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後は任せたぞ
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「改めて感謝を伝えさせて欲しい。君のおかげで、私達はこの街は救われた。本当に、なんと感謝を伝えればいいのか、分からないくらいにね」
「はぁ?」
俺はミュシェルの父親に感謝された。
改めて感謝されて思うのは、別に気持ち良くない。
なにせ、被害が出ている。被害を未然に食い止めたのならまだしも、被害がある程度で出てから感謝されても、俺的には嬉しくも何ともない。むしろ助けられなかったことへの後悔が強まった。
「感謝なんて要らない。それより、貴方がミュシェルの父親の?」
「はい。メイエル・エスメール伯と申します」
「エスメール伯? ってことは伯爵……マジか」
「どうして私を見るんですか?」
俺は貴族と言う爵位に気を取られた。
ついついミュシェルの顔色を窺ってしまうと、真顔になられてしまう。
「(コホン)まあいい。ところで、後は任せてもいいか?」
「えっ、任せるというのは?」
「そのままの意味だ。これ以上俺ができることは無い」
俺みたいな部外者がこれ以上深入りするのはよくない。
すでに大分怪しいラインには立っているんだが、逃げるなら今がベスト。
これ以上の領域は俺自身を殺すと直感したので、エスメール親子に全てを丸投げにする。
「ここまで暴れておいて悪いが、本当に俺ができることはもう無い。後はエスメール伯への信頼で賄ってくれ」
「そんな、ここまで丸投げなんて」
「卑怯とでもなんとでも行ってくれ。俺は所詮、コスプレ魔王だ」
「コスプレ魔王? 新しい言葉だね」
「ああ、メチャクチャにハズいんだけどな!」
もう如何だっていい。エスメール伯にも茶化された。
俺は頭を掻き毟ると、全身が熱くて仕方が無い。
身震いして恥ずかしさを抑えると、穴の開いた壁に近付く。
「それじゃあ、後は任せた」
「あっ、待ってくださいカガヤキさん!」
「そうだよ、カガヤキ君。まだ私達はなにもお礼を」
「お礼なんて要らない。それとミュシェル」
「は、はい。なんでしょうか?」
俺はいち早く退散しようとする。
けれどエスメール親子に引き止められそうになるので、先に穴の縁に立った。
少しでも重心を後ろに傾ければ落っこちる。けれど俺は最後に一言だけ言っておきたいので、ミュシェルに伝えることにした。
「これ以上俺にかかわっても面白くないからな。街の復興とか、本物の魔王討伐とか頑張れよ」
「えっ、それはどういう……」
「じゃあな! 鷲座の翼」
俺は穴から真っ逆さまに落ちた。
ああ、ヤバい。ハチャメチャに怖い。
全身から血の気が引き、俺は死を悟ったが、背中から生えた翼で何とか体勢を立て直す。
「カガヤキさん!」
「彼は、本当に何者だったんだ。突然現れたかと思えば、突然帰って行く。本当の勇者とは彼の様な人のことを言うんだろうか」
「はい。カガヤキさんは、魔王で勇者です」
なんか言ってるな、と俺は思った。
けれど耳を澄ましても風を切る音で掻き消される。
何も聞こえず俺は首を捻ってしまうが、とりあえず不安定になりながらも魔王城へと帰った。
「んで、街の様子は……ああ、やっぱりか」
眼下を見下ろせば、混乱に浸ったエルメールが広がっている。
地獄絵図ではなくなったものの、所々に被害が残っている。
この跡を消すのは相当時間が掛かるだろう。俺は他人事のように思うと、最悪な一日を無事ではなく済ました。
「はぁ?」
俺はミュシェルの父親に感謝された。
改めて感謝されて思うのは、別に気持ち良くない。
なにせ、被害が出ている。被害を未然に食い止めたのならまだしも、被害がある程度で出てから感謝されても、俺的には嬉しくも何ともない。むしろ助けられなかったことへの後悔が強まった。
「感謝なんて要らない。それより、貴方がミュシェルの父親の?」
「はい。メイエル・エスメール伯と申します」
「エスメール伯? ってことは伯爵……マジか」
「どうして私を見るんですか?」
俺は貴族と言う爵位に気を取られた。
ついついミュシェルの顔色を窺ってしまうと、真顔になられてしまう。
「(コホン)まあいい。ところで、後は任せてもいいか?」
「えっ、任せるというのは?」
「そのままの意味だ。これ以上俺ができることは無い」
俺みたいな部外者がこれ以上深入りするのはよくない。
すでに大分怪しいラインには立っているんだが、逃げるなら今がベスト。
これ以上の領域は俺自身を殺すと直感したので、エスメール親子に全てを丸投げにする。
「ここまで暴れておいて悪いが、本当に俺ができることはもう無い。後はエスメール伯への信頼で賄ってくれ」
「そんな、ここまで丸投げなんて」
「卑怯とでもなんとでも行ってくれ。俺は所詮、コスプレ魔王だ」
「コスプレ魔王? 新しい言葉だね」
「ああ、メチャクチャにハズいんだけどな!」
もう如何だっていい。エスメール伯にも茶化された。
俺は頭を掻き毟ると、全身が熱くて仕方が無い。
身震いして恥ずかしさを抑えると、穴の開いた壁に近付く。
「それじゃあ、後は任せた」
「あっ、待ってくださいカガヤキさん!」
「そうだよ、カガヤキ君。まだ私達はなにもお礼を」
「お礼なんて要らない。それとミュシェル」
「は、はい。なんでしょうか?」
俺はいち早く退散しようとする。
けれどエスメール親子に引き止められそうになるので、先に穴の縁に立った。
少しでも重心を後ろに傾ければ落っこちる。けれど俺は最後に一言だけ言っておきたいので、ミュシェルに伝えることにした。
「これ以上俺にかかわっても面白くないからな。街の復興とか、本物の魔王討伐とか頑張れよ」
「えっ、それはどういう……」
「じゃあな! 鷲座の翼」
俺は穴から真っ逆さまに落ちた。
ああ、ヤバい。ハチャメチャに怖い。
全身から血の気が引き、俺は死を悟ったが、背中から生えた翼で何とか体勢を立て直す。
「カガヤキさん!」
「彼は、本当に何者だったんだ。突然現れたかと思えば、突然帰って行く。本当の勇者とは彼の様な人のことを言うんだろうか」
「はい。カガヤキさんは、魔王で勇者です」
なんか言ってるな、と俺は思った。
けれど耳を澄ましても風を切る音で掻き消される。
何も聞こえず俺は首を捻ってしまうが、とりあえず不安定になりながらも魔王城へと帰った。
「んで、街の様子は……ああ、やっぱりか」
眼下を見下ろせば、混乱に浸ったエルメールが広がっている。
地獄絵図ではなくなったものの、所々に被害が残っている。
この跡を消すのは相当時間が掛かるだろう。俺は他人事のように思うと、最悪な一日を無事ではなく済ました。
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