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◇71 今回の種明かし(キングヤドカリー編)

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  キングヤドカリーは倒れた。
 と言うか蒸し焼きになっていた。赤々としていて美味しそう。食べないけどさ。
 そんな惨状を見守る三人は、せっせと仲間の一人の腕を固定している酸を剥がすことにした。二人は、奥歯を噛み締める。

「「せーのっ!」」

 バリッ! ——

 白い酸がボロボロと剥がれた。
 おかげで腕を久々に解放され、ぶんぶんと肩から回すNightが見られた。
 アキラとフェルノはここまでの疲労で、既に体力切れだった。

「はぁはぁ。熱い、ね」
「うん。私は海水に直に使ってたから、足下が熱いよ」
「炎を操るファイアドレイクでもか? 意外だな」
「それは理由になってないよ。そもそも最後の瞬間しか、足下の炎は使ってないんだからさ」

 フェルノが抗議した。
 するとNightはふむふむと考えこんでいる。
 とは言え、洞窟の中は熱で充満している。蒸発した海水が天井に張り付いて、垂れてくる。それがちょっとだけ冷たかった。

「でも、今回の作戦って、一体何だったの? いつの間にかアキラもいなくなってたしさー」
「いなくなってなんかないよ。ねっ、Night」
「私にも見えなかったが、あのスキルを使ったのか?」
「うん。でもまさかこんな感じなんだね。結構面白いかも」
「どういうこと?」

 今回の作戦。
 ビニールを受け取ったアキラは一度全力でビニールを上に投げつけた。
 ここまでが、フェルノが殻に向かって突撃した瞬間。ビニールは空中に巻き上げられている。

「【キメラハント】:【幽体化】」

 アキラの体が軽くなる。
 それから何にも触れられない。幽霊になってしまい、地に足がつかない。
 そのため、空中に投げ出され、その足は動かさずとも天井にまで昇っていた。

「うわっ、凄い。でも、なんだか変な感覚」

 まるで自分が自分でないみたいだ。
 体から魂が抜けたのではない。自分そのものが幽霊になっていた。
 しかしふわふわ感が凄まじく、気持ちがいいが、すぐに体は元の姿を取り戻そうとする。

「ここで一旦解除!」

 アキラの手は放り投げたビニールを掴んだ。
 その光景をフェルノは見ていた。

「アキラ!」
「今だよ、フェルノ!」

 それからアキラはビニールを手早く張った。
 幸い、殻の尖った部分がビニールを固定してくれた、
 端については散らばった殻の破片を使って固定する。

「これで、よし。後は、私も隠れるだけっと」

 アキラは手早く済ませると、その場から一気に飛んだ。
 もう一回、【幽体化】を使った。
 そのおかげで壁の奥に逃げ込み、一旦外に出ていた。涼しかった。

「ふはぁー。涼しいっ。って言うか、とっても綺麗な海!」

 そこに広がるのは、深いネイビーブルーの海。
 それに洞窟のじめじめとした空気はない。
 おかげで清々しい気分で、潮風に当たっていた。皆んなには悪いけどと思いつつだが。

「うわぁ、な、何この壁。あ、熱い!」

 そんな中、壁を背にしていたところ、もの凄く熱くなっていた。
 壁の隙間から蒸気が出ている。
 水が溶けだして、塩のようなものが溢れていた。これは、戻らない方がよさそうだ。


「って感じだったんだけど」
「じゃあずっと休んでたの? あんな熱い中、必死に耐えてたのに」
「う、うん。最初っから、フェルノぐらいじゃないと耐えられないと思ってたから」
「私も、一応防護幕を張っていた」
「そんなー」

 フェルノが項垂れる。
 フェルノの炎は自分には効かないと思っていたけど、暑いのは暑いんだと改めて納得した。
 そんな中、殻に引っかかっていた金色のメダルが気になる。手にしてみると熱かった。

「熱っ!」
「おい気を付けろ」
「ご、ごめん」

 Nightに怒られながらも、海水に落としたメダルを拾い上げる。
 それからメダルの表面に付いた苔を取り払うと、そこには星が三つ描かれていた。
 しかもそんなメダルは全部で三枚。如何やら、かなり好調だった。
 この調子で、もっともっと集めるぞ。と思っていたのだが、その後はあまり羽振りはよくなく、ぼちぼちの展開に終わった。
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