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3章
第15話 トマトを捕まえろ
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「ちょっと待ってよ! お願い逃げないでっ!」
俺とエクレアは走っていた。
荒れ草が伸びたサバンナのような大地を黙々と走っている。
エクレアは聖剣を太陽にかざしながら一生懸命走り抜け、俺はその後ろを無言で追いかけていた。
正直に言いたい。これは何だ。
「おいエクレア。一体これは何の依頼なんだ」
「えっ!?」
「俺は聞いてないぞ。確かトマトの収穫を手伝うんじゃなかったのか?」
「そうだよ。でもちょっと違うんだ」
確かに俺の言い方も語弊があった。
確か俺がエクレアから聞いていたのは、トマトを“収穫”するのでなく“捕獲”するだった。
言い間違いだけで、意味が全く違う。
俺はエクレアが必死に追いかける小さな生き物を睨んだ。
キュゥキュゥ!
「すげえ可哀そうだな」
「えっ? でも美味しいよ」
「確かに旨いは旨いが……はぁ、まあいい。とにかくとっと捕まえるぞ」
「そうだね。よーし! 私の黄昏で……」
それはマズい。正直どんな効果があるのかいまだによくわかっていないが、俺も活躍しておく。
何もしないでいるのは周りからも変な目で見られるからな。
そこで俺は異空間を展開し、左手を突っ込んだ。
すると中から引っ張り出したのは俺の作った武器の一つだ。
「せーのっ!」
「黒飯綱!」
エクレアが黄昏の陽射しを使おうとするタイムングを見計らい、瞬時に俺のもう一つの魔法武器庫の空間から昔作った武器を取り出した。
それは黒い鞭のようだったが、何処となくイタチのようなデザインをしていて可愛い。
尻尾の部分が硬質化してしなるように伸び、エクレアが捕まえようとしていたものを引き寄せる。
キュキュゥ!
「おっと、暴れるな」
「あ、あれれ? 何だか美味しいところ持って行かれちゃったのかな?」
エクレアは腑に落ちないらしく、頬を掻いていた。
けれどそれで不満を持つことはなく、一緒になって喜んでくれていた。
冒険者の中には手柄欲しさの輩もいる。それを加味すれば、エクレアはかなり純粋だ。
「にしてもこの背中の硬質化した皮膚がトマト何て驚きだよね」
「そうだな。トマトマジロ。なかなか手こずらせられたな」
俺が捕獲したのはトマトマジロと呼ばれるアルマジロだ。
背中の硬質化した部分がトマトになっていて、今回の依頼はこのトマト部分の採取になる。
にしても生きたままの生き物から必要素材をはぎ取るのは、グッとくるものがあるのは俺だけだろうか。
「よし、硬質化した部分の一部を貰うぞ」
「そんなこといてこの子平気なのかな?」
「問題はない。硬質化した部分は脂肪だ。すぐに再生する」
「そっか。じゃあ行ってみよう!」
都合のいいエクレアは俺にトマトマジロを預けたままジッと見つめられた。
俺は眉根を寄せて気恥ずかしかったが、ベルトからナイフを取り出しスパッと切った。
あまりの速さと正確さに目を奪われるエクレアは俺の拍手を送る。まるで子供扱いだ。
「凄い凄い! カイ君もなかなかやるね」
「子供扱いするな。俺は16だぞ」
「私も16だよ。だからいいのいいの。はい、今回の依頼はこれでお終い。……何だけど」
エクレアが俺の武器を見て黙り込んだ。
左腕には黒飯綱が装備されている。
確かに珍しいだろう。何故なら俺の武器には名前が彫られている。普通こんな手間を取らないのだが、勝手に彫ってしまうので仕方がない。
そう思ったのだが、どうやら違うらしい。
「この武器凄いね。何処で売っているの?」
「売ってる? これは俺が作った」
「そうなんだ! 凄い、お店でも開けるよ」
「悪いが扱いが難しいんだ。売り物にはならない。せいぜいなるとしたら……この程度だな」
俺は投げナイフをベルトから何本か取り出して、近くに生えていた木の幹に放った。
すると全部命中し、エクレアは口を開けっ放しにする。
そこまで大したことはしていないのだが、何故か感激されてしまった。
俺とエクレアは走っていた。
荒れ草が伸びたサバンナのような大地を黙々と走っている。
エクレアは聖剣を太陽にかざしながら一生懸命走り抜け、俺はその後ろを無言で追いかけていた。
正直に言いたい。これは何だ。
「おいエクレア。一体これは何の依頼なんだ」
「えっ!?」
「俺は聞いてないぞ。確かトマトの収穫を手伝うんじゃなかったのか?」
「そうだよ。でもちょっと違うんだ」
確かに俺の言い方も語弊があった。
確か俺がエクレアから聞いていたのは、トマトを“収穫”するのでなく“捕獲”するだった。
言い間違いだけで、意味が全く違う。
俺はエクレアが必死に追いかける小さな生き物を睨んだ。
キュゥキュゥ!
「すげえ可哀そうだな」
「えっ? でも美味しいよ」
「確かに旨いは旨いが……はぁ、まあいい。とにかくとっと捕まえるぞ」
「そうだね。よーし! 私の黄昏で……」
それはマズい。正直どんな効果があるのかいまだによくわかっていないが、俺も活躍しておく。
何もしないでいるのは周りからも変な目で見られるからな。
そこで俺は異空間を展開し、左手を突っ込んだ。
すると中から引っ張り出したのは俺の作った武器の一つだ。
「せーのっ!」
「黒飯綱!」
エクレアが黄昏の陽射しを使おうとするタイムングを見計らい、瞬時に俺のもう一つの魔法武器庫の空間から昔作った武器を取り出した。
それは黒い鞭のようだったが、何処となくイタチのようなデザインをしていて可愛い。
尻尾の部分が硬質化してしなるように伸び、エクレアが捕まえようとしていたものを引き寄せる。
キュキュゥ!
「おっと、暴れるな」
「あ、あれれ? 何だか美味しいところ持って行かれちゃったのかな?」
エクレアは腑に落ちないらしく、頬を掻いていた。
けれどそれで不満を持つことはなく、一緒になって喜んでくれていた。
冒険者の中には手柄欲しさの輩もいる。それを加味すれば、エクレアはかなり純粋だ。
「にしてもこの背中の硬質化した皮膚がトマト何て驚きだよね」
「そうだな。トマトマジロ。なかなか手こずらせられたな」
俺が捕獲したのはトマトマジロと呼ばれるアルマジロだ。
背中の硬質化した部分がトマトになっていて、今回の依頼はこのトマト部分の採取になる。
にしても生きたままの生き物から必要素材をはぎ取るのは、グッとくるものがあるのは俺だけだろうか。
「よし、硬質化した部分の一部を貰うぞ」
「そんなこといてこの子平気なのかな?」
「問題はない。硬質化した部分は脂肪だ。すぐに再生する」
「そっか。じゃあ行ってみよう!」
都合のいいエクレアは俺にトマトマジロを預けたままジッと見つめられた。
俺は眉根を寄せて気恥ずかしかったが、ベルトからナイフを取り出しスパッと切った。
あまりの速さと正確さに目を奪われるエクレアは俺の拍手を送る。まるで子供扱いだ。
「凄い凄い! カイ君もなかなかやるね」
「子供扱いするな。俺は16だぞ」
「私も16だよ。だからいいのいいの。はい、今回の依頼はこれでお終い。……何だけど」
エクレアが俺の武器を見て黙り込んだ。
左腕には黒飯綱が装備されている。
確かに珍しいだろう。何故なら俺の武器には名前が彫られている。普通こんな手間を取らないのだが、勝手に彫ってしまうので仕方がない。
そう思ったのだが、どうやら違うらしい。
「この武器凄いね。何処で売っているの?」
「売ってる? これは俺が作った」
「そうなんだ! 凄い、お店でも開けるよ」
「悪いが扱いが難しいんだ。売り物にはならない。せいぜいなるとしたら……この程度だな」
俺は投げナイフをベルトから何本か取り出して、近くに生えていた木の幹に放った。
すると全部命中し、エクレアは口を開けっ放しにする。
そこまで大したことはしていないのだが、何故か感激されてしまった。
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