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嘲笑う笑み
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「もう止めてくれ、スーレット君!」
ミュシェルの父親が口を開いた。
しかも何かと思えば、これだけのことをしたスーレットに懇願する。
「お父さん!」
「今更なに言ってるんだ」
俺もミュシェルも、あまりにもお粗末な態度を取る父親に呆れる。
しかしミュシェルの父親は本気だ。
芯のある目でスーレットを見つめると、口を動かす。
「これ以上、この街に住む人達を苦しめないでほしい」
「苦しめる? 何故だ、エスメール伯爵」
「それは私がこの街の領主だからだよ。君だって、本心でこの街の人のことを殺そうという気がないのだろう」
「ほぉ」
あまりにもバカ気ている。
スーレット相手に、そんな言葉が届く訳もない。
にもかかわらず真剣そのもので口走ると、スーレッドは嘲笑う。
「はっ、ではなにをしてくれる」
「そ、それは……私がこの街の領主を退くことを約束するよ」
「お父さん! なにを言っているんですか」
ミュシェルは血迷った父親に抗議する。
しかしミュシェルの父親は本気だ。
エスメール伯爵が何かは知らないが、恐らく俺の予想は当たっていた。この街の領主を辞めること、それがこの街を救うことに繋がると本気で信じている。
「ミュシェル、分かってほしい。私にはこのくらいのことしかできないんだよ」
「お父さん、それは違います」
「違わないよ。結局私は、自分の部下の過ちすら、気が付くことができなかった」
「そんなことないです。お父さんはこの街のために、死力を尽くしてきたじゃないですか。だから、自分のことを蔑まないでください」
ミュシェルは必死だ。必死になって父親の肩を持つ。
もちろん俺だってそう思う。
しかし失意に落ちた父親にその言葉が届くとは思えない。暗闇一直線に急降下していく中、スーレットは口を開けた。禍々しい開口だ。
「ははは、ははははは、なにをバカなことを言う父親だ」
「そうだよ。私はバカな父親だ」
「お父さん!」
「そうだな、バカな父親だ。だが、そんな言葉で私が動くと思うなよ」
スーレットは高笑いを浮かべる。
あまりにも人間を舐め腐った態度に俺は腹が立つ。だが、この場合はそれも諌める。
スーレットの減らず口が動くと、俺達への興味を失う。
「私にとって、人間はただの贄。行くは世界中から忌々しい人間達を排除するので関係ないのですよ」
やっぱりそう来たか。
スーレットは最初からゲスいとは思ってはいたが、ここまでとは思わなかった。
しかしスーレットからしてみれば人間なんてただの贄。いや、それ以下の体たらくなのだろう。
「私達に操られた人間達が死ねば私の力になる。私が強者になれば、この世は私のものとなる。つまり私の主人はこの世界を統べる王となる。ああ、素晴らしい。もっと、もっとだ。もっと狂え、狂え、狂え!」
スーレットが悪徳教祖のように見えた。
けれど悠長なことは言えない。
時計塔の外から聞こえるのは、街の人達の断末魔だ。
「「「スーレット様~、うひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
また一人、また一人と人間が死んでいく。
あまりにも死が身近な世界に言葉を失う。
本当に如何すればいいのか、何か打開策はないのか。
何処かにある、何処かに埋まっている筈だ。
「カガヤキさん、このままだと本当に」
「終わるな。この街もなにもかも」
そんなことになれば、せっかくの異世界転移が水の泡だ。
戻れるのならそれでいいのだが、流石に都合よくは行かない。
ならば如何すればいい。自分の身も暗示考えると、ふとヘッドホンがズレた。
「チッ、こんな時に……ん?」
バイザーがONになると、俺は瞬きをする。
そう言えば、スーレットは言っていた。
私に失望しない限り。つまり、失望すればいいんだ。
「失望される。つまり、スーレットの真実を暴くこと」
「カガヤキさん?」
「ミュシェル、打開策はすぐ近くにあったぞ。今から試す、協力頼めるか?」
「勿論です。このままでは本当にスーレットさんの暴挙を止められなくなってしまいます」
もはや手遅れだろうが、これ以上の被害を減らすことはできる。
それなら俺もできることをしよう。
コクリと相槌を打ち合うと、早速俺はダイヤルを回す。今回は、俺の友人の力を借りることにした。
ミュシェルの父親が口を開いた。
しかも何かと思えば、これだけのことをしたスーレットに懇願する。
「お父さん!」
「今更なに言ってるんだ」
俺もミュシェルも、あまりにもお粗末な態度を取る父親に呆れる。
しかしミュシェルの父親は本気だ。
芯のある目でスーレットを見つめると、口を動かす。
「これ以上、この街に住む人達を苦しめないでほしい」
「苦しめる? 何故だ、エスメール伯爵」
「それは私がこの街の領主だからだよ。君だって、本心でこの街の人のことを殺そうという気がないのだろう」
「ほぉ」
あまりにもバカ気ている。
スーレット相手に、そんな言葉が届く訳もない。
にもかかわらず真剣そのもので口走ると、スーレッドは嘲笑う。
「はっ、ではなにをしてくれる」
「そ、それは……私がこの街の領主を退くことを約束するよ」
「お父さん! なにを言っているんですか」
ミュシェルは血迷った父親に抗議する。
しかしミュシェルの父親は本気だ。
エスメール伯爵が何かは知らないが、恐らく俺の予想は当たっていた。この街の領主を辞めること、それがこの街を救うことに繋がると本気で信じている。
「ミュシェル、分かってほしい。私にはこのくらいのことしかできないんだよ」
「お父さん、それは違います」
「違わないよ。結局私は、自分の部下の過ちすら、気が付くことができなかった」
「そんなことないです。お父さんはこの街のために、死力を尽くしてきたじゃないですか。だから、自分のことを蔑まないでください」
ミュシェルは必死だ。必死になって父親の肩を持つ。
もちろん俺だってそう思う。
しかし失意に落ちた父親にその言葉が届くとは思えない。暗闇一直線に急降下していく中、スーレットは口を開けた。禍々しい開口だ。
「ははは、ははははは、なにをバカなことを言う父親だ」
「そうだよ。私はバカな父親だ」
「お父さん!」
「そうだな、バカな父親だ。だが、そんな言葉で私が動くと思うなよ」
スーレットは高笑いを浮かべる。
あまりにも人間を舐め腐った態度に俺は腹が立つ。だが、この場合はそれも諌める。
スーレットの減らず口が動くと、俺達への興味を失う。
「私にとって、人間はただの贄。行くは世界中から忌々しい人間達を排除するので関係ないのですよ」
やっぱりそう来たか。
スーレットは最初からゲスいとは思ってはいたが、ここまでとは思わなかった。
しかしスーレットからしてみれば人間なんてただの贄。いや、それ以下の体たらくなのだろう。
「私達に操られた人間達が死ねば私の力になる。私が強者になれば、この世は私のものとなる。つまり私の主人はこの世界を統べる王となる。ああ、素晴らしい。もっと、もっとだ。もっと狂え、狂え、狂え!」
スーレットが悪徳教祖のように見えた。
けれど悠長なことは言えない。
時計塔の外から聞こえるのは、街の人達の断末魔だ。
「「「スーレット様~、うひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
また一人、また一人と人間が死んでいく。
あまりにも死が身近な世界に言葉を失う。
本当に如何すればいいのか、何か打開策はないのか。
何処かにある、何処かに埋まっている筈だ。
「カガヤキさん、このままだと本当に」
「終わるな。この街もなにもかも」
そんなことになれば、せっかくの異世界転移が水の泡だ。
戻れるのならそれでいいのだが、流石に都合よくは行かない。
ならば如何すればいい。自分の身も暗示考えると、ふとヘッドホンがズレた。
「チッ、こんな時に……ん?」
バイザーがONになると、俺は瞬きをする。
そう言えば、スーレットは言っていた。
私に失望しない限り。つまり、失望すればいいんだ。
「失望される。つまり、スーレットの真実を暴くこと」
「カガヤキさん?」
「ミュシェル、打開策はすぐ近くにあったぞ。今から試す、協力頼めるか?」
「勿論です。このままでは本当にスーレットさんの暴挙を止められなくなってしまいます」
もはや手遅れだろうが、これ以上の被害を減らすことはできる。
それなら俺もできることをしよう。
コクリと相槌を打ち合うと、早速俺はダイヤルを回す。今回は、俺の友人の力を借りることにした。
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