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◇28 闇夜の墓城1
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時間はあっという間に過ぎ去っていた。
ソウラのお店でお話をして時間を潰していた、アキラはいつの間にか空が暗くなっていることに気が付いた。窓の向こうの空は黄昏色を抜け、緩やかな暗がりが迫っていた。
暗闇が溶け出す。水の入ったコップの中に、醤油を零したみたいな深い深い色味がのめり込む。怖い。夜をそんな風に捉えることもあるだろうが、アキラにとっては、そんなものは既に脳裏から掻き消えていた。
「そろそろ行きますね」
「あれ? もう行くの?」
「はい。シャンベリーに行かないといけないんです。ソウラさん、今度はソウラさんの友達と会ってみたいです」
「そうね。多分、明日はいると思うけど?」
「うーん、明日はログインするかはわからないですけど、じゃあ是非」
アキラは笑顔で答えた。
ソウラさんの友達には興味がある。こんな変わったものを作る人たちだ。きっと変わった人で、面白いんだろうと、アキラは思った。アキラの友達も大概変わっていて面白いけど、NightもNightなので、何とも言えない。
「じゃあまた今度。ソウラさんから貰った聖水しっかり使ってみますね」
「ホント! あれ、かなり売れ残ってたから」
「あはは。まあ……ですね」
アキラは一瞬言葉に詰まるが、すぐに笑って誤魔化す。
ソウラは、アキラと同じようにこめかみや額から汗を流しながら、笑って誤魔化す。誤魔化しが誤魔化しに隠されてしまっていて、どっちつかずだったが、聖水が余っていたことは事実だ。
売れ残っている。それを押し付けられたのも、また事実だ。
そこで聖水をインベントリから大量に取り出してしまっていた。だってこれから、使うから。腰に巻いたベルトのポーチに一本入れて、アキラは急いで向かった。いよいよ、探索で楽しみだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
アキラはあの時通った暗い森の中を通った。
しかし今日はおかしい。
この間は、青白い火の玉が動いていたのに、今回は揺ら揺らしていない。なんだか、残念だ。
シャンベリーに辿り着くには、ここを通るしかない。
きっと奥でNightが待っているはずだ。そこでアキラは森の中を軽快な足取りで走り抜け、抜けた先にはこの間の大衆墓地が広がていた。今思ってもかなり広い。
「本当、ここの墓地って広いよね」
「そうだな。この大衆墓場は、あの城を中心に四方八方に広がっている。ここはちょうど東側だな」
「Night!」
気配がなかった。完全に消していた。
木の根元に腰を据え、マントの裾に、泥が付着していた。もしかしてずっと待っていたのかな?
「もしかしてずっと待ってたの?」
「そんなわけがないだろ。一度ログアウトして、さっき来たんだ」
「そっかー」
「なんだその顔」
Nightは顔色を変えた。不満そうにムッとしているが、アキラが顔を朗らかにしていたのは、別の理由だ。ちゃんと来てくれたことが嬉しい。
Nightはクールな子だ。もしかして、呆れられて帰ってしまうんじゃないかと、少しだけ思っていた。しかしそんなことはないことぐらい、多少なりとも察していた。それもまた事実で、アキラは自然とNightの頭を撫でていた。
「撫でるな」
「ごめんごめん。でもちゃんと来てくれたんだね」
「当たり前だ」
まさかここまではっきりと言われるなんて驚きだ。
撫でていた手を引っ込めると、アキラは真顔になる。それからNightは、
「私は気に入ったやつの約束は守る。ただそれだけでいい」
「・・・」
「なんだ。何故黙る」
「ううん。なんかちょっと、意外って言うか、想像の斜め上って言うか、優しいなーって」
「なんだ、その感想は。私を舐めているのか」
「違うよ、ただちょっと意外だったってだけで。ごめんね」
「まあいい。とにかく、城の中に入るぞ。構造は全てここにある」
Nightは頭をコンコンと指で叩いた。
こんな示し方をする人がいたなんてと、アキラは驚いたものの、Nightとアキラは揃って城の中に向かって歩き出していた。その間襲ってきたモンスターはおらず、アキラが聖水を撒いていたからだった。
ソウラのお店でお話をして時間を潰していた、アキラはいつの間にか空が暗くなっていることに気が付いた。窓の向こうの空は黄昏色を抜け、緩やかな暗がりが迫っていた。
暗闇が溶け出す。水の入ったコップの中に、醤油を零したみたいな深い深い色味がのめり込む。怖い。夜をそんな風に捉えることもあるだろうが、アキラにとっては、そんなものは既に脳裏から掻き消えていた。
「そろそろ行きますね」
「あれ? もう行くの?」
「はい。シャンベリーに行かないといけないんです。ソウラさん、今度はソウラさんの友達と会ってみたいです」
「そうね。多分、明日はいると思うけど?」
「うーん、明日はログインするかはわからないですけど、じゃあ是非」
アキラは笑顔で答えた。
ソウラさんの友達には興味がある。こんな変わったものを作る人たちだ。きっと変わった人で、面白いんだろうと、アキラは思った。アキラの友達も大概変わっていて面白いけど、NightもNightなので、何とも言えない。
「じゃあまた今度。ソウラさんから貰った聖水しっかり使ってみますね」
「ホント! あれ、かなり売れ残ってたから」
「あはは。まあ……ですね」
アキラは一瞬言葉に詰まるが、すぐに笑って誤魔化す。
ソウラは、アキラと同じようにこめかみや額から汗を流しながら、笑って誤魔化す。誤魔化しが誤魔化しに隠されてしまっていて、どっちつかずだったが、聖水が余っていたことは事実だ。
売れ残っている。それを押し付けられたのも、また事実だ。
そこで聖水をインベントリから大量に取り出してしまっていた。だってこれから、使うから。腰に巻いたベルトのポーチに一本入れて、アキラは急いで向かった。いよいよ、探索で楽しみだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
アキラはあの時通った暗い森の中を通った。
しかし今日はおかしい。
この間は、青白い火の玉が動いていたのに、今回は揺ら揺らしていない。なんだか、残念だ。
シャンベリーに辿り着くには、ここを通るしかない。
きっと奥でNightが待っているはずだ。そこでアキラは森の中を軽快な足取りで走り抜け、抜けた先にはこの間の大衆墓地が広がていた。今思ってもかなり広い。
「本当、ここの墓地って広いよね」
「そうだな。この大衆墓場は、あの城を中心に四方八方に広がっている。ここはちょうど東側だな」
「Night!」
気配がなかった。完全に消していた。
木の根元に腰を据え、マントの裾に、泥が付着していた。もしかしてずっと待っていたのかな?
「もしかしてずっと待ってたの?」
「そんなわけがないだろ。一度ログアウトして、さっき来たんだ」
「そっかー」
「なんだその顔」
Nightは顔色を変えた。不満そうにムッとしているが、アキラが顔を朗らかにしていたのは、別の理由だ。ちゃんと来てくれたことが嬉しい。
Nightはクールな子だ。もしかして、呆れられて帰ってしまうんじゃないかと、少しだけ思っていた。しかしそんなことはないことぐらい、多少なりとも察していた。それもまた事実で、アキラは自然とNightの頭を撫でていた。
「撫でるな」
「ごめんごめん。でもちゃんと来てくれたんだね」
「当たり前だ」
まさかここまではっきりと言われるなんて驚きだ。
撫でていた手を引っ込めると、アキラは真顔になる。それからNightは、
「私は気に入ったやつの約束は守る。ただそれだけでいい」
「・・・」
「なんだ。何故黙る」
「ううん。なんかちょっと、意外って言うか、想像の斜め上って言うか、優しいなーって」
「なんだ、その感想は。私を舐めているのか」
「違うよ、ただちょっと意外だったってだけで。ごめんね」
「まあいい。とにかく、城の中に入るぞ。構造は全てここにある」
Nightは頭をコンコンと指で叩いた。
こんな示し方をする人がいたなんてと、アキラは驚いたものの、Nightとアキラは揃って城の中に向かって歩き出していた。その間襲ってきたモンスターはおらず、アキラが聖水を撒いていたからだった。
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