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◇19 ヴァンパイア・ガール2

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 放心状態で固まった少女。
 彼女は、瞬きもせずに固まって、目が乾燥しだしていた。

「だ、大丈夫?」
「あ、ああ。すまない」
「ううん。ごめんね、変なこと言っちゃって」
「いや。その……この目が可愛いのか?」

 なに急に言いだすのかな?
 自分で設定しているのに、そんなこと言われたら、怖いよ。でもここはアキラだ。純粋かつ、自分の本音を直接ぶつけた。

「うん。可愛いし、カッコいい。実際に見たら、きっと面白いかも」
「そ、そうか?」
「うん。だって赤だよ。レッドアイなんて、ヒーローっぽいじゃんか」

 頭が悪いかもしれない。だけどアキラはそこまで、頭は悪くない。
 そこでこの発想だけど、単純に赤ってカッコいいからだった。それに青って、対っぽくてこれもカッコいい。とにかくカワイカッコよかった。

「単純でしょ?」
「そうだな。単純だ。だけど、それがいい」
「そ、そう?」

 突然の合いの手に、驚き出すアキラ。
 それこそ、自分で言っておいて何だが、意外だった。
 ここまでぴったりはまって、好印象が貰えるなんて、

「嘘でしょ? マジですか!」

 アキラは、ついつい口に出す。
 すると、少女は口元を覆う。

「ふふっ」
「笑ってるの? 酷いなー」
「いや、すまない。ただ、本当に面白いと思ったんだ。まさかこの目を見て、そんなことが言えるのが、家族以外にいるなんて」
「?」

 アキラはわからないでいた。
 しかし少女は、堅物な様子で、アキラに名前を尋ねる。

「ところで、お前は誰だ? 初心者か」
「う、うん。私、アキラ」

 アキラは普通に何の警戒もなく、名前を明かす。
 すると少女は、アキラの姿を一瞥してから口元を覆うと、

「お前、その姿は何だ。なんのクリーチャーだ?」

 そんな話をされて、言葉に詰まる。
 けれども、ほんの一瞬の話で、すぐに本当のことを言った。

「私はヒューマンだよ。意外でしょ」
「ヒューマン? ふん。本当に面白い、いや変わり者だな」
「そんなこと言わないでしょ。でも確かに変わってるかも」
「ああ変わっている。人の心の隙間に、堂々と土足で上がり込むんだからな」

 急に空気が変わる。もしかして怒ってるのかな?
 少し雰囲気が劣悪化。そう感じ取ると、少女は、

「でもそこが面白い。私の名前は、blue night。ヴァンパイアのプレイヤーだ」
「blue night? じゃあnightだね」
「night!? まあそれでもいいが、それだと夜になって……まあいいか」

 Nightは何かを諦めた。
 しかし、blueって感じなのは目だけで、何だかnightの方がカッコよかった。たじたじになるものの、理由はそれだけで、他には何もない。
 だからか、これ以上は何も言えず、nightは、

「それじゃあ私は行く」
「あ、ちょっと待って」
「なんだ?」

 アキラはnightを呼び止めた。
 すると振り返り、nightはアキラの顔をじっと見る。

「変なこと言うけどさ」
「何の話だ?」
「私と友達になってよ」

 何のためらいもない。無垢な笑顔。
 アキラはそんな表情を浮かべていた。
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