VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

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◇76 地雷は流石に強すぎる

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  砂漠の砂が巻き上がる。
 黄色い閃光が砂を引き寄せているみたいだった。ビリビリと微かに発火音を鳴らしているから、きっとあの閃光の正体は電気だろうと、Nightは当たりを付けていた。
 しかし一つ疑問が生じる。誰がこんな真似をしたのか。そこだけが疑問だった。

 当然ここにいる三人には不可能だ。
 そもそもの話にはなるが、誰も電気を操ることができない。唯一今後使えるようになる可能性を秘めたアキラでさえ、現状では使えない。
 そんな摩訶不思議なことが、今まさに目の前で起こった。しかも間接的に救われたことになる。

「ねえ、今何が起こったのかな?」
「誰かいたよね。刀で、こうズバーッと砲台を真っ二つにしてたね」

 砲台を真っ二つにする。
 そんな芸当が可能なのかと疑問に思うだろうが、ここはあくまでゲーム。できなくはない。

「おそらく雷に関連したスキルを持っているんだろう」
「雷に関するスキル?」
「例えば種族スキルなら、雷鳥、雷獣、雷神。はては、カンナカムイなんかがいるな」
「カンナカムイはわからないけど、とにかく行ってみようよ。きっと誰かいるはずだから」

 アキラは前向きだった。
 間接的とはいえ、アキラたちは助けられたのに変わりはない。ここまで連続でモンスターから逃げ延びてきた。一度目はダンシング・サボテンとか言う謎の踊るサボテン。そして二度目はこのトカゲ戦車。どちらも強そうで逃げるしかできなかったんだ。
 そんな相手から助けてもらったには、一つお礼ぐらいは言わないといけない。向こうにその意識がなくても、こっちの気が晴れない。そんなものだ。

「それじゃあ行こっか。あっ、Nightはそろそろ降りる?」
「そうだな。流石にこの格好は恥ずかしい」
「Nightに恥ずかしいなんて感情があったんだ。意外」
「私を何だと思っているんだ」
「うーん……歩くコンピューター?」

 などと軽い冗談を言ってみた。
 けれどNightはそれが気に食わなかったらしい。ムッとした表情で、歩いて行ってしまう。が、ほどなくして砂に足を取られてまた転んだ。

「ぷはぁ!」
「また転んだ。大丈夫、Night?」
「流石に二度目は恥ずかしいな」

 砂を払ったNightは少し頬を赤らめていた。
 恥ずかしいのは本当なようで、顔を全く見せてくれない。でもそういうところが可愛いと思ってしまうアキラとフェルノだった。


 少し歩いてみると、トカゲ戦車の消えた場所に到着した。
 だだっ広い砂漠なのは何も変わらない。しかし他と明らかに違うのは、そこにまだトカゲ戦車の砲台やキャタピラの残骸が丁寧に残っていたことだろう。

「凄いね。こんなに壮観な景色ってあるの?」
「綺麗に砲台も残っているな。なるほど、こうなっていたのか……」

 それぞれが思い思いに眺めていた。
 けれど肝心の人の姿はない。アキラが脳裏に気に掛けていたことだったが、フェルノがキョロキョロと周囲を見回していた。自分も面白いものがないか、探しているみたいだ。
 するとフェルノは砂の中にボコッとしたものがあることに気づく。
 何だろうかと思い、近づこうとした瞬間、止めるように鋭い声が聞こえた。

「駄目です。近づいてはいけません!」

 鋭い声だった。けれど大人しい声色だったので、自然と首を捻る。
 トカゲ戦車の残骸となっていた鉄板の裏から影が伸びた。
 そこにいたのは、仄かに明るい金が混じった黒髪の少女。頭の上で、髪を結ってポニーテールを作っていた。

「えっと、誰?」
「駄目です近づいては。そこに埋まっているのは、地雷です」
「じ、地雷!」

 フェルノが叫んだ。確かに言われてみればそうだ。丸い形で、ボコッと何かが埋まっている。これがもし地雷だったら……と、考えるだけで喉が詰まって、冷汗が流れた。

「如何したの、フェルノ!」
「アキラ。実はね、ここに地雷が埋まっていて……」
「じ、地雷!」

 全く同じ反応になった。急に危険ワードを言われたら、誰もがびっくりして動けなくなる。
 それにしてもこの子は誰なんだ。
 下から上まで眺めてみると、不思議なことに彼女の格好はこの環境に適していると思えない。着物のような服に、武士の甲冑に似た胸当て。白い帯に巻かれ、帯刀しているのはどう見ても日本刀。このミスマッチ具合は何か。思考がぐちゃぐちゃになったが、アキラは早速意識を切り替えた。

「助けてくれてありがとう。剣士ちゃん」
「助け? ……はい、よくわかりませんがどういたしまして……」
「「えっ!?」」

 少女はわからなかったが、ノリで返した。
 しかし次の瞬間、意識が途切れてしまい、バタリと砂の中に体を埋めた。アキラとフェルノが叫ぶ中、その様子を見ていたNightは一言添えた。

「熱中症だな」
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