VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

文字の大きさ
上 下
45 / 599

◇45 毒液の弾丸

しおりを挟む
 オロチコンダに蛇睨みをされた。
 しかし如何してオロチコンダは松明の火の方を一瞬見たのだろうか?
 アキラは気になっていた。

「如何して、松明を投げたの?」
「蛇は熱を感知する能力を持っているからな。私たちよりも高い熱量を持つ動くものを追わせただけだ」
「そうなの?」

そう言えば、サーモグラフィーみたいなものかな?
 そう考えれば、かなりしっくりくる。
 すると、松明を失い、ヒカリゴケも届かないので、Nightは何か血迷ったのかな? 洞窟の壁を見ながら、適当なところに、ナイフを突き立てた。
 その先には小さな巾着袋が付いていて、何か入っている。
 おまけに糸もくくってあった。

「何をしてる、Night」
「何となくだ。確証はないが、このナイフは役に立つ」
「そうなのかな? うーん。まあいいや」
「そうだな。それより、こいつを如何するのかだ」

 Nightは睨みつけた。
 その手には十字架状の剣が握られていて、後ろの方では火の手が上がる。
 しかしオロチコンダは、少しだけHPが削れているだけで、まるであしらわれているみたいに、するする抜けていく。

「どうなってるの、これ!」
「この、オラァオラァ!」

 二人は巧みに攻撃を繰り返す。
 しかしHPの残量が減らない。それどころか、こちらの方が疲れてしまう。

「はぁはぁ。全然HPが減らない」
「こっちもぬるぬるして、まともに攻撃は入らない。でも、何だろ。このぬめぬめ取れれば、少しは効くかな?」
「さあな。しかしこいつにはもっと凶悪なものが……」

 と言っているうちに、オロチコンダが体を上げた。
 どこからが上半身なのか。口の部分が膨らんだかと思えば、次の瞬間、何かが吐き出された。
 それは毒の弾丸と呼ぶには相応しく、どろどろに地面が溶けてしまった。

「これが、毒?」
「毒って言うより、胃液に見えたんだけど」
「それもそうだ。こいつの体内で生成されたものだからな。にしても変だ。洞窟の毒とは違うのか?」

 Nightは色々考えていた。
 その間も、動き回りながらそれぞれが立ち回る。
 フェルノが炎の拳で叩き込むと、そこだけが少し火傷を負ったみたいに溶けていた。
 もしかして炎だけは効くのかと、三人は画策したが、オロチコンダは動き回る。

「このっ! 囲おうとしてるよね、この蛇!」
「それが常套句だ。アナコンダは巻きつけて相手を殺す。それを踏襲しているんだろうな」
「だとしてもこんなに大きいと、逃げられないよ」
「だったら逃げ道を無理矢理開ければいい」

 Nightはフェルノが火傷を負わせた、部分を狙って、攻撃した。
 するとオロチコンダが揺らめいた。
 体をのけぞらせると、そのまま逃げ道が生まれる。

「今だ、全員で逃げろ!」
「うん。以降、フェルノ」
「オッケー!」

 フェルノは足元に火を焚いた。
 火が酸素に触れて、爆発すると、爆風が生まれる。
 それを受けてか、加速するものの、アキラは走っていた。
 まだ時間的余裕はある。
 しかし何故か、嫌な予感がした。

(なんだろ、何かある。嫌な予感がする……)

 そう思ったのも束の間。
 アキラの視線はオロチコンダの首の位置と視線の動きが気になった。
 誰かを見てる? その先にいたのは、警戒しているNightだった。

(頬が膨らんでる? もしかして、このっ!)

 アキラは全速力で走った。
 【キメラハント】を使い、【灰爪】を駆使すると、オロチコンダの体に突き立て、削りながら飛び越えた。

「嘘でしょ、アキラ!」

 驚くフェルノ。しかしその声は届いていない。
 アキラはそこにいたNightを手のひらで押す。

「うわぁ!」
「間に合った。うわぁ!」

 押し倒された、Night。
 何が起きたのか。その目で見たのは、最悪の光景だった。

「アキラ? おい、アキラ!」
「Night、避けてってー!」

 この時のNightの耳にフェルノの声は聞こえていた。
 しかしそれはできない。何故なら、自分を庇って倒れたアキラを守るために、一人で剣を抜き、オロチコンダの牙を止めていたからだ。

 その後ろでは倒れたアキラ。
 全身に毒液がかかり、顔が紫色に汚染される。
 完全にピンチだった。
 HPの表記は毒エフェクトで汚染され、意識も途切れかけていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...