VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

文字の大きさ
上 下
78 / 591

◇78 雷獣がモデルの剣士ちゃん

しおりを挟む
  しばらく休むと、少女は動けるようになった。
 話を聞く限り、彼女もこのイベントに参加している一人らしい。
 こうして同じイベントに参加しているプレイヤーと協力するのは、始めてだった。

「本当に感謝いたします。おかげで助かりました。あっ、私は雷斬らいきりと言います。雷斬らいざんでも構いません。種族は雷獣で、剣士をやらせていただいています」
「じゃあ雷斬って呼ぶね。私はアキラで、こっちのヴァンパイアがNight。こっちの赤い竜が、フェルノ」
「よろしくな」
「よろしくねー」

 それぞれが簡単に自己紹介を交わす。
 すると雷斬は、アキラたちを眺める。

「皆さんは、何かの集まりなのでしょうか?
「ギルドだよ。私たちは継ぎ接ぎの絆パッチワーク・フレンズ。」
「ギルドですか。私はソロで活動しているので、縁がありませんね」
「だったら一緒にやろうよ。こうして助けられた仲なんだから。二人もいいでしょ?」

 アキラは勝手に決めてしまった。
 何となくではない。アキラの感情を突き動かすものがあった。その証拠に、アキラの髪が一蹴跳ねる。フェルノは知っているので、あることを確信した。

「私はいいよ。アキラがそういうなら」
「ありがとうフェルノ」
「いつものことでしょー。あとはNightだけど……どうする?」

 Nightに委ねた。
 多分いつものNightなら、知らない子と一緒にいるのは嫌だと思う。それもそうだよ。皆んなが皆んな、アキラやフェルノのようにフォーマルではない。今の時代、Nightのように一人を好みたがる人の方が多いはずだ。
 しかしNightは肯定的に促した。

「私も構わないぞ。雷を操る剣士は、前衛に適している。その力を狡猾に利用できれば、より多くのアイテムが生成できるだろう」
「何だか意外。Nightがそんな話をするなんて」
「でも内容は怖いね。また危ない作戦を使うの?」
「当たり前だ。効率的かつ限られた資源と情報から、相手を追い詰める。それが人間であれモンスターであれ、嫌なことをされて嫌がらない奴はいないだろう」

 とんでもなく卑屈な考えだった。
 雷斬はNightの考えを聞いて、顔を顰めるどころかむしろ真っ当に聞いている。それが肯定的に反応しているのか、それとも否定的に捉えているのかは、アキラたちにはわからない。

「何だか面白い方々ですね」
「それは褒めてるんだよね?」
「はい。私も、個性を尊重しているので」

 アキラは何故かわかる気がした。
 雷斬だけじゃない。ここにいるのは、鋭い個性を持った十代女子ばかり。個性と言う大海原に出て、複雑に海域を行かんとする船に乗っている同志たち。そんなイメージが形成されていた。
 だからこそ面白い。そうも言えると尊重した。

「わかりました。考えておきます」
「ありがとう。雷斬」
「いえ。答えはこのイベントが終わった後に伝えます。まずは皆さんで力を合わせて、この砂漠から抜け出しましょう」

 やる気に満ち満ちていた。
 雷斬の顔色に赤みが戻っており、自然と高揚感が増す。その温かくて温もりのある感性は三人にも伝染しており、まさに電気のようだ。プラグインした感情に高ぶられ、Nightまでもが高揚する中、問題が生じた。

 砂漠の砂が暴れている——

 最初に気づいたのはフェルノ。
 視線の先には陽に当てられた砂漠の砂があるが、さっきまで流砂なんてなかったはずが、急に砂が飲み込まれ始める。

「ねえ、あれ見てよ」
「如何したの……砂がなくなってるの?」
「おかしいよね。こんなことってあるのかな?」
「わからないけど。流砂なんてなかったよ」

 アキラとフェルノが首を捻る中、Nightは怪しさに気づいていた。
 雷斬も日本刀の柄に指をかける。鍔に親指を当て、いつでも弾けるように準備していた。
 そのことに気が付くこともなく、アキラたちは流砂の正体について掴めなかった。けれど徐々に広がる流砂に、Nightはある推測を立てたんだ。

「もしかして、これは……」
「なにかわかったの?」
「ああ。考えたくはないが、これしかないな。フェルノ!」

 Nightは叫んだ。
 フェルノも危機感を感じた。両腕に炎を集め、地面を叩く。砂が高温にさらされ、日陰なのにもの凄く熱い。だらだらと汗を流す中、流砂が止まった。しかし……

「「うわぁっ!」」

 アキラと雷斬は真下に空いた流砂に引きずり込まれた——
しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

New Life

basi
SF
なろうに掲載したものをカクヨム・アルファポにて掲載しています。改稿バージョンです。  待ちに待ったVRMMO《new life》  自分の行動でステータスの変化するアビリティシステム。追求されるリアリティ。そんなゲームの中の『新しい人生』に惹かれていくユルと仲間たち。  ゲームを進め、ある条件を満たしたために行われたアップデート。しかし、それは一部の人々にゲームを終わらせ、新たな人生を歩ませた。  第二部? むしろ本編? 始まりそうです。  主人公は美少女風美青年?

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

処理中です...