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◇80 お宝だけ盗みました(奪いました)

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 その頃地上では、Nightとフェルノが困惑していた。
 急に砂の中に飲まれた友達を放っておくわけにもいかない。試行錯誤をして、熱を送ってみたが何も変化はい。
 そのまま時間は進み、30分が経った頃——

「ど、如何しよう。このままじゃ」
「これをやったのはおそらくサンドアントヘルだ。殺傷性は低いが、一度飲み込まれれば迷路となった巣の中に落とされ、食いつくされる。極めて気持ち悪いモンスターだ」
「そんな! じゃあ如何したらいいの?」
「それは……くそっ!」

 Nightまで打つ手がなかった。自分ならどうにでもなるのに、あの二人では駄目だ。
 そう思ったのも束の間のこと。
 急にメッセージが届いた。

 ピロン!

「あれ? もしかしてアキラから」
「まさか。……本当だ。なに? もう帰ってきていいよ?」
「それってどういうこと。もしかして、やられちゃったの?」
「いや。……先に町に戻ったみたいだ。しかも大量のメダルを入手してな」

 Nightも訳がわからなかった。しかし無事で何より。
 そう思ったのはいいが、一体何あったのか。真相は、二人にしかわからない。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 それは今から30分前のことになる。
 アキラと雷斬は選んだ道を歩いていた。たくさんの道がある中から如何してこの道を選んだのか。理由は二つある。

「アキラさん。如何してこの道を選んだのですか?」
「うーん。何となくかな。一番シンプルで何もなかったから」
「なるほど。それは怪しいですね」
「そういう雷斬は?」
「私は、そうですね。近かったからです」

 二人とも選んだ理由はしょうもなかった。けれどその選択に後悔はない。
 何せどのみち迷っても仕方ない。来るものが来るなら、叩き折る。そんな思惑で動いていた。つまり、何も考えていないんだ。

「それにしても何も起きませんね」
「うん。モンスターの影もないけど。もしかして間違えたのかな?」
「いえ。もしかしたら、その逆の可能性もありますよ。こういう展開も味があっていいですね」
「味って言うか、テンポがいいよね。ただイベントにはなってないけど」
「それは言わなくてもよろしいのでは?」

 確かに何も起きていない。怖いぐらいに変化がないので、不安になるのも仕方ないが、アキラたちは間違っていなかった。
 不意に視界の先が明るくなる。外に繋がっているのでは? と思い、二人は少しだけ足早になる。

「うわぁ、眩しい!」
「天井が開いていますね。如何やらそこから陽の光が差し込んでいるようです」

 冷静に推測する。ここまでモンスターがいない。つまりここが決戦の地になる。
 アキラはいつでもスキルを発動できるように準備する。
 雷斬も刀の鞘を握り込み、抜刀が即座にできるように構えた。
 しかし……

「なにも……起きない?」
「そうみたいですね。もしかしたら、ここはそのような場所ではないのかもしれませんね」

 こんなに敵が出てきそうなのに、何もなないなんてそれはそれで悲しい。
 けれど一つだけ気がかりなものがあった。

「雷斬、あの明らかに罠な宝箱どう思う?」
「そうですね。おそらく罠でしょうが、既に来た道は戻れないですし、この先に道もないので……」
「開けるしかないんだね」

 確かに振り返っても道はない。完全に閉じ込められてしまった。
 アキラは雷斬に周りの警戒を任せて、宝箱の上蓋に手をかける。鍵はかかっていない。
 ごくりと喉を鳴らして、思いっきり開けてみた。すると中には大量のメダルが入っていた。しかも表面には十個の星が描かれる。

「な、なにこれ?」
「メダルですね。しかもこんなにたくさん。明らかに罠でしょうが」
「で、でも普通に拾えるよ? それに何か書いてある」
「どれですか?」
「ここ。上蓋の裏に」

 迷いの先に進み、見事幸運を勝ち取った者よ。ここに褒美を残す。手にすれば人の声を聞くだろう。——名もなき冒険家より、未来ある者へ

 うわぁ、これはやってる。明らかに運営が仕掛けた救済措置だった。
 しかしここに置いてあるということは貰ってもいいんだ。
 アキラと雷斬は恐る恐る手に取ると、インベントリの中に勝手に収納された。

「これでよかったのかな?」
「如何でしょうか。何もないといいのですが……」
「そ、それはそうだけど……ん? イベント終了のお知らせ。隠しメダルを入手されたプレイヤーは即時にイベントを終了します? はい!」
「これは呪いのメダル!」

 雷斬が叫んだ。
 すると次の瞬間、視界が開け二人は町に戻って来ていた。呆然と立ち尽くし、困惑する。二人は互いに顔を見合わせると、薄ら笑いを乾いた目で続けた。

 これは二人に申し訳がない。
 それどころか、私たちを飲み込んだモンスターに申し訳が立たない。も行かしたら今もだれかを持っていて、その出番をこんなタイミングで失ってしまったのかもしれないなと思い、心を痛めるアキラだった。
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