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8章

第91話 VSガーゴイル

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 俺の体が吹き飛ばされた。
 こっちは踏ん張っていたんだぞ。どれだけのパワーなんだ。
 奥歯を噛み締め、俺はフレイム=バーナーを横薙ぎで一閃する。

「おりゃぁ!」

 俺はガーゴイル目掛けてフレイム=バーナーを叩きつけた。
 鋭い刃が火花を上げ、ガーゴイルの体を切りつける。
しかしあまりに硬い皮膚のせいで、俺のフレイム=バーナーを弾き返してきた。

「嘘だろ。だったらこれでどうだ!」

 俺はフレイム=バーナーのレバーをガチャンとして、火力を上げた。
 剣身ブレードが赤く灼け始め、炎を燃やしていた。
 多少はダメージになるだろうと思い剣身を何度も同じところに叩きつけると、ガーゴイルは悲鳴を上げて翼を広げた。

「急に離れるのか!」

 左腕に装備した黒飯綱クロイズナのトリガーを引き、ワイヤーを飛ばした。
 ガーゴイルの翼を黒いワイヤーで束ねて飛べなくする。

「これなら飛べないな。おっ、パワー強いな」

 しかし無理やり引き千切ろうとして、俺の体も吹き飛びそうになる。
 けれど俺だって負けたりしない。
 わざと引き寄せられるために足腰の力を弱めると、俺の体がガーゴイルに引き寄せられた。計算通りだ。

「カイ君、危ない!」
「危なくない。まずは片腕を貰うぞ」

 俺は地面が足に着いていなかったが、フレイム=バーナーを最大火力にした。
 不安定な体勢から回転切りを食らわせえると、ガーゴイルの左腕を奪うことに成功する。

「グギャァァァァァァァァァァァァァァァ!」

 大絶叫が上がり、俺の聴覚を奪いそうになった。
 とは言え、俺は耳栓をしているので効かずに、もう片腕も貰おうとさらに縦回転を始めた。
 しかし今度は流石に弾かれてしまい、俺は左腕を奪うことで精一杯だった。

「大丈夫カイ君!?」
「問題ない。だが片腕だけか……芳しくないな」
「十分だと思う。だけど怒らせたみたい」
「そうだろうな。とは言え再生はしないらしい」

 俺が左腕を奪うと失った左腕は再生していなかった。
 肘から下が無くなっていて、ガーゴイルは不便そうだ。

 とは言え、これで攻撃手段は一つ削ぐことに成功。
 ここからは攻め立てるだけだ。
 注意するにしても翼を使って逃げられないようにするだけで、俺はエクレアに指示する。

「おいエクレア。ガーゴイルの翼を遠隔射撃で奪え」
「えっ? そんなことしていいの」
「当たり前だ。相手は魔像から復活したばかりだぞ」

 とは言え、まさか本物が魔像になっているとは思わなかった。
 如何やらここに居た奴らは偽物ではなく、本物を魔像にしていたとはな。
 崇めて居た奴が怖い。

「さっさとやれ」
「もう、わかったよ。《黄昏の陽射しサンライト・ライズ》! 発射」

 エクレアが《黄昏の陽射しサンライト・ライズ》で攻撃を開始した。
 光の球体が幾つも展開し、高出力のレーザーを撃ち出した。

 しかしガーゴイルもヤバいと思ってエクレアの攻撃から逃れようとする。
 けれどエクレアを舐めてはいけない。
 コイツの攻撃は——

「私の魔法は、“曲がるよ”」

 ビームが直角に曲がった。
 ガーゴイルの翼を狙っていたのだが、着弾したのはガーゴイルの左脇腹だった。

 キュンキュンキューン! とけたたましい音を立て、細かくしたビームが次々に着弾し、致命打にはならなかったが、それでも黒い煙を出しながら、ガーゴイルは悲鳴を上げた。

「ああ、惜しい。ごめんね、翼には当たらなかったよ」
「上出来だ」

 俺はエクレアを褒めた。
 エクレアは指を鳴らして悔しがっていたが、それでも最高のパフォーマンスを生み出していた。

「うーん。でも倒れなかったね」
「そうだな。だがこれでいい。これだけアイツを怒らせたんだ。そろそろ伏兵が動くぞ」

 俺はにやりと笑みを浮かべた。
 エクレアはチラッと視線を俺の隣に移すと、納得したのか笑みを零す。

「なるほどね。確かに伏兵かも」
「ああ。俺たちは十分な仕事した。残りは……」

 ガーゴイルは動かない俺達を狙って突撃してきた。
 遠距離攻撃がないのか、直情的すぎる。
 しかし終わりだ。

 バキューン!

 ガーゴイルはうつ伏せで倒れた。
 後頭部を撃ち抜かれて動かなくなる。

「やった」
「やっぱりショコラちゃんだね。いつの間に後ろに潜んでたの?」
「エクレアが戦っている間」

 エクレアが戦っている間にショコラは気配を消して背後を取っていた。
 フードを目深に被り表情を隠す。
 さらには気配を完全に殺して、脈拍まで蒼白になる。

「お前大丈夫か?」
「問題ない。心臓の鼓動を少し遅くしただけ」
「大丈夫じゃないでしょ! もう、無茶しないでよ」

 ショコラに対してエクレアは顔をつねった。
 痛そうにしているが、ショコラは何も言わない。
 これもエクレアの愛情表現だと理解しているからだ。

「でもこれでよかったの?」
「何がだ」
「こんな倒し方してもよかったの?」
「もちろんだ。勝敗を決した行為に終わってから文句は付けられない」

 俺はショコラの罪悪感に払拭の兆しを与えた。
 俺の口振りは最低だろうが、相手はガーゴイルのような悪魔紛いのものなので今回ばかりは良しとして貰おう。
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