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◇61 メタルの爪は厄介4
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アキラはNightとともに、フェルノの援護に入った。
その間、フェルノは一人でメタルクローの攻撃を抑え込みながら、なんとか押し返そうとしていた。
こんな狭いところでは、まともに動けなかった。
「フェルノ、無理はするな」
「無理はしないよ。でも、もっと火力を上げるよ」
フェルノの拳が燃え上がる。
するとメタルクローの熱伝導率が上がったのか、手を放そうとする。
しかし、抑え込んだフェルノは離す気がない。
グルグマァァァァァァァァァァ! ——
「く、苦しんでるの!」
「熱伝導率が高いんだ。しかしフェルノはよく燃えるな」
「その言い方は、かなり問題発言だと思うよ」
「だがもっと問題なのは、この森だ」
Nightの気がかりはそこだった。
これ以上、炎が上がれば森に燃え移る。
そうなれば、火災でこっちまで大変な目に遭う。
「フェルノ、それ以上燃やすな」
「えっ!? よく聞こえない」
「駄目だ。だったら、メタルクローを叩きつけろ」
「はぁっ!?」
フェルノは聞こえていた。
しかし、何かを察したのか、獣の勘みたいに、メタルクローの背中を叩きつけた。
その拍子に木の幹に炎が燃え広がりそうになるが、それをする前にアキラは走った。
「その爪貰ったよ!」
アキラは一番ヤバいものを把握していた。
腕は【キメラハント】で、【甲蟲】を使っている。
完全武装したアキラの拳が、硬いはずのメタルクローの爪の一本を弾き飛ばした。悲痛とともに、HPが削れる。
「なかなか物騒なことをするな」
「でも一番危ないのはこれでしょ?」
「だが見てみろ」
「ん?」
アキラは視線を動かすと、暴れ狂って手の付けられないクマがいた。
アキラ爪を折ったことで、負荷がかかったんだ。
そのせいで、暴走している。つまり痛みで狂ってしまったのだ。
「おい、如何する。こんな暴走状態のメタルクロー、何をするかわからないぞ」
「それはそうだけど、これしかなかったよね?」
「それはそうだが。……せめて、このナイフが刺されば」
そう言って、腰のベルトから、ナイフを取り出した。
先端が紫色をしている。
完全に毒ナイフだ。でも、このナイフが刺さればきっと致命傷にはなる。
「そのナイフが刺さればいいの?」
「ああ」
「でも、そのナイフ刃渡り短いし、投げナイフでしょ? なかなか刺さらないでしょ」
「おそらくな。だが一部が燃焼されれば、その分刃は通りやすくなるはずだ」
何て恐ろしい考え方。
とは思ったが、それしかなかった。そこでアキラは【キメラハント】で【甲蟲】と【灰爪】を発動した。
両腕ばかりが強化される。
「フェルノ、もう一度炎を点火してくれる?」
「それはいいけど、如何するのー?」
「えーっとね、こうするの」
そう言って、アキラは突飛なアイデアを説明した。
すると「面白そう」と肯定的で、Nightはその間、ナイフを投げつけるだけではなく、剣を構えてダメージを取りに行く。
「それじゃあ揃っていくよ」
「オッケー」
「せーのっ!」
アキラとフェルノは走り出した。
しかし今回は違う。それはアキラを前にして、フェルノが後ろでバックアップをしていること。両手の炎をスラスターの代わりにして、メタルクローに近づいた。
「それじゃあ、後はお願いね」
「うん、流石に熱いけどね」
「あはは、それは言わない約束でしょー」
フェルノから離れるアキラ。
しかし、その体はスライムのようになっていて、一時的にメタルクローの視界を奪う。
奪われたメタルクローはのたうち回り、その隙を狙ってか、Nightは毒塗ナイフを放った。
「そんなでたらめな手段を取るな!」
「よっと、ごめんね。でもこれしか思いつかなかったんだよ」
アキラに毒ナイフは効かなかった。
スライムがずるりとメタルクローから剥がれ落ち、メタルクローにだけナイフが食い込んだ。
のどぼとけに突き刺さり、それが致命傷になったのか、メタルクローは動かなくなった。如何やら、毒のダメージと単純なダメージが入ったんだ。
「なんだ、この達成感の無さは」
「虚無感凄いよね」
「呆気ないというよりも、作戦がはまったというよりも、なんだこの展開は」
全員腑に落ちなかった。
でもつまらないわけじゃない。このパーティーの底知れないものが見えた気がした。
しかしメタルクローは単純に弱いのではない。アキラたちが強すぎたんだ。
その間、フェルノは一人でメタルクローの攻撃を抑え込みながら、なんとか押し返そうとしていた。
こんな狭いところでは、まともに動けなかった。
「フェルノ、無理はするな」
「無理はしないよ。でも、もっと火力を上げるよ」
フェルノの拳が燃え上がる。
するとメタルクローの熱伝導率が上がったのか、手を放そうとする。
しかし、抑え込んだフェルノは離す気がない。
グルグマァァァァァァァァァァ! ——
「く、苦しんでるの!」
「熱伝導率が高いんだ。しかしフェルノはよく燃えるな」
「その言い方は、かなり問題発言だと思うよ」
「だがもっと問題なのは、この森だ」
Nightの気がかりはそこだった。
これ以上、炎が上がれば森に燃え移る。
そうなれば、火災でこっちまで大変な目に遭う。
「フェルノ、それ以上燃やすな」
「えっ!? よく聞こえない」
「駄目だ。だったら、メタルクローを叩きつけろ」
「はぁっ!?」
フェルノは聞こえていた。
しかし、何かを察したのか、獣の勘みたいに、メタルクローの背中を叩きつけた。
その拍子に木の幹に炎が燃え広がりそうになるが、それをする前にアキラは走った。
「その爪貰ったよ!」
アキラは一番ヤバいものを把握していた。
腕は【キメラハント】で、【甲蟲】を使っている。
完全武装したアキラの拳が、硬いはずのメタルクローの爪の一本を弾き飛ばした。悲痛とともに、HPが削れる。
「なかなか物騒なことをするな」
「でも一番危ないのはこれでしょ?」
「だが見てみろ」
「ん?」
アキラは視線を動かすと、暴れ狂って手の付けられないクマがいた。
アキラ爪を折ったことで、負荷がかかったんだ。
そのせいで、暴走している。つまり痛みで狂ってしまったのだ。
「おい、如何する。こんな暴走状態のメタルクロー、何をするかわからないぞ」
「それはそうだけど、これしかなかったよね?」
「それはそうだが。……せめて、このナイフが刺されば」
そう言って、腰のベルトから、ナイフを取り出した。
先端が紫色をしている。
完全に毒ナイフだ。でも、このナイフが刺さればきっと致命傷にはなる。
「そのナイフが刺さればいいの?」
「ああ」
「でも、そのナイフ刃渡り短いし、投げナイフでしょ? なかなか刺さらないでしょ」
「おそらくな。だが一部が燃焼されれば、その分刃は通りやすくなるはずだ」
何て恐ろしい考え方。
とは思ったが、それしかなかった。そこでアキラは【キメラハント】で【甲蟲】と【灰爪】を発動した。
両腕ばかりが強化される。
「フェルノ、もう一度炎を点火してくれる?」
「それはいいけど、如何するのー?」
「えーっとね、こうするの」
そう言って、アキラは突飛なアイデアを説明した。
すると「面白そう」と肯定的で、Nightはその間、ナイフを投げつけるだけではなく、剣を構えてダメージを取りに行く。
「それじゃあ揃っていくよ」
「オッケー」
「せーのっ!」
アキラとフェルノは走り出した。
しかし今回は違う。それはアキラを前にして、フェルノが後ろでバックアップをしていること。両手の炎をスラスターの代わりにして、メタルクローに近づいた。
「それじゃあ、後はお願いね」
「うん、流石に熱いけどね」
「あはは、それは言わない約束でしょー」
フェルノから離れるアキラ。
しかし、その体はスライムのようになっていて、一時的にメタルクローの視界を奪う。
奪われたメタルクローはのたうち回り、その隙を狙ってか、Nightは毒塗ナイフを放った。
「そんなでたらめな手段を取るな!」
「よっと、ごめんね。でもこれしか思いつかなかったんだよ」
アキラに毒ナイフは効かなかった。
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のどぼとけに突き刺さり、それが致命傷になったのか、メタルクローは動かなくなった。如何やら、毒のダメージと単純なダメージが入ったんだ。
「なんだ、この達成感の無さは」
「虚無感凄いよね」
「呆気ないというよりも、作戦がはまったというよりも、なんだこの展開は」
全員腑に落ちなかった。
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