75 / 599
◇75 雷を斬る音
しおりを挟む
こんなことがあるの? アキラはふと考えていた。頭の中は意外にすっきりしていて、とてもじゃないが、こんな呼吸の乱れからは考えられないぐらい冷静だった。
どうしてこんなことに。そもそもトカゲの戦車ってなに。確か名前はトカゲ戦車だったかな。適当すぎるよね! 絶対運営さん、何も考えてないよ! と言いたくなった。
けれどアキラはそんなことすら言う気になれない。何せ、この状況だ。灼熱の中でこんな……
「なんで、なんでまだ走っているの!」
アキラは叫んだ。喉が枯れそうになった。全身から水分が抜けていくのを感じた。
今にも倒れてしまいそう。だけど足を止めてはいけない。
真後ろから、ゴォーゴォー! とエンジンをふかすような音がする。
「止まるなよアキラ。止まったら撃たれるぞ」
「撃たれるの! ただでさえ、速いのに」
「止まったらだ。そもそも止まることは鼻っから考えるな」
「いや、それは無理だよ」
アキラはとても冷静にツッコみを入れた。
そもそもの話し、Nightにだけは言われたくない。何せNightは今、フェルノにおんぶしてもらっているからだ。
「フェルノ大丈夫。重くない?」
「うん。全然軽いよ」
「私は体重が軽いからな」
「それは別に誇ることでもないと思うよ」
「あはは。可哀そうだから、言わないであげようよー」
「お前が一番可哀そうなことを言うな」
軽快なノリツッコみを交えているだけ余裕がまだあると言える。
けれど、トカゲ戦車はしつこく追って来る。キャタピラが砂の上を走り、ガタガタと波を打っていた。トカゲの動体の横には、大砲の砲台が二つもついていて、いつ撃ってくるかわからない。怖い。怖すぎるよと、アキラは内心震えていた。
「どこかで曲がる?」
「曲がって振り切れる自信は?」
「……ない」
「ならば諦めろ。心配ない、ここは砂漠だ」
「砂漠だけど、それがどうかしたの?」
「つまり流砂がある。そこにさえはまれば、流石のトカゲ戦車も追ってはこれない」
そんなに都合よく行くとは思えない。そもそも流砂がそこら中にあるなら、こんなことにはなっていないはずだ。
唇を尖らせるアキラに、Nightは目にものを見せようとした。
【ライフ・オブ・メイク】で何かを生成する。赤くて、細長い筒に導火線が付いていた。
「フェルノ、火を頼む」
「いいよ。って、ダイナマイト!」
フェルノが作ったのはダイナマイトだった。もう世界観が崩壊している。
幻想的な世界だったはずが、急にスチームパンクな世界観に生まれ変わったのは、いつからだろうか。はたまたこれは私の周りだけのミニマムな話なのかと、脳裏がグルグルと画策される。しかしそこはアキラだ。意識の切り替えで、素直に受け入れた。
「これを投げる」
「投げちゃった……でもあれ? 効いてないよ」
「そうみたいだな」
フェルノが投げたダイナマイトは不発ではなかった。
しかしトカゲ戦車を停めることはできなかった全く気にせず、ぐんぐんスピードを上げる。このままじゃ追いつかれる。その前に撃たれると思った。
その時だった……
「来てください、【雷鳴】」
バチッ! と火花が上がった。
アキラたちはその音に気が付き自然と意識してしまう。見れば空に黄色い閃光が上がっていた。あれは何なんだ。三人は足を止めていた。
すると、トカゲ戦車が砲撃をしようとした。止まった獲物など取るに足らないというのか。
けれどトカゲ戦車の砲台は、瞬く間に破壊され、本体自体のHPが何故かなくなってしまった。
「「「えっ!?」」」
三人は固まってしまった。
しかし目線が釘付けになったままだった。その目に映ったのは、突然トカゲ戦車が崩れる光景。砂漠の中でガラクタになった瞬間。
そこに立つ何者かの影。手には刀のようなものを持ち、結ったポニーテールが風に誘われた。
どうしてこんなことに。そもそもトカゲの戦車ってなに。確か名前はトカゲ戦車だったかな。適当すぎるよね! 絶対運営さん、何も考えてないよ! と言いたくなった。
けれどアキラはそんなことすら言う気になれない。何せ、この状況だ。灼熱の中でこんな……
「なんで、なんでまだ走っているの!」
アキラは叫んだ。喉が枯れそうになった。全身から水分が抜けていくのを感じた。
今にも倒れてしまいそう。だけど足を止めてはいけない。
真後ろから、ゴォーゴォー! とエンジンをふかすような音がする。
「止まるなよアキラ。止まったら撃たれるぞ」
「撃たれるの! ただでさえ、速いのに」
「止まったらだ。そもそも止まることは鼻っから考えるな」
「いや、それは無理だよ」
アキラはとても冷静にツッコみを入れた。
そもそもの話し、Nightにだけは言われたくない。何せNightは今、フェルノにおんぶしてもらっているからだ。
「フェルノ大丈夫。重くない?」
「うん。全然軽いよ」
「私は体重が軽いからな」
「それは別に誇ることでもないと思うよ」
「あはは。可哀そうだから、言わないであげようよー」
「お前が一番可哀そうなことを言うな」
軽快なノリツッコみを交えているだけ余裕がまだあると言える。
けれど、トカゲ戦車はしつこく追って来る。キャタピラが砂の上を走り、ガタガタと波を打っていた。トカゲの動体の横には、大砲の砲台が二つもついていて、いつ撃ってくるかわからない。怖い。怖すぎるよと、アキラは内心震えていた。
「どこかで曲がる?」
「曲がって振り切れる自信は?」
「……ない」
「ならば諦めろ。心配ない、ここは砂漠だ」
「砂漠だけど、それがどうかしたの?」
「つまり流砂がある。そこにさえはまれば、流石のトカゲ戦車も追ってはこれない」
そんなに都合よく行くとは思えない。そもそも流砂がそこら中にあるなら、こんなことにはなっていないはずだ。
唇を尖らせるアキラに、Nightは目にものを見せようとした。
【ライフ・オブ・メイク】で何かを生成する。赤くて、細長い筒に導火線が付いていた。
「フェルノ、火を頼む」
「いいよ。って、ダイナマイト!」
フェルノが作ったのはダイナマイトだった。もう世界観が崩壊している。
幻想的な世界だったはずが、急にスチームパンクな世界観に生まれ変わったのは、いつからだろうか。はたまたこれは私の周りだけのミニマムな話なのかと、脳裏がグルグルと画策される。しかしそこはアキラだ。意識の切り替えで、素直に受け入れた。
「これを投げる」
「投げちゃった……でもあれ? 効いてないよ」
「そうみたいだな」
フェルノが投げたダイナマイトは不発ではなかった。
しかしトカゲ戦車を停めることはできなかった全く気にせず、ぐんぐんスピードを上げる。このままじゃ追いつかれる。その前に撃たれると思った。
その時だった……
「来てください、【雷鳴】」
バチッ! と火花が上がった。
アキラたちはその音に気が付き自然と意識してしまう。見れば空に黄色い閃光が上がっていた。あれは何なんだ。三人は足を止めていた。
すると、トカゲ戦車が砲撃をしようとした。止まった獲物など取るに足らないというのか。
けれどトカゲ戦車の砲台は、瞬く間に破壊され、本体自体のHPが何故かなくなってしまった。
「「「えっ!?」」」
三人は固まってしまった。
しかし目線が釘付けになったままだった。その目に映ったのは、突然トカゲ戦車が崩れる光景。砂漠の中でガラクタになった瞬間。
そこに立つ何者かの影。手には刀のようなものを持ち、結ったポニーテールが風に誘われた。
1
お気に入りに追加
227
あなたにおすすめの小説

一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい
司真 緋水銀
ファンタジー
【あらすじ】
一級の警備資格を持つ不思議系マイペース主人公、石原鳴月維(いしはらなつい)は仕事中トラックに轢かれ死亡する。
目を覚ました先は勇者と魔王の争う異世界。
『職業』の『天職』『適職』などにより『資格(センス)』や『技術(スキル)』が決まる世界。
勇者の力になるべく喚ばれた石原の職業は……【天職の警備兵】
周囲に笑いとばされ勇者達にもつま弾きにされた石原だったが…彼はあくまでマイペースに徐々に力を発揮し、周囲を驚嘆させながら自由に生き抜いていく。
--------------------------------------------------------
※基本主人公視点ですが別の人視点も入ります。
改修した改訂版でセリフや分かりにくい部分など変更しました。
小説家になろうさんで先行配信していますのでこちらも応援していただくと嬉しいですっ!
https://ncode.syosetu.com/n7300fi/
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
俺と蛙さんの異世界放浪記~八百万ってたくさんって意味らしい~
くずもち
ファンタジー
変な爺さんに妙なものを押し付けられた。
なんでも魔法が使えるようになったらしい。
その上異世界に誘拐されるという珍事に巻き込まれてしまったのだからたまらない。
ばかばかしいとは思いつつ紅野 太郎は実際に魔法を使ってみることにした。
この魔法、自分の魔力の量がわかるらしいんだけど……ちょっとばっかり多すぎじゃないか?
異世界トリップものです。
主人公最強ものなのでご注意ください。
*絵本風ダイジェスト始めました。(現在十巻分まで差し替え中です)

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』
ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。
誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる