異世界で最強になった俺が偽魔王になってみた。~魔王キャラVTuberの俺が配信していたら、異世界転移してしまい、マジの魔王扱いされたんだが?

水定ユウ

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ミュシェルの決めたこと

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 なんでだろう、なんでなのかな?
 ミュシェルは俺の隣に居た。
 しかもまるで自分の家の様にくつろいでいて、なんかしっくり来ない。

「ミュシェル、なんでお前が……」
「カガヤキさんも飲みませんか?」
「ああ、じゃあ飲もうか?」
「はい。すぐに淹れますね」

 ミュシェルは何処から取り出したのか。ティーカップをもう一つ取り出す。
 ティーポットを傾け、温かな紅茶を注ぐ。
 湯気が立つと、甘みのある香りが漂った。

「どうぞ、カガヤキさん」
「ああ、ありがとう。で、なんでここにいるんだ?」

 俺はミュシェル本人に再度訊ねた。
 如何してわざわざ魔王城に戻って来たのか。
 エスメールの領主の娘が、よく分からん転移者の住む前魔王城にやって来たのか。
 何もかもが分からず、俺はミュシェル本人に訊ねるしかなかった。

「カガヤキさん、エスメールの復興は順調に進んでいます」
「そうか。で、なんでここにいるんだ?」
「それでですね。私も尽力したんですよ」
「そうか。凄いな」
「もっと褒めてはいただけないんですね」
「俺が褒めたって、一ミリも足しにならないだろ。痛っ!?」

 何故かミュシェルにデコピンされた。
 額に軽いけれど痛みが走ると、咄嗟に目を瞑る。
 瞬きをして涙を薄っすら流すと、ミュシェルが不服そうな顔をする。

「なんでデコピンされるんだよ」
「カガヤキさんはもう少し女性への扱いを気にした方がいいと思いますよ」
「気にはしている。はぁ、それでミュシェル。どうしてここに来たの?」

 俺は完全に素のモードに入った。
 カガヤキ・トライスティルを一度スイッチOFFにして、天河晃陽に戻る。
 丁寧な口調を心掛けると、気持ちが悪がられると思ったが、そんなギャップにも付いて来てくれた。

「それはですね、カガヤキさんにお礼が言いたかったんです」
「お礼?」
「はい。改めまして、エスメールを私達親子を救っていただきありがとうございました。今こうして生きていられるのは、全てカガヤキさんのおかげです」

 ミュシェルは丁寧に礼をした。
 あの時は適当にあしらってしまったが、こうして丁寧にお辞儀をされると恥ずかしい。
 なんだかこっちが悪いみたいに感じると、まずは顔を上げてもらう。

「顔を上げて。お礼なんてもういいから」
「いいえ、お礼はさせてください。そのために私がここに来たんです」
「どういうこと?」

 全く点と点が繋がらない。
 ポカンとしてしまう俺に、ミュシェルは少し照れている。
 頬が赤らみ、全身から湯気が立ちそうになると、覚悟を決めたのか薄い唇を噛む。

「カガヤキさん、エスメールは徐々に復興を遂げようとしています。その速度は尋常ではありません。これも、カガヤキさんの活躍のおかげです」
「俺だけじゃない。全員の力だ」
「謙虚ですね、カガヤキさんは。ですが、それでも亡くなられた方々は帰っては来ません」
「そのために今生きる人達が忘れずに冥福を祈るんだ。俺のいた世界でも、昔勝ち目のない戦争に投じ、たくさんの罪の無い人達が死んだ。その想いを忘れないように、今でも特別な日には黙禱を捧げ冥福を祈るんだよ」

 何処の世界、何処の時代、何処の国でも生き死にの連鎖は変らない。
 罪の無い人達の命により、歴史が作られる。
 それは何の結果でもない。忘れてはいけない汚点でしかない。

(だから俺は嫌なんだよ)

 当たり前のことだが、誰だって死にたくは無いし、死んでほしくはない。
 俺は自分の口から飛び出した適当な言葉が嫌いになる。
 ミュシェルにも感情が伝わったのか、しんみりとした空気が包むと、勇気を出して口を走らせる。

「それは当たり前のことです。だから私は強くなりたいんです」
「そうか。頑張れ」
「ですからカガヤキさん、私を傍に置いてください」
「ほぉ……バカか?」

 あまりにも話が急展開を迎えた。
 突飛にも程がある会話の脈絡の無さで、言葉を失ってしまう。
 もちろんミュシェルは本気らしく、強い眼光で俺を見つめた。

「私は本気ですよ。私は、カガヤキさんと一緒にいたいです」
「なんだ、その愛の告白」
「告白!? えっと、その、えっと……私は、確かに強くなりたいです。でもそのためには強い人と一緒に……そのえっと、その……えーっと」
「テンパるな!」

 自分で言っておいてテンパるな。話が余計にややこしくなる。
 俺は眉根を寄せ、額に皺を何本も作る。
 するとミュシェルはテンパったまま、腕を振り上げた。

「身の回りのお世話でもなんでもします。だからカガヤキさん、私をカガヤキさんの傍に居させてください。お願いします!」

 ミュシェルは自分でも訳が分かっていない。
 テンパったまま俺に告白みたいなことを言うと、流石に返しに困ってしまった。
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