26 / 566
◇26 カエルを狩る吸血鬼
しおりを挟む
草原の色は若葉模様。
そんな草原にひっそりと浮かぶ影。同じ緑でも、少し青くて何よりデカい。
青みがかった巨大なカエルは、アキラたちが近づいていることなど、まるで気づいている様子はなく、裕然と頬の袋を膨らませるのだ。
座っているのか、それとも立っているのか、一体どこを向いているのか、それすらよくわからない。
そんなカエルだったが、突然視界に黒いものが浮かび上がる。
グーグー!——
「失せろ」
銀色の髪が逆光を受けて、光り出す。
眩い輝きが秘められ、覚醒した瞬間、巨大な光の球となって、鉛色の剣が脳天を貫いた。
緑色のバーが赤に変わる。
そのままHPバーの表示は黒くなって消滅した。
あまりに速い。目にもとまらぬ速さだった。
いや、少し違う。なにが違うのか、それはそばで見ていたアキラだからわかった。
「今の凄いね、Night。下から接近して、急にマントを飛ばすなんて」
「カエルは目の前に来た獲物を食うからな。それが例え、食えないマントであったとしても、一瞬は隙が生まれる。そのタイミングで、剣をしたから飛ばして投げつけただけだ」
今の一瞬の間で、Nightがやったことは、ゲームの中でしかできないようなこと。
それこそ、Nightだからこそ思いついたような、規格外の方法だた。
何よりマントを飛ばして、それを目隠しにするでもなく囮に使う。それは理解できるが、剣を投げるなんて真似はしない。そんな不確定すぎる行為を使えば、それはそれで外した時のリスクがあるからだ。
しかしその賭けすら、確実に変える。
Nightがやったのは、イカサマではなく、それこそ不確定な要素を排除した完成形の動きだった。
しかしそんなNightでも突然のことまでは流石に察せられない欠点を持つ。完壁ではないんだ。そんな人間はこの世にいない。だからこそ、それを補い合うんだ。
と言うのも、
「あはは凄いね、Night。だって、剣の柄に糸を通して、下投げするなんて」
「この方が確実に仕留められる」
「確実かな、それ? まあいっか。そうだ、Night」
「如何した?」
「後ろ危ないよ」
「はぁ!?」
バクッ!——
Nightは油断していた。
後ろから襲われたことじゃない。それには気づいていた。しかし、彼女の思考の斜め上を行っていたのは、アキラがその後、すかさずジャイアントフロッグを剣で突き刺したところだった。
「大丈夫、Night!」
「ああ。だが、もう少し早く言え」
「ご、ごめん。うわぁ!」
急に剣が飛び出した。危うくアキラの方が死にかけた。一体何が起こったのか、それは上から下に突き刺した、アキラの剣と、口の中から、剣を突き上げたNight。
危うくも危うく。アキラは直撃して死んでいたところだった。だけど、ここぞの強運と、Nightの計算によって、上手く噛み合って、回避したんだ。
「くはぁ! うわぁ。汚い」
「Nightドロドロだね。なんか、ごめんね。先に言えばよかったのに、気づいていると思ってて」
するとNightの目から、「お前な」と言いたげな気配を感じた。
凶悪な眼力だ。アキラは一瞬身震いしたが、粘液と唾液でドロドロのベタベタになってNightは、顔を顰めると、そのまま剣を研ぎ、
「帰るぞ。今日の収穫はここまでだ」
「う、うん。なんかごめん」
「別にいい。気にするな」
気にするなって言われても気になる。
だって、Nightの黒いマントが唾液でベトベトでてかっていたからだ。
そんな草原にひっそりと浮かぶ影。同じ緑でも、少し青くて何よりデカい。
青みがかった巨大なカエルは、アキラたちが近づいていることなど、まるで気づいている様子はなく、裕然と頬の袋を膨らませるのだ。
座っているのか、それとも立っているのか、一体どこを向いているのか、それすらよくわからない。
そんなカエルだったが、突然視界に黒いものが浮かび上がる。
グーグー!——
「失せろ」
銀色の髪が逆光を受けて、光り出す。
眩い輝きが秘められ、覚醒した瞬間、巨大な光の球となって、鉛色の剣が脳天を貫いた。
緑色のバーが赤に変わる。
そのままHPバーの表示は黒くなって消滅した。
あまりに速い。目にもとまらぬ速さだった。
いや、少し違う。なにが違うのか、それはそばで見ていたアキラだからわかった。
「今の凄いね、Night。下から接近して、急にマントを飛ばすなんて」
「カエルは目の前に来た獲物を食うからな。それが例え、食えないマントであったとしても、一瞬は隙が生まれる。そのタイミングで、剣をしたから飛ばして投げつけただけだ」
今の一瞬の間で、Nightがやったことは、ゲームの中でしかできないようなこと。
それこそ、Nightだからこそ思いついたような、規格外の方法だた。
何よりマントを飛ばして、それを目隠しにするでもなく囮に使う。それは理解できるが、剣を投げるなんて真似はしない。そんな不確定すぎる行為を使えば、それはそれで外した時のリスクがあるからだ。
しかしその賭けすら、確実に変える。
Nightがやったのは、イカサマではなく、それこそ不確定な要素を排除した完成形の動きだった。
しかしそんなNightでも突然のことまでは流石に察せられない欠点を持つ。完壁ではないんだ。そんな人間はこの世にいない。だからこそ、それを補い合うんだ。
と言うのも、
「あはは凄いね、Night。だって、剣の柄に糸を通して、下投げするなんて」
「この方が確実に仕留められる」
「確実かな、それ? まあいっか。そうだ、Night」
「如何した?」
「後ろ危ないよ」
「はぁ!?」
バクッ!——
Nightは油断していた。
後ろから襲われたことじゃない。それには気づいていた。しかし、彼女の思考の斜め上を行っていたのは、アキラがその後、すかさずジャイアントフロッグを剣で突き刺したところだった。
「大丈夫、Night!」
「ああ。だが、もう少し早く言え」
「ご、ごめん。うわぁ!」
急に剣が飛び出した。危うくアキラの方が死にかけた。一体何が起こったのか、それは上から下に突き刺した、アキラの剣と、口の中から、剣を突き上げたNight。
危うくも危うく。アキラは直撃して死んでいたところだった。だけど、ここぞの強運と、Nightの計算によって、上手く噛み合って、回避したんだ。
「くはぁ! うわぁ。汚い」
「Nightドロドロだね。なんか、ごめんね。先に言えばよかったのに、気づいていると思ってて」
するとNightの目から、「お前な」と言いたげな気配を感じた。
凶悪な眼力だ。アキラは一瞬身震いしたが、粘液と唾液でドロドロのベタベタになってNightは、顔を顰めると、そのまま剣を研ぎ、
「帰るぞ。今日の収穫はここまでだ」
「う、うん。なんかごめん」
「別にいい。気にするな」
気にするなって言われても気になる。
だって、Nightの黒いマントが唾液でベトベトでてかっていたからだ。
21
お気に入りに追加
222
あなたにおすすめの小説
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について
水定ユウ
ファンタジー
【火曜、木曜、土曜、に投稿中!】
千年前に起こった大戦を鎮めたのは、最強と恐れられ畏怖された「魔女」を冠する魔法使いだった。
月日は流れ千年後。「永久の魔女」の二つ名を持つ最強の魔法使いトキワ・ルカはふとしたことで眠ってしまいようやく目が覚める。
気がつくとそこは魔力の濃度が下がり魔法がおとぎ話と呼ばれるまでに落ちた世界だった。
代わりに魔術が存在している中、ルカは魔術師になるためアルカード魔術学校に転入する。
けれど最強の魔女は、有り余る力を隠しながらも周囲に存在をアピールしてしまい……
最強の魔法使い「魔女」の名を冠するトキワ・ルカは、現代の魔術師たちを軽く凌駕し、さまざまな問題に現代の魔術師たちと巻き込まれていくのだった。
※こちらの作品は小説家になろうやカクヨムでも投稿しています。
インフィニティ・オンライン~ネタ職「商人」を選んだもふもふワンコは金の力(銭投げ)で無双する~
黄舞
SF
無数にあるゲームの中でもβ版の完成度、自由度の高さから瞬く間に話題を総ナメにした「インフィニティ・オンライン」。
貧乏学生だった商山人志はゲームの中だけでも大金持ちになることを夢みてネタ職「商人」を選んでしまう。
攻撃スキルはゲーム内通貨を投げつける「銭投げ」だけ。
他の戦闘職のように強力なスキルや生産職のように戦闘に役立つアイテムや武具を作るスキルも無い。
見た目はせっかくゲームだからと選んだもふもふワンコの獣人姿。
これもモンスターと間違えられやすいため、PK回避で選ぶやつは少ない!
そんな中、人志は半ばやけくそ気味にこう言い放った。
「くそっ! 完全に騙された!! もういっその事お前らがバカにした『商人』で天下取ってやんよ!! 金の力を思い知れ!!」
一度完結させて頂きましたが、勝手ながら2章を始めさせていただきました
毎日更新は難しく、最長一週間に一回の更新頻度になると思います
また、1章でも試みた、読者参加型の物語としたいと思っています
具体的にはあとがき等で都度告知を行いますので奮ってご参加いただけたらと思います
イベントの有無によらず、ゲーム内(物語内)のシステムなどにご指摘を頂けましたら、運営チームの判断により緊急メンテナンスを実施させていただくことも考えています
皆様が楽しんで頂けるゲーム作りに邁進していきますので、変わらぬご愛顧をよろしくお願いしますm(*_ _)m
吉日
運営チーム
大変申し訳ありませんが、諸事情により、キリが一応いいということでここで再度完結にさせていただきます。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!
日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」
見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。
神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。
特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。
突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。
なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。
・魔物に襲われている女の子との出会い
・勇者との出会い
・魔王との出会い
・他の転生者との出会い
・波長の合う仲間との出会い etc.......
チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。
その時クロムは何を想い、何をするのか……
このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる