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◇62 新しい家具1

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 とりあえず家具がない。
 そこから始まった家具待ち時間だったけど、ようやく家具が届く。
 と言うか、私しかこのお店を知らないので、ソウラさんからwoodpeckerさんの工房に案内してもらった。

「ここが、ピーコの工房よ」
「ここって、お店の地下ですよね?」
「ええ、そうよ。やっぱり搬入は近い方がいいでしょ」
「でも、この螺旋階段はかなり降り難いと思うんですけど」
「それは、ノーコメントで」

 ソウラは話をはぐらかした。
 多分失敗したんだと、アキラは推測するが、黙っておく。
 それから、螺旋階段を降り、気が付けば光が漏れていた。

「下ってこんなに明るいんですか?」
「倉庫と兼用しているからかしら。多分、ピーコが搬入してくれていると思うんだけど」

 そう言って、ソウラさんは重い扉を開けた。
 すると、そこから一気に光が漏れてくる。
 眩しいほどで、一瞬目を瞑ると、そこに見えてのは板張りの工房だった。

「うわぁ! 何ですか、この部屋」
「ここがうちの工房よ。結構綺麗にしているでしょ」
「は、はい。それにこんなに明るいんですね。LEDライトなんてないのに」
「そこは世界観を中和させるために、別の光源を使用しているのよ。サンライトって言う、蛍光灯」
「それでも蛍光灯なんですね」
「大抵そんな感じよ。それで、ピーコなんだけど……いないのかしら?」

 ソウラはきょろきょろと見回した。
 しかし床に木くずが落ちている。
 それからアキラは面白そうなものがあるなと思いながら、見学をしていると、不意に話しかけられた。

「面白い?」
「えっ、はい。電動丸鋸なんて、この世界にもあるんですね」
「それは電動じゃなくて、この世界だとエレクトリカ・マシーンって呼ばれている貴重品。ここにある工具は、皆んなリアルのものに準拠しているつもり」
「そうなんですか。って、誰ですか!」

 そこにいたのは、見知らぬ女性だった。
 黒髪に、赤いメッシュが混ざっている。
 だけど特徴的なのは、頭のとさか。まるで鳥のようだった。

「私は……」
「あっ、いたいたピーコ」
「ピーコ、さん?」
「ピーコでもピー子でも、どっちでもいい。それより、まずは自己紹介。私はwoodpecker。名前の由来はキツツキ、この世界での種族はゲームオリジナルの鳥人、モチーフはキツツキになってる。得意なのは、木製の家具。と言うわけでよろしく」
「えっと、私はアキラです。あっ、本名がアキラです。種族は、ヒューマンです」
「ヒューマン!? 噂通り、凄い」
「噂?」

 アキラは首を傾げていた。
 しかし、そんな彼女に耳打ちしたのはソウラで、如何やらネットで噂になっているらしい。
 何がとは、この間のオロチコンダについてだ。

「オロチコンダを倒したプレイヤーがいるらしいって噂になっていたから。それでこの間、ソウラから知り合いの子がオロチコンダを倒したって聞いたから、つい気になって」
「そうだったんですか。でも確かに、Nightもそんなことを影で言っていたような……興味なかったけど」
「Night? それって、ゲーマー界隈で噂の?」
「噂になっているんですか。実況なんてしてないって聞いてたのに」
「ゲーマーの中で知らない人はいないぐらい有名。でも、如何して強いのかはわからない。異次元って言われてる」

 何だかくだらなそうに見えて、実は楽しい話だった。
 アキラは頷きながら聞いていたが、ソウラさんはそんな中、突飛にピーコさんの肩を組んだ。
 それから一言。

「ちなみに、私たち大学生でーす」
「ソウラ、その情報は必要ない」
「えっ? でも今度のテストで単位取れないと、大変よ」
「私は推薦だから、早々引っかからない」
「うーん、それはちょっと許せないなー」

 まだわからない話だった。
 しかしここからしばらくその話でもつれた。
 全く凄い人たちだ。
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