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◇46 朦朧とする意識の中で

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  牙を受け止めるのは、十字架の剣。
 それをしているのは、オロチコンダとNightのやり取りだった。
 その後ろでは、倒れ込んだまま動かない、アキラの姿がある。

「Night、何やってるの!」
「何って、攻撃を受け止めているんだ」
「そんなことしたら、危ないって。って、アキラ!」

 フェルノは倒れたまま動かないアキラの姿を見た。
 紫色に汚染されている。
 その姿を見て、オロチコンダの仕業だと悟ると、自分も迎え撃とうとした。しかしNightによって、制止される。

「来るな、フェルノ!」
「ど、如何して!」
「お前が動けば、熱源を感知されてアキラが危ない。この毒を食らった以上、完全に落ちるまで、動かすことはできない。二次災害を生み出すだけだ」
「だったら如何したらいいの!」
「決まっているだろ。アキラに声をかけ続けろ、そうして意識を戻せ。もしかしたら、アキラの精神力と【キメラハント】なら、毒を打ち負かす武器を得られるかもしれない」
「そんな、可能性が!」
「可能性の話は一旦やめだ。とにかく、やるしかない。この世界の仕組みはリアルだ。厳密には、違うが、感性が高すぎる人間は、現実に戻っても影響がそこはかとなく出る可能性も高い。アキラはそのタイプの典型例だ」

 Nightは既に見透かしていた。
 精神の値は、その辺りにも影響が出ている。
 戻ってこられないなどや、支障を大いにきたすということは絶対にないが、それでも感覚として影響が出かけない。特に、意識を失った状態で、不安定になった緩い精神状態は、身を滅ぼしかねない。
 それが言いたかった。

「だからこそ、お前は声をかけ続けて意識を呼び戻せ」
「わ、わかった。戻ってきて、アキラ。アキラー!」

 フェルノは、大声で叫んだ。
 耳元で叫んでも返事のない親友に、涙目になるフェルノ。
 しかしその声は、少なからず、心の奥に響いていた。アキラは眠れる意識の中で、毒素と戦っていた。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 不思議な感覚だった。
 体が軽い。まるで自分じゃないみたいだ。
 アキラは不思議な体験をしていた。

 それからもう一つ不思議な体験でもあった。
 体が痛いんだ。
 まるでつんざいているような、それこそ焼けるように肌が痛かった。

「痛い。痛い痛い痛い痛い。苦しい苦しい苦しい苦しい。焼ける焼ける焼ける焼ける!」

 心の声が漏れ出していた。
 苦痛が精神を病んでいく。
 そんなアキラのふわふわする意識は、毒に侵されていた。

「心細いな。このまま、このまま永遠に、駄目だ。最悪を変えるんだ。最悪を変える意識は、自分の運命で掴み取らないといけないんだ!」

 意識を変えることにした。
 こういう時でもポジティブに。この痛みを渇望に変える。それが、今できること。
 それを悟った瞬間、体が何故かトランスした。

「あ、あれれ? 何だろ。体がふわふわする。意識が、ここは海の中?」

 まるで水の中だった。
 たぷんたぷんの海の中には、泡がたくさんある。
 それなのに、空でも舞っているみたいに、体が軽くて空気を感じた。大地の恵みが、体を癒し、星の輝きに包まれているみたいな、様々な思考が芽生える。不思議な感情だった。そんな中、聞こえてきたのは聞きなじみのある声だった。

「アキラ……起きてよ、アキラ!」
「この声、フェルノ? 如何して、如何してこんなところに聞こえるんだろう……」

 頭がぼんやりする。
 けれど記憶が呼び起こされ、オロチコンダの毒を思い出した。
 
「そうだ。ここで倒れてたら、皆んなが気にしすぎちゃう。勝ちたい。負けるなんて、やっぱり勝つ方がいい。だから、やることはここから這い出ること。だから、だから!」

 脳裏に呼び起された。
 それは文字列ではない。女の子の声のようだった。

 固有スキル:【キメラハント】
『新しいスキルを構築しました。オロチコンダ:【毒無効】』

 その声に導かれるみたいだった。
 世界が広がる。白い世界から飛び出して、アキラは目が覚めた。
 そして最初の一足は、完全に意識の外側のもの。
 その手は、灰色の毛に覆われ、【灰爪】がオロチコンダの牙をへし折っていた。
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