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第15.5話 赤い瞳に狂わされ
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「ふぅー、少し落ち着きました」
私はエールを飲み干し、胸を撫で下ろします。
つっかえていた心残りの棘が取れてくれた気分で、私はホッとしました。
「さてと、そろそろ遅いのでお会計を……およ?」
私は席を立とうとしました。
しかし突然酒場の扉が開き、誰か入って来ました。疲れているのでしょうか? 多少乱暴ですが、ここではしょっちゅうあることです。
「あっ、次が来たワン!」
「いらっしゃいませニャ。適当に空いてる席に座るニャ」
リシュワンさんとアーニャさんはいつものことのように案内をしました。
空いている席はほとんど無いのですが、大抵これで通用します。
もちろん、初めての方は分からないので、その場合はラパンさんが対応しますが、今回はラパンさんも忙しそうなので、常連さんが代わりに教えてくれそうです。
「兄ちゃん兄ちゃん、空いてる席はな、適当に空いたテーブルとチェアを見つけて座るんだ。分かるか?」
「スー」
「ほら、例えばあそこな。あそこの席空いてるから、座って待っとけ。そしたら、犬の子と猫の子のどっちかが行くから」
「「ここはそういうお店じゃないワン!」ニャ!」
確かにそういうお店に聞こえてもしまいそうです。……そういうお店ってなんでしょうか?
私は首を捻ってしまいますが、如何にもそれでは伝わらないらしく、男性は困っています。
ここはラパンさんに話を聞いて貰ったので、私が案内をしましょう。そう思い側に寄ります。
「私が案内しましょうか」
私は手を上げて声を掛けました。
すると店内のお客さんが、みんな私に注目しました。
「えっ、ミュシェル!?」
「嘘っ、ミュシェルさん!」
「ミュシェルが飲みに来るなんて、珍しいな。どういう風の吹き回しだ?」
私が酒場に足を運ぶのは珍しいようです。
確かに頻繁に顔は出しません。
ですが今日は特別です。私はにこやかな笑みを浮かべます。
「少々事情がありまして。それより、お客様。向こうの席に……あれ?」
「スーレット様」
「スーレット……はっ!?」
赤い瞳が私のことを狙っていた。
次の瞬間、腕を伸ばして私の首筋を掴もうとするので、つい突き飛ばしてしまいます。
「キャッ!」
私は男性を突き出してしまいました。
体がよろけ、フラフラとして転んでしまいます。
「ミュシェル、急になにしてるんだよ!」
「そうだぜ、客だぞ相手は?」
「ちょっとちょっと、これヤバいんじゃない? 大丈夫ですか、立てますか?」
私が付き飛ばした男性に、周りの人達が心配して声を掛けます。
流石にやり過ぎてしまったでしょうか?
私もただ目の色が真っ赤なだけで既視感を感じてしまったことを恥じ、突き飛ばしてしまった男性に謝ります。
「すみません、突然だったのでつい」
「スーレット様」
「スーレット? もしかして、スーレットさんのお知り合い……はっ!」
スーレットさんの知り合いの可能性は充分有ります。
私が首を捻りつつ手を差し出すと、男性は素早く起き上がり、私の手を掴むどころか、首を絞めようと襲ってきました。
「スーレット様~!」
「主よ、我が祈りを捧げ、悪しき者を討ち払え—聖衝撃!」
私は咄嗟に魔法を発動し、男性から身を守りました。
男性は私の放った衝撃波の魔法を受け、後ろに大きく吹き飛びます。
扉を突き破り、酒場の外に弾き出されると、道の真ん中に倒れてしまいました。
よっぽどのことが無い限り、命に別状はないでしょうが、それでも魔法によって体に負荷が掛かっている筈です。
「お、おい、ミュシェル!?」
「皆さん気を付けてください。あの人は、少し様子がおかしいです」
私は治療したいのですが、流石にそうもいきません。
警戒し、店の中に残ったお客を守る様に言葉を選ぶと、空気が一変しました。
「スーレット様~」
「ま、まだ起き上がるんですか!?」
背中を強く打ちつけた筈なのに、男性はすぐに起き上がってしまいます。
まるでアンデット種のようで、私は不気味に思いますが、酒場の中にいれるわけにはいきません。私は無銭飲食にならないよう、お客さんに代金を預かって貰うと店の外へと赴き、男性を前に杖を構えます。
「これ以上、近付かないでください」
「スーレット様~」
完全に話を聞いてくれる様子ではありません。
目が真っ赤に染まり、狂ってしまっています。
ジットリとした汗が垂れると、不可解な熱を感じ取り、私は男性相手に本気で魔法を使うことにしました。
私はエールを飲み干し、胸を撫で下ろします。
つっかえていた心残りの棘が取れてくれた気分で、私はホッとしました。
「さてと、そろそろ遅いのでお会計を……およ?」
私は席を立とうとしました。
しかし突然酒場の扉が開き、誰か入って来ました。疲れているのでしょうか? 多少乱暴ですが、ここではしょっちゅうあることです。
「あっ、次が来たワン!」
「いらっしゃいませニャ。適当に空いてる席に座るニャ」
リシュワンさんとアーニャさんはいつものことのように案内をしました。
空いている席はほとんど無いのですが、大抵これで通用します。
もちろん、初めての方は分からないので、その場合はラパンさんが対応しますが、今回はラパンさんも忙しそうなので、常連さんが代わりに教えてくれそうです。
「兄ちゃん兄ちゃん、空いてる席はな、適当に空いたテーブルとチェアを見つけて座るんだ。分かるか?」
「スー」
「ほら、例えばあそこな。あそこの席空いてるから、座って待っとけ。そしたら、犬の子と猫の子のどっちかが行くから」
「「ここはそういうお店じゃないワン!」ニャ!」
確かにそういうお店に聞こえてもしまいそうです。……そういうお店ってなんでしょうか?
私は首を捻ってしまいますが、如何にもそれでは伝わらないらしく、男性は困っています。
ここはラパンさんに話を聞いて貰ったので、私が案内をしましょう。そう思い側に寄ります。
「私が案内しましょうか」
私は手を上げて声を掛けました。
すると店内のお客さんが、みんな私に注目しました。
「えっ、ミュシェル!?」
「嘘っ、ミュシェルさん!」
「ミュシェルが飲みに来るなんて、珍しいな。どういう風の吹き回しだ?」
私が酒場に足を運ぶのは珍しいようです。
確かに頻繁に顔は出しません。
ですが今日は特別です。私はにこやかな笑みを浮かべます。
「少々事情がありまして。それより、お客様。向こうの席に……あれ?」
「スーレット様」
「スーレット……はっ!?」
赤い瞳が私のことを狙っていた。
次の瞬間、腕を伸ばして私の首筋を掴もうとするので、つい突き飛ばしてしまいます。
「キャッ!」
私は男性を突き出してしまいました。
体がよろけ、フラフラとして転んでしまいます。
「ミュシェル、急になにしてるんだよ!」
「そうだぜ、客だぞ相手は?」
「ちょっとちょっと、これヤバいんじゃない? 大丈夫ですか、立てますか?」
私が付き飛ばした男性に、周りの人達が心配して声を掛けます。
流石にやり過ぎてしまったでしょうか?
私もただ目の色が真っ赤なだけで既視感を感じてしまったことを恥じ、突き飛ばしてしまった男性に謝ります。
「すみません、突然だったのでつい」
「スーレット様」
「スーレット? もしかして、スーレットさんのお知り合い……はっ!」
スーレットさんの知り合いの可能性は充分有ります。
私が首を捻りつつ手を差し出すと、男性は素早く起き上がり、私の手を掴むどころか、首を絞めようと襲ってきました。
「スーレット様~!」
「主よ、我が祈りを捧げ、悪しき者を討ち払え—聖衝撃!」
私は咄嗟に魔法を発動し、男性から身を守りました。
男性は私の放った衝撃波の魔法を受け、後ろに大きく吹き飛びます。
扉を突き破り、酒場の外に弾き出されると、道の真ん中に倒れてしまいました。
よっぽどのことが無い限り、命に別状はないでしょうが、それでも魔法によって体に負荷が掛かっている筈です。
「お、おい、ミュシェル!?」
「皆さん気を付けてください。あの人は、少し様子がおかしいです」
私は治療したいのですが、流石にそうもいきません。
警戒し、店の中に残ったお客を守る様に言葉を選ぶと、空気が一変しました。
「スーレット様~」
「ま、まだ起き上がるんですか!?」
背中を強く打ちつけた筈なのに、男性はすぐに起き上がってしまいます。
まるでアンデット種のようで、私は不気味に思いますが、酒場の中にいれるわけにはいきません。私は無銭飲食にならないよう、お客さんに代金を預かって貰うと店の外へと赴き、男性を前に杖を構えます。
「これ以上、近付かないでください」
「スーレット様~」
完全に話を聞いてくれる様子ではありません。
目が真っ赤に染まり、狂ってしまっています。
ジットリとした汗が垂れると、不可解な熱を感じ取り、私は男性相手に本気で魔法を使うことにしました。
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