわ、貴女達のギルド」
あまりに急すぎて理解が追い付かなかった。
アキラは意識の切り替えが早いとはいえ、Nightでさえ何も繋がりが見えないので一瞬動揺したが、すぐに気を取り直す。
「随分と風向きが変わったな」
「そうかな? 私はこんなよ」
「……まあいい。それで決め手は何だったんだ」
「決め手? うーん、面白いからかな」
Nightは言葉を失う。
長い沈黙の間アキラは考えていた。ベルが如何してパーティーにいやギルドに加入してくれたのか。それはきっとツインビーに襲われた自分を助けてくれたから。そのことに気が付いているのに、心のどこかで言い出せない気持ちがあるんだと、素直になれないベルの心を同調することで完全に見透かしていたんだ。
だけどそれがまた可愛いと思い眺める、いつものアキラなのだった。
0
お気に入りに追加
213
あなたにおすすめの小説
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り
星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
注意事項
※主人公リアルチート
暴力・流血表現
VRMMO
一応ファンタジー
もふもふにご注意ください。
VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
VRMMOで神様の使徒、始めました。
一 八重
SF
真崎宵が高校に進学して3ヶ月が経過した頃、彼は自分がクラスメイトから避けられている事に気がついた。その原因に全く心当たりのなかった彼は幼馴染である夏間藍香に恥を忍んで相談する。
「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」
これは幼馴染からクラスメイトとの共通の話題を作るために新作ゲームを勧められたことで、再びゲームの世界へと戻ることになった元動画配信者の青年のお話。
「人間にはクリア不可能になってるって話じゃなかった?」
「彼、クリアしちゃったんですよね……」
あるいは彼に振り回される運営やプレイヤーのお話。
Beyond the soul 最強に挑む者たち
Keitetsu003
SF
西暦2016年。
アノア研究所が発見した新元素『ソウル』が全世界に発表された。
ソウルとは魂を形成する元素であり、謎に包まれていた第六感にも関わる物質であると公表されている。
アノア研究所は魂と第六感の関連性のデータをとる為、あるゲームを開発した。
『アルカナ・ボンヤード』。
ソウルで構成された魂の仮想世界に、人の魂をソウルメイト(アバター)にリンクさせ、ソウルメイトを通して視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、そして第六感を再現を試みたシミュレーションゲームである。
アルカナ・ボンヤードは現存のVR技術をはるかに超えた代物で、次世代のMMORPG、SRMMORPG(Soul Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)として期待されているだけでなく、軍事、医療等の様々な分野でも注目されていた。
しかし、魂の仮想世界にソウルイン(ログイン)するには膨大なデータを処理できる装置と通信施設が必要となるため、一部の大企業と国家だけがアルカナ・ボンヤードを体験出来た。
アノア研究所は多くのサンプルデータを集めるため、PVP形式のゲーム大会『ソウル杯』を企画した。
その目的はアノア研究所が用意した施設に参加者を集め、アルカナ・ボンヤードを体験してもらい、より多くのデータを収集する事にある。
ゲームのルールは、ゲーム内でプレイヤー同士を戦わせて、最後に生き残った者が勝者となる。優勝賞金は300万ドルという高額から、全世界のゲーマーだけでなく、格闘家、軍隊からも注目される大会となった。
各界のプロが競い合うことから、ネットではある噂が囁かれていた。それは……。
『この大会で優勝した人物はネトゲ―最強のプレイヤーの称号を得ることができる』
あるものは富と名声を、あるものは魂の世界の邂逅を夢見て……参加者は様々な思いを胸に、戦いへと身を投じていくのであった。
*お話の都合上、会話が長文になることがあります。
その場合、読みやすさを重視するため、改行や一行開けた文体にしていますので、ご容赦ください。
投稿日は不定期です
Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~
NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。
「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」
完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。
「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。
Bless for Travel
そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。
生産職から始まる初めてのVRMMO
結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。
そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。
そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。
そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。
最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。
最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。
そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。
現実逃避のために逃げ込んだVRMMOの世界で、私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
この作品は 旧題:金運に恵まれたが人運に恵まれなかった俺は、現実逃避するためにフルダイブVRゲームの世界に逃げ込んだ
の内容を一部変更し修正加筆したものになります。
宝くじにより大金を手に入れた主人公だったが、それを皮切りに周囲の人間関係が悪化し、色々あった結果、現実の生活に見切りを付け、溜まっていた鬱憤をVRゲームの世界で好き勝手やって晴らすことを決めた。
そして、課金したりかわいいテイムモンスターといちゃいちゃしたり、なんて事をしている内にダンジョンを手に入れたりする主人公の物語。
※ 異世界転移や転生、ログアウト不可物の話ではありません ※
※修正前から主人公の性別が変わっているので注意。
※男主人公バージョンはカクヨムにあります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる