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◇55 ギルドホームを買いました2

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 次の日。
 六月も上旬。
 外は雨が降っていて、梅雨の時期です。

「うわぁ! ギルド会館の下に、こんな階段があったんだ」
「でもさー、なんでこんなところに連れてこられたのかなー」
「ここからなら、各ギルドのギルドホームに直通で行けるからな。それで私たちのギルドホームは……こっちか」

 Nightはきょろきょろと見回す。
 ギルド会館の地下には、たくさんの扉があった。
 一本道の通路ではなく、ちゃんと名前が書いてある。しかし、非公開になっている場合もあった。

「ここは、怖いね。扉ばっかりで、頭がおかしくなりそうだよ」
「確かに迷うよねー。地図がないとわからなくなるよー」
「マッピングができれば問題ないだろ。初見だと、難しいがな。っと、ここだ」

 そう言って、辿り着いたのは、ただの壁だった。
 しかしそこには取っ手のようなものが付いている。手の形をしていた。

「ここただの壁だよ?」
「そんなもの、誰が見てもわかる」
「でも手形をした、明らかにセンサーが付いてるよ?」
「ハイテクな設定!」
「いや、この手のものは、大抵のファンタジー漫画である設定だろ。そうでもしないと、ギャグマンガは成立しない」
「ギャグマンガは、除外でお願いします」

 アキラは軽快なツッコみをした。
 そんなことをしていると、フェルノが手を手形に当てた。
 しかも、アキラの手だった。

「な、何するの!」
「いやー、早く行こうと思って」
「自分の手でよくない?」
「いやいや、最初はギルマスからでしょ。って、うわぁ!」

 急に壁が光った。
 すると奥が見えなくなる。
 何だ、この光。ま、眩しい。何かありそうな神々しさが感じられた。

「よし、行くぞ」
「行くんだ。行く系なんだ」
「転送してくれるタイプじゃないんだ。それに今後は、ここを使わないからな」
「「どゆこと?」」

 などと口にしている間に、三人は砂浜の上にいた。
 そこは白い砂浜と、穏やかな海がある。
 気持ちのいい天気で、澄み渡る晴れ模様だった。

「ここが、私たちのギルドホームのある島?」
「そうだな。ここが、そうだ」
「じゃあ何処にあるのかな?」
「いいか落ち着け。わざわざ地盤の悪い、砂浜に建物を築く馬鹿が何処にいる? おそらく、森の中か、あの高台のどちらかだな」
「カタログは如何だったの?」
「カタログだと、高台だったがな……となると、あそこか」

 視線が移った。
 そこには高台がある。かなり平たくて、綺麗な建物がそびえていた。
 ここからでもちゃんと見える。

「かなり遠いのか。そこまで歩きたくないぞ」
「見てよ、そこに階段があるよ」
「あれは階段なのか?」
「階段じゃないかなー。ほら、こういうタイプの階段って、海沿いにはよくあるでしょ。ほら、あの刑事ドラマとかで有名な崖の一つとか」
「東尋坊な。確かにあそこは、満潮時以外は下に降りられるようになっているが、手すりもないのは危ないな」
「【ライフ・オブ・メイク】で作ったら?」
「どれだけHPを使えばいいんだ」

 Nightはため息を吐いた。
 そんな彼女だったが、最短距離を求めて、階段を背中を押されて上る。
 するとそっこに見えたのは、かなり大きなコテージのような家だった。

「す、凄い。なんか、それっぽい」
「二階……いや、三階建ての建築物のようだな。外壁は、煉瓦造りで、内側はヒノキか」
「なんか凝ってるね。それにしても、綺麗すぎない?」

 確かに綺麗だった。
 しかしそこに目をやるよりも先に、中が気になった。
 フェルノがアキラの服の袖を引っ張り、早く行きたいとばかりに、目をキラキラさせる。子供のようだった。

「ねえねえアキラ、Night。早く入ってみようよ」
「う、うん。ところでNight、部屋の中って?」
「それはな……」

 含みがあった。
 アキラが扉を開けると、そこにあったのは、綺麗な部屋の中。
 なんかそれっぽい暖炉や、キッチンがある。だけど肝心なものがなかった。そう、家具だけが何故か何もなかった。
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