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◇88 メガビートを射抜く
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もう一回森にやって来た。未だにうるさい羽音が聞こえる。
今回は全員耳栓をしていた。
遠くの方に赤いトンボの姿がある。
「あれがメガビート? 完全にデカいトンボよね」
「モデルがメガネウラだからな。仕方ないだろ」
Nightははっきりと物申す。
しかしベルは初見でNightの性格を把握したらしく、なにも反応しない。それどころか受け流していた。これぞ、風と思ったのはアキラだけだと思う。
「結構とおいわね。もう少し近づけないの?」
「うん。流石にこれ以上は危険だよ」
「危険?」
「だってほら……」
アキラは耳栓を外して見せた。
するとベルも揃って耳栓を外してみた
キュィーーーーーン!
「うわぁ!」
「な、何この音。う、動けない。頭が、頭が割れる」
ベルは頭を押さえてしゃがみ込んだ。
それから耳栓を付けなおし、思い切り唾を飲み込む。苦しい。そんな顔色だった。
「大丈夫、ベルさん?」
「う、うん。な、なにこれ……こんなの近づけないわよ」
「だから問題なんだ。メガビートは高速で羽を鳴らす。そのせいで複雑なバイブレーションと、ソニックブームを起こす。これが化け物じみた効力を及ぼすんだ」
「これは近距離は大変ね。まず勝てないわ」
「だから頼みたいんだ」
Nightははっきりと頼み込んだ。
するとベルは嫌がる様子はなく、少し離れた。できるだけ音が遠くなる距離。すうと150メートルぐらいの間隔をあける。ようやく音が馴染むぐらいになった。
「ベルさん、何してるんですか?」
「決まっているでしょ? ここから射貫くのよ」
「そんなことができるんですか!」
「かなり離れてるよー?」
2人は首を捻る。
けれど雷斬は何も知らない2人に説明した。
「大丈夫ですよ。ベルは、凄いですから」
「そうなんですか? でも、凄いと言っても流石にこの距離って……」
「問題ないだろ。あの指、先が硬くなって肉刺ができている。かなり練習した証拠だ。リアルが反映されているんだな」
それって並々ならないってことだ。私にも分かる。だってフェルノもひたすらに練習していたことがあった。私だって、お母さんと死に物狂いの稽古を散々つけてもらった経験がある。
だからだろうか。ベルの呼吸が変わった気がする。
「ふぅ。風が出てきた……」
急に風が出てきた。ベルに呼応するみたいに、風がゆっくりと涼しく吹き抜ける。
瞬きをしても目がドライアイにならない。
ベルは目を閉じたまま呼吸を整え、木製の弓の張った弦を吊るす部分が銀の光沢を見せる。
「一射必中。風の矢。【心射必中】!」
スキルを使った。すると風が一点に集まり、弦を放した瞬間、矢が勢いよく放たれた。
真っ直ぐ空気抵抗何て完全に無視。その矢は鉛玉でもでさえ貫いて貫通してしまいそうだったが、羽音を揺らすメガビートに通用するのか。
「でも矢が射程距離に入ったら、羽音で……えっ?」
「落ちない? 空気抵抗も何もかも無視しているのか」
「あれがベルの固有スキルです。私も先程聞きました」
固有スキルは人によってさまざまだ。
ベルの固有スキルは、全てを無視して相手の外身をそして中身を的確に見極めて射貫く、まさに必中かつ真実を射抜く矢だった。
もっとも弓にしか適用しないわけではない。これは物体を否定した必中攻撃だった。
「私の矢は遮蔽物さえなければ、狙った獲物は逃がさない」
メガビートは逃げなかった。羽音だけを振動させながら、最後の最後まで振り絞る。
けれど矢は落ちる様子はなく、並行かつ真っ直ぐメガビートの体を貫いた。緑の体液が飛び出たのが、ベルの目には確認できた。
「如何やら仕留めたみたいね」
「……本当だ。耳栓とってもうるさくない」
もう羽音はしなかった。耳鳴りを引き起こして、気力を奪って動けなくする音だ。それが消えた途端清々しい空気が立ち込める。
鳥の鳴き声がはっきりと聞こえ、セミの無く声もはっきりとわかった。この森は、こんなに賑やかだったんだ。
「セミの声が聞こえるね」
「そうですね。これではメガビートを倒しても、森の騒音は変わりません」
「でも、さっきよりはマシだよ。だって綺麗な音だもん」
「……不服そうだな」
Nightはベルに尋ねた。
しかし何も答えない。アキラもそのことに疑問を抱いたが、ベルは気にせずに弓の手入れをしていた。何やら暴れ足りなそうだと感じる。けれど本人はこう思っていた。
(こんな感じでよかったのかな?)
全く違うベクトルの悩みだった。
今回は全員耳栓をしていた。
遠くの方に赤いトンボの姿がある。
「あれがメガビート? 完全にデカいトンボよね」
「モデルがメガネウラだからな。仕方ないだろ」
Nightははっきりと物申す。
しかしベルは初見でNightの性格を把握したらしく、なにも反応しない。それどころか受け流していた。これぞ、風と思ったのはアキラだけだと思う。
「結構とおいわね。もう少し近づけないの?」
「うん。流石にこれ以上は危険だよ」
「危険?」
「だってほら……」
アキラは耳栓を外して見せた。
するとベルも揃って耳栓を外してみた
キュィーーーーーン!
「うわぁ!」
「な、何この音。う、動けない。頭が、頭が割れる」
ベルは頭を押さえてしゃがみ込んだ。
それから耳栓を付けなおし、思い切り唾を飲み込む。苦しい。そんな顔色だった。
「大丈夫、ベルさん?」
「う、うん。な、なにこれ……こんなの近づけないわよ」
「だから問題なんだ。メガビートは高速で羽を鳴らす。そのせいで複雑なバイブレーションと、ソニックブームを起こす。これが化け物じみた効力を及ぼすんだ」
「これは近距離は大変ね。まず勝てないわ」
「だから頼みたいんだ」
Nightははっきりと頼み込んだ。
するとベルは嫌がる様子はなく、少し離れた。できるだけ音が遠くなる距離。すうと150メートルぐらいの間隔をあける。ようやく音が馴染むぐらいになった。
「ベルさん、何してるんですか?」
「決まっているでしょ? ここから射貫くのよ」
「そんなことができるんですか!」
「かなり離れてるよー?」
2人は首を捻る。
けれど雷斬は何も知らない2人に説明した。
「大丈夫ですよ。ベルは、凄いですから」
「そうなんですか? でも、凄いと言っても流石にこの距離って……」
「問題ないだろ。あの指、先が硬くなって肉刺ができている。かなり練習した証拠だ。リアルが反映されているんだな」
それって並々ならないってことだ。私にも分かる。だってフェルノもひたすらに練習していたことがあった。私だって、お母さんと死に物狂いの稽古を散々つけてもらった経験がある。
だからだろうか。ベルの呼吸が変わった気がする。
「ふぅ。風が出てきた……」
急に風が出てきた。ベルに呼応するみたいに、風がゆっくりと涼しく吹き抜ける。
瞬きをしても目がドライアイにならない。
ベルは目を閉じたまま呼吸を整え、木製の弓の張った弦を吊るす部分が銀の光沢を見せる。
「一射必中。風の矢。【心射必中】!」
スキルを使った。すると風が一点に集まり、弦を放した瞬間、矢が勢いよく放たれた。
真っ直ぐ空気抵抗何て完全に無視。その矢は鉛玉でもでさえ貫いて貫通してしまいそうだったが、羽音を揺らすメガビートに通用するのか。
「でも矢が射程距離に入ったら、羽音で……えっ?」
「落ちない? 空気抵抗も何もかも無視しているのか」
「あれがベルの固有スキルです。私も先程聞きました」
固有スキルは人によってさまざまだ。
ベルの固有スキルは、全てを無視して相手の外身をそして中身を的確に見極めて射貫く、まさに必中かつ真実を射抜く矢だった。
もっとも弓にしか適用しないわけではない。これは物体を否定した必中攻撃だった。
「私の矢は遮蔽物さえなければ、狙った獲物は逃がさない」
メガビートは逃げなかった。羽音だけを振動させながら、最後の最後まで振り絞る。
けれど矢は落ちる様子はなく、並行かつ真っ直ぐメガビートの体を貫いた。緑の体液が飛び出たのが、ベルの目には確認できた。
「如何やら仕留めたみたいね」
「……本当だ。耳栓とってもうるさくない」
もう羽音はしなかった。耳鳴りを引き起こして、気力を奪って動けなくする音だ。それが消えた途端清々しい空気が立ち込める。
鳥の鳴き声がはっきりと聞こえ、セミの無く声もはっきりとわかった。この森は、こんなに賑やかだったんだ。
「セミの声が聞こえるね」
「そうですね。これではメガビートを倒しても、森の騒音は変わりません」
「でも、さっきよりはマシだよ。だって綺麗な音だもん」
「……不服そうだな」
Nightはベルに尋ねた。
しかし何も答えない。アキラもそのことに疑問を抱いたが、ベルは気にせずに弓の手入れをしていた。何やら暴れ足りなそうだと感じる。けれど本人はこう思っていた。
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全く違うベクトルの悩みだった。
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