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◇78 雷獣がモデルの剣士ちゃん
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しばらく休むと、少女は動けるようになった。
話を聞く限り、彼女もこのイベントに参加している一人らしい。
こうして同じイベントに参加しているプレイヤーと協力するのは、始めてだった。
「本当に感謝いたします。おかげで助かりました。あっ、私は雷斬と言います。雷斬でも構いません。種族は雷獣で、剣士をやらせていただいています」
「じゃあ雷斬って呼ぶね。私はアキラで、こっちのヴァンパイアがNight。こっちの赤い竜が、フェルノ」
「よろしくな」
「よろしくねー」
それぞれが簡単に自己紹介を交わす。
すると雷斬は、アキラたちを眺める。
「皆さんは、何かの集まりなのでしょうか?
「ギルドだよ。私たちは継ぎ接ぎの絆。」
「ギルドですか。私はソロで活動しているので、縁がありませんね」
「だったら一緒にやろうよ。こうして助けられた仲なんだから。二人もいいでしょ?」
アキラは勝手に決めてしまった。
何となくではない。アキラの感情を突き動かすものがあった。その証拠に、アキラの髪が一蹴跳ねる。フェルノは知っているので、あることを確信した。
「私はいいよ。アキラがそういうなら」
「ありがとうフェルノ」
「いつものことでしょー。あとはNightだけど……どうする?」
Nightに委ねた。
多分いつものNightなら、知らない子と一緒にいるのは嫌だと思う。それもそうだよ。皆んなが皆んな、アキラやフェルノのようにフォーマルではない。今の時代、Nightのように一人を好みたがる人の方が多いはずだ。
しかしNightは肯定的に促した。
「私も構わないぞ。雷を操る剣士は、前衛に適している。その力を狡猾に利用できれば、より多くのアイテムが生成できるだろう」
「何だか意外。Nightがそんな話をするなんて」
「でも内容は怖いね。また危ない作戦を使うの?」
「当たり前だ。効率的かつ限られた資源と情報から、相手を追い詰める。それが人間であれモンスターであれ、嫌なことをされて嫌がらない奴はいないだろう」
とんでもなく卑屈な考えだった。
雷斬はNightの考えを聞いて、顔を顰めるどころかむしろ真っ当に聞いている。それが肯定的に反応しているのか、それとも否定的に捉えているのかは、アキラたちにはわからない。
「何だか面白い方々ですね」
「それは褒めてるんだよね?」
「はい。私も、個性を尊重しているので」
アキラは何故かわかる気がした。
雷斬だけじゃない。ここにいるのは、鋭い個性を持った十代女子ばかり。個性と言う大海原に出て、複雑に海域を行かんとする船に乗っている同志たち。そんなイメージが形成されていた。
だからこそ面白い。そうも言えると尊重した。
「わかりました。考えておきます」
「ありがとう。雷斬」
「いえ。答えはこのイベントが終わった後に伝えます。まずは皆さんで力を合わせて、この砂漠から抜け出しましょう」
やる気に満ち満ちていた。
雷斬の顔色に赤みが戻っており、自然と高揚感が増す。その温かくて温もりのある感性は三人にも伝染しており、まさに電気のようだ。プラグインした感情に高ぶられ、Nightまでもが高揚する中、問題が生じた。
砂漠の砂が暴れている——
最初に気づいたのはフェルノ。
視線の先には陽に当てられた砂漠の砂があるが、さっきまで流砂なんてなかったはずが、急に砂が飲み込まれ始める。
「ねえ、あれ見てよ」
「如何したの……砂がなくなってるの?」
「おかしいよね。こんなことってあるのかな?」
「わからないけど。流砂なんてなかったよ」
アキラとフェルノが首を捻る中、Nightは怪しさに気づいていた。
雷斬も日本刀の柄に指をかける。鍔に親指を当て、いつでも弾けるように準備していた。
そのことに気が付くこともなく、アキラたちは流砂の正体について掴めなかった。けれど徐々に広がる流砂に、Nightはある推測を立てたんだ。
「もしかして、これは……」
「なにかわかったの?」
「ああ。考えたくはないが、これしかないな。フェルノ!」
Nightは叫んだ。
フェルノも危機感を感じた。両腕に炎を集め、地面を叩く。砂が高温にさらされ、日陰なのにもの凄く熱い。だらだらと汗を流す中、流砂が止まった。しかし……
「「うわぁっ!」」
アキラと雷斬は真下に空いた流砂に引きずり込まれた——
話を聞く限り、彼女もこのイベントに参加している一人らしい。
こうして同じイベントに参加しているプレイヤーと協力するのは、始めてだった。
「本当に感謝いたします。おかげで助かりました。あっ、私は雷斬と言います。雷斬でも構いません。種族は雷獣で、剣士をやらせていただいています」
「じゃあ雷斬って呼ぶね。私はアキラで、こっちのヴァンパイアがNight。こっちの赤い竜が、フェルノ」
「よろしくな」
「よろしくねー」
それぞれが簡単に自己紹介を交わす。
すると雷斬は、アキラたちを眺める。
「皆さんは、何かの集まりなのでしょうか?
「ギルドだよ。私たちは継ぎ接ぎの絆。」
「ギルドですか。私はソロで活動しているので、縁がありませんね」
「だったら一緒にやろうよ。こうして助けられた仲なんだから。二人もいいでしょ?」
アキラは勝手に決めてしまった。
何となくではない。アキラの感情を突き動かすものがあった。その証拠に、アキラの髪が一蹴跳ねる。フェルノは知っているので、あることを確信した。
「私はいいよ。アキラがそういうなら」
「ありがとうフェルノ」
「いつものことでしょー。あとはNightだけど……どうする?」
Nightに委ねた。
多分いつものNightなら、知らない子と一緒にいるのは嫌だと思う。それもそうだよ。皆んなが皆んな、アキラやフェルノのようにフォーマルではない。今の時代、Nightのように一人を好みたがる人の方が多いはずだ。
しかしNightは肯定的に促した。
「私も構わないぞ。雷を操る剣士は、前衛に適している。その力を狡猾に利用できれば、より多くのアイテムが生成できるだろう」
「何だか意外。Nightがそんな話をするなんて」
「でも内容は怖いね。また危ない作戦を使うの?」
「当たり前だ。効率的かつ限られた資源と情報から、相手を追い詰める。それが人間であれモンスターであれ、嫌なことをされて嫌がらない奴はいないだろう」
とんでもなく卑屈な考えだった。
雷斬はNightの考えを聞いて、顔を顰めるどころかむしろ真っ当に聞いている。それが肯定的に反応しているのか、それとも否定的に捉えているのかは、アキラたちにはわからない。
「何だか面白い方々ですね」
「それは褒めてるんだよね?」
「はい。私も、個性を尊重しているので」
アキラは何故かわかる気がした。
雷斬だけじゃない。ここにいるのは、鋭い個性を持った十代女子ばかり。個性と言う大海原に出て、複雑に海域を行かんとする船に乗っている同志たち。そんなイメージが形成されていた。
だからこそ面白い。そうも言えると尊重した。
「わかりました。考えておきます」
「ありがとう。雷斬」
「いえ。答えはこのイベントが終わった後に伝えます。まずは皆さんで力を合わせて、この砂漠から抜け出しましょう」
やる気に満ち満ちていた。
雷斬の顔色に赤みが戻っており、自然と高揚感が増す。その温かくて温もりのある感性は三人にも伝染しており、まさに電気のようだ。プラグインした感情に高ぶられ、Nightまでもが高揚する中、問題が生じた。
砂漠の砂が暴れている——
最初に気づいたのはフェルノ。
視線の先には陽に当てられた砂漠の砂があるが、さっきまで流砂なんてなかったはずが、急に砂が飲み込まれ始める。
「ねえ、あれ見てよ」
「如何したの……砂がなくなってるの?」
「おかしいよね。こんなことってあるのかな?」
「わからないけど。流砂なんてなかったよ」
アキラとフェルノが首を捻る中、Nightは怪しさに気づいていた。
雷斬も日本刀の柄に指をかける。鍔に親指を当て、いつでも弾けるように準備していた。
そのことに気が付くこともなく、アキラたちは流砂の正体について掴めなかった。けれど徐々に広がる流砂に、Nightはある推測を立てたんだ。
「もしかして、これは……」
「なにかわかったの?」
「ああ。考えたくはないが、これしかないな。フェルノ!」
Nightは叫んだ。
フェルノも危機感を感じた。両腕に炎を集め、地面を叩く。砂が高温にさらされ、日陰なのにもの凄く熱い。だらだらと汗を流す中、流砂が止まった。しかし……
「「うわぁっ!」」
アキラと雷斬は真下に空いた流砂に引きずり込まれた——
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