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◇82 雷斬は突然に……
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コンコン!
ギルドホームのドアが叩かれた。
そのことに気が付いた廊下に出ていたアキラ。それからフェルノがいち早く、Nightはその場から動かなかったが、気づいてはいた。
すると先にアキラが出迎えに向かう。
「はーい! 誰だろう……」
正直わかってはいた。ここに来られるのは、ギルドメンバーだけだ。
それ以外だど、ここへの許可を出した相手だけは例外になる。つまり、ほぼほぼ安全なのだが、中には特赦な方法があるとかないとか……誰も使えないらしいけど。
そんな話は一旦保留だ。
ここに来られる相手。それは一人しかいない。
アキラはドアを開け、そこに立つ人物を見る。和装が似合う雅な剣士ちゃんだった。いや、侍だ。
「来てくれたんだね。雷斬!」
「はい。答えを伝えに参りました」
「そっか。じゃあここに来たってことは……」
「もちろんそのつもりです。ギルド加入の話し、こちらからありがたくお受けいたします」
肯定的な反応でホッとする。
胸を撫で下ろしたアキラは申請を送り、雷斬は迷うことなく申請を了承した。如何して決めたのかはわからない。けれど何か思うところがあったのは、言うまでもない。
「あっ、雷斬だ! やっぱり来たんだね」
「フェルノさん。はい、私は皆さんのことが好きになりました」
「いきなりだね。ちょーっと、お誘いは遠慮するかなー」
「そういう意味ではございませんよ。皆さんが他の人たちにはない色を持っているからこそ、私は惹かれたのかもしれませんね」
雷斬は笑顔だった。
にこりと優しく微笑み返し、アキラとフェルノはぽかっと心が温まった。
けれど何か引っかかる。「他の人たちにはない色」つまりそれは……
「それって……」
「つまりは……」
互いに顔を見合わせた。絶対「変わり者」ってことが言いたいんだとすぐに察しがついた。
しかし、流石は雷斬。自分の雰囲気にマッチするように、上手く言葉を濁してきた。
廊下越しに話が聞こえていたNightは本を読みながらクスっと笑った。
「ふふっ。やはり皆さんは面白いですね。私の友達も呼んであげたいです」
「全然いいよ。仲間は多い方がいいから」
「そうだねー。離れたところに住んでいる人とオンラインで遊べるからいいんだもん。誰が来ても、私たちは拒まないよー」
ここが変わりものなのかもしれない。
呆れるみたいに乾いた笑いが漏れたけど、誰も気にしなかった。とはいえこんなところで立ち話もなんだ。アキラは雷斬をギルドホームの中に通した。
「お邪魔致します」
雷斬は、履いている草鞋を脱ごうとしたがすぐに引っ込める。
普段の癖か何かだろう。雷斬の頬が恥ずかしいのか、ポワッと赤くなるの見えた。可愛らしいなと、アキラは脇目にする。
「いいホームですね。離れ小島に浮かぶ、悠然とした建物。風情があります」
「そうでしょ。でも中身がね」
「家具がちょっと……」
「家具ですか? うわぁ……」
でしょうね。このごちゃごちゃ感を見れば誰だって一度は眉根を寄せる。
流石の雷斬でも表情を歪めてしまい硬直したが、すぐに悪いと思ったのか、
「こ、個性的な内装ですね」
と誤魔化した。けれど残念。全くフォローにはなっていない。
そもそもフォローしなくてもいい。この感じを見ればわかるが、誰もこの芸術的美的センスがわからないんだ。もちろん、アキラもわかっていない。貰って来た本人がそれを理解できていないんじゃ、宝の持ち腐れも甚だしかった。
「はぁ……そんなところで突っ立っていないで、座ったらどうだ」
「Night! そんなこと言わなくてもいいでしょ。ごめんね、すぐに椅子出すから」
「何色がいいー?」
「色ですか? そうですね。では黄色があれば」
「黄色ね。ちょい、待っててねー」
フェルノは椅子を採りに向かう。
インベントリから出したままのもので、埃が付いている。埃を落とし、雷斬は黄色の椅子に腰を下ろす。上品な座り方で、整っていた。黄色が埋まった瞬間だ。
ギルドホームのドアが叩かれた。
そのことに気が付いた廊下に出ていたアキラ。それからフェルノがいち早く、Nightはその場から動かなかったが、気づいてはいた。
すると先にアキラが出迎えに向かう。
「はーい! 誰だろう……」
正直わかってはいた。ここに来られるのは、ギルドメンバーだけだ。
それ以外だど、ここへの許可を出した相手だけは例外になる。つまり、ほぼほぼ安全なのだが、中には特赦な方法があるとかないとか……誰も使えないらしいけど。
そんな話は一旦保留だ。
ここに来られる相手。それは一人しかいない。
アキラはドアを開け、そこに立つ人物を見る。和装が似合う雅な剣士ちゃんだった。いや、侍だ。
「来てくれたんだね。雷斬!」
「はい。答えを伝えに参りました」
「そっか。じゃあここに来たってことは……」
「もちろんそのつもりです。ギルド加入の話し、こちらからありがたくお受けいたします」
肯定的な反応でホッとする。
胸を撫で下ろしたアキラは申請を送り、雷斬は迷うことなく申請を了承した。如何して決めたのかはわからない。けれど何か思うところがあったのは、言うまでもない。
「あっ、雷斬だ! やっぱり来たんだね」
「フェルノさん。はい、私は皆さんのことが好きになりました」
「いきなりだね。ちょーっと、お誘いは遠慮するかなー」
「そういう意味ではございませんよ。皆さんが他の人たちにはない色を持っているからこそ、私は惹かれたのかもしれませんね」
雷斬は笑顔だった。
にこりと優しく微笑み返し、アキラとフェルノはぽかっと心が温まった。
けれど何か引っかかる。「他の人たちにはない色」つまりそれは……
「それって……」
「つまりは……」
互いに顔を見合わせた。絶対「変わり者」ってことが言いたいんだとすぐに察しがついた。
しかし、流石は雷斬。自分の雰囲気にマッチするように、上手く言葉を濁してきた。
廊下越しに話が聞こえていたNightは本を読みながらクスっと笑った。
「ふふっ。やはり皆さんは面白いですね。私の友達も呼んであげたいです」
「全然いいよ。仲間は多い方がいいから」
「そうだねー。離れたところに住んでいる人とオンラインで遊べるからいいんだもん。誰が来ても、私たちは拒まないよー」
ここが変わりものなのかもしれない。
呆れるみたいに乾いた笑いが漏れたけど、誰も気にしなかった。とはいえこんなところで立ち話もなんだ。アキラは雷斬をギルドホームの中に通した。
「お邪魔致します」
雷斬は、履いている草鞋を脱ごうとしたがすぐに引っ込める。
普段の癖か何かだろう。雷斬の頬が恥ずかしいのか、ポワッと赤くなるの見えた。可愛らしいなと、アキラは脇目にする。
「いいホームですね。離れ小島に浮かぶ、悠然とした建物。風情があります」
「そうでしょ。でも中身がね」
「家具がちょっと……」
「家具ですか? うわぁ……」
でしょうね。このごちゃごちゃ感を見れば誰だって一度は眉根を寄せる。
流石の雷斬でも表情を歪めてしまい硬直したが、すぐに悪いと思ったのか、
「こ、個性的な内装ですね」
と誤魔化した。けれど残念。全くフォローにはなっていない。
そもそもフォローしなくてもいい。この感じを見ればわかるが、誰もこの芸術的美的センスがわからないんだ。もちろん、アキラもわかっていない。貰って来た本人がそれを理解できていないんじゃ、宝の持ち腐れも甚だしかった。
「はぁ……そんなところで突っ立っていないで、座ったらどうだ」
「Night! そんなこと言わなくてもいいでしょ。ごめんね、すぐに椅子出すから」
「何色がいいー?」
「色ですか? そうですね。では黄色があれば」
「黄色ね。ちょい、待っててねー」
フェルノは椅子を採りに向かう。
インベントリから出したままのもので、埃が付いている。埃を落とし、雷斬は黄色の椅子に腰を下ろす。上品な座り方で、整っていた。黄色が埋まった瞬間だ。
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