36 / 593
◇36 ピンク色の毛色
しおりを挟む
白桃虎を討伐した。
結局最後は倒しちゃったけど、無事に欲しかったものは手に入った。
アキラの手のひらにくっついていたもの。それは、ピンク色をした白桃虎を殴ったことで手に入った毛の一部だった。
「それでこれを如何するの?」
「如何するのじゃないだろ。今回の依頼は、この毛を使って染色液を作ることだ」
「せ、染色液?」
それを聞けば、口を開き切っていた。
何せそんなものどうやって作ればいいかなんてわからない。
と思っていたが、Nightの手の中には小さな透明な瓶が握られている。中には少しドロッとした液体が入っていた。
「それはなに? 水飴みたいだけど」
「水飴? いや、そんなものではないぞ。これは染色液で、この世界では比較的安価で取引されている」
「へえー」
「まあ私のは、自分で採取してきたものだがな」
かなり凄そうなことを言っていた。
つまり自前で持ってきた天然ものてことだ。
いくら安価でも、手に入れるまでの行動が凄すぎる。
しかもその話を聞いていたアキラは、肝心のあまりぼーっとしている。
Nightに対する見方がまた少し変わって、不意に口から言葉が滑っていた。
それを目の前にいるNight本人に伝えてしまった。
「Nightって、結構慎重って言うか、やっぱりまめな性格なんだね」
「やっぱりってなんだ。否定はしないが、私だって妥協はするぞ」
「本当?」
「本当だ。日常生活でもそうでないところでも、私は姿勢を崩さない。私はあくまでも自分が正しいと思う行動をとっているだけだ。そんな他人からのくだらない意見などで動く気はない」
それはまめだとか、利己的だとかじゃない気がする。
もっと、強情で傲慢な考えが滲み出ていた。確かに、Nightなら何でもそつなくこなしちゃいそうだし、手先も器用そうで、今も白桃虎の毛からピンク色だけ取り出そうと、必死にすり合わせている。その結果を見るに、やっぱりまめで慎重な子だった。
「Nightって、やっぱり面白いね」
「なんだ。煽っているのか。受け手は立たないが」
「立たないんだ。でも、それがNightっぽい」
その間もNightの手は確実にすり潰していた。
潰して潰して、液体がピンク色に染まると、毛の色は抜け落ちて透明になり、代わりに色と匂いは液体の中に溶けていた。
「こんなものだな」
「凄い。これで1200円なの!」
「円じゃなくて、ジュエルだがな。まあこんなものだろう。品質も悪くない」
「品質。普通ってこと?」
「いや、状態はいいな」
この世界のアイテムにはレア度が存在するが、人の手が加えられたものには、代わりにS~Fの七段階評価がある。
レア度と同じだ。今回は、Bランクだったみたいで、器用のステータスがものを言うみたいだ。
「とりあえず最低限は上手くいったな」
「Cランク以上だもんね」
「そうだな。とりあえずこれは納品するとして、アキラ一つ言っておくが、私っぽいってなんだ?」
「えっ!? もしかして気にしてた?」
「そうではないんだが……」
如何してもじもじしているんだろ。
もしかして気になるのかな? うん、私にはわかる。
これは絶対に気にしていた。
けれどアキラはそんな彼女を前にして、少し迷ってけど何も言わないことにした。
なんたって、こんな珍しい姿、たじたじで面白いんだもん。
結局最後は倒しちゃったけど、無事に欲しかったものは手に入った。
アキラの手のひらにくっついていたもの。それは、ピンク色をした白桃虎を殴ったことで手に入った毛の一部だった。
「それでこれを如何するの?」
「如何するのじゃないだろ。今回の依頼は、この毛を使って染色液を作ることだ」
「せ、染色液?」
それを聞けば、口を開き切っていた。
何せそんなものどうやって作ればいいかなんてわからない。
と思っていたが、Nightの手の中には小さな透明な瓶が握られている。中には少しドロッとした液体が入っていた。
「それはなに? 水飴みたいだけど」
「水飴? いや、そんなものではないぞ。これは染色液で、この世界では比較的安価で取引されている」
「へえー」
「まあ私のは、自分で採取してきたものだがな」
かなり凄そうなことを言っていた。
つまり自前で持ってきた天然ものてことだ。
いくら安価でも、手に入れるまでの行動が凄すぎる。
しかもその話を聞いていたアキラは、肝心のあまりぼーっとしている。
Nightに対する見方がまた少し変わって、不意に口から言葉が滑っていた。
それを目の前にいるNight本人に伝えてしまった。
「Nightって、結構慎重って言うか、やっぱりまめな性格なんだね」
「やっぱりってなんだ。否定はしないが、私だって妥協はするぞ」
「本当?」
「本当だ。日常生活でもそうでないところでも、私は姿勢を崩さない。私はあくまでも自分が正しいと思う行動をとっているだけだ。そんな他人からのくだらない意見などで動く気はない」
それはまめだとか、利己的だとかじゃない気がする。
もっと、強情で傲慢な考えが滲み出ていた。確かに、Nightなら何でもそつなくこなしちゃいそうだし、手先も器用そうで、今も白桃虎の毛からピンク色だけ取り出そうと、必死にすり合わせている。その結果を見るに、やっぱりまめで慎重な子だった。
「Nightって、やっぱり面白いね」
「なんだ。煽っているのか。受け手は立たないが」
「立たないんだ。でも、それがNightっぽい」
その間もNightの手は確実にすり潰していた。
潰して潰して、液体がピンク色に染まると、毛の色は抜け落ちて透明になり、代わりに色と匂いは液体の中に溶けていた。
「こんなものだな」
「凄い。これで1200円なの!」
「円じゃなくて、ジュエルだがな。まあこんなものだろう。品質も悪くない」
「品質。普通ってこと?」
「いや、状態はいいな」
この世界のアイテムにはレア度が存在するが、人の手が加えられたものには、代わりにS~Fの七段階評価がある。
レア度と同じだ。今回は、Bランクだったみたいで、器用のステータスがものを言うみたいだ。
「とりあえず最低限は上手くいったな」
「Cランク以上だもんね」
「そうだな。とりあえずこれは納品するとして、アキラ一つ言っておくが、私っぽいってなんだ?」
「えっ!? もしかして気にしてた?」
「そうではないんだが……」
如何してもじもじしているんだろ。
もしかして気になるのかな? うん、私にはわかる。
これは絶対に気にしていた。
けれどアキラはそんな彼女を前にして、少し迷ってけど何も言わないことにした。
なんたって、こんな珍しい姿、たじたじで面白いんだもん。
1
お気に入りに追加
226
あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる