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助けに行くしかない流れ
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「うおっ!」
ラパンの繰り出された拳が、俺の顔面に突き出された。
死ぬかもと思ったけれど、拳が当たることは無く、鼻先で止まった。
髪が拳圧で掻き上げられると、俺は冷汗をダラダラ掻き、全身が熱くなった。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ……」
「逃げないんだね」
「逃げられる訳ないだろ」
突然の死に、体が反応することさえできなかった。
そんな俺相手に、ラパンは表情をにやけた顔にする。
「ふん。そうですね、合格です」
「合格?」
「話に聞いていた通り、貴方がカガヤキですね。ミュシェルの仲間の」
「「ミュシェルの!?」」
ラパンの口から突然ミュシェルの名前が飛び出した。
俺はポカンとしてしまうが、後ろでリシュワンとアーニャも呼応する。
きっと何かあるに違いない。俺はラパンに訊ねた。
「ミュシェルがどうかしたのか?」
「やっぱりね。貴女、ミュシェルの仲間なんだ」
「仲間って言うか……それよりなにかあったんだな?」
ミュシェルと俺は別に勇者パーティーのような、選ばれし仲間でもない。ましてや絆で結ばれた親友でもない。
正直微妙な間柄なのだが、ラパンはそんな俺に不自然なことを言った。
「だったら話が早いわね。ミュシェルを助けに行って」
「ん?」
はい、意味が分かりません。ミュシェルがどうなったの前に、漠然とした結論を言われてしまった。
もちろん俺は困り顔を浮かべると、ラパンは軽い順序を説明してくれる。
「この騒動が起きた際、ミュシェルは赤い目をした住人達を相手に、必死に抵抗してみせましたよ。その結果、ここまでの鎮圧に至ったわ」
「ミュシェルが? マジか」
「「マジだワン」ニャ!」
「私達も駆り出されたものね、これが現実よ」
現実と言うにはあまりにもファンタジーだった。
けれどミュシェルは誰よりも先に対処に当たった。
元勇者パーティーのメンバーは伊達ではなく、実力もピカイチ。惚れ惚れする。
「それからミュシェルは元凶に向かったわ」
「元凶だと?」
「ええ。けれどミュシェル一人だと限界がある。戦うことに特化した魔法を持っていないからね。本当は私が手を貸したかったけれど、そんな暇は無かったわ」
「「当り前だワン」ニャ」
確かに先程までの状況を見れば、ラパンが居なくなるのは辛い。
俺もただでは済まなかっただろうから、賢明な判断だと言える。
けれどそれと引き換えに、ミュシェル一人に任せてしまった。
元凶ともなると、スーレットとの戦いになる。
どれだけの実力かは分からないが、少なくとも危険だ。一刻も早く手を貸さないと、大変なことになり兼ねない。
「マズいか?」
「それが言えるなら大丈夫だね。早くミュシェルを助けに行って」
「お、俺が? なんで」
この流れで如何して俺が助けに行くのか。
流石に場違いにも程があるだろう。
なにせミュシェルが俺のことをラパンに話したとすれば今日になり、一方的に別れてしまった後だった。そんな状況で、俺が助けに行くのはあまりにも違う。
「何故だって? カガヤキ、貴方は理由が分からないの?」
「いや、昨日今日の付き合いの俺が、ミュシェルを助けに行くのは烏滸がましい」
「ふん!」
ラパンの拳が俺の胸に飛び込んだ。
流石に二発目は喰らう気が無いので、俺は半歩下がる。
拳圧が衣装を揺らし、俺が表情を見ると、ラパンの顔色は怖かった。
「それでも貴方は仲間なの?」
「仲間って訳じゃない」
「そうだとしても、ミュシェルが信頼を置くのが貴方よ。貴方以外が行っても意味が無いでしょ?」
「それは横暴な……信頼?」
ミュシェルがそんなことを想っていたのか。こんなポッと出の俺なんかを。
卑屈になってしまうと、ラパンの拳が俺の胸に付いた。
感情が溢れ出し、俺の中に流れ込んでくると、ラパンの強い眼光が射抜いた。
「早く行きなさい。貴方をミュシェルが待っているから」
「えっ、でも何処に行けば?」
「それなら時計塔ワン!」
「時計塔に向かったのを覚えているニャ!」
「時計塔? あれか!」
そう言えば、時計塔は役所だとかなんとか話してた。
スーレットのことだ。高みの見物でも決め込んでいることだろう。
それならカチコミに行ってもおかしくない。場所が分かるなら好都合。俺はラパンに背中を押される。
「ほら、早く行って」
「わ、分かった。俺の力がどれだけ通用するかは……まあ、気にしなくていいか」
こう見えて炎の魔王を倒した、コスプレ魔王だ。
大抵の相手に負ける気はしない。
自信を取り留め、ミュシェルの手助けに走った。
ラパンの繰り出された拳が、俺の顔面に突き出された。
死ぬかもと思ったけれど、拳が当たることは無く、鼻先で止まった。
髪が拳圧で掻き上げられると、俺は冷汗をダラダラ掻き、全身が熱くなった。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ……」
「逃げないんだね」
「逃げられる訳ないだろ」
突然の死に、体が反応することさえできなかった。
そんな俺相手に、ラパンは表情をにやけた顔にする。
「ふん。そうですね、合格です」
「合格?」
「話に聞いていた通り、貴方がカガヤキですね。ミュシェルの仲間の」
「「ミュシェルの!?」」
ラパンの口から突然ミュシェルの名前が飛び出した。
俺はポカンとしてしまうが、後ろでリシュワンとアーニャも呼応する。
きっと何かあるに違いない。俺はラパンに訊ねた。
「ミュシェルがどうかしたのか?」
「やっぱりね。貴女、ミュシェルの仲間なんだ」
「仲間って言うか……それよりなにかあったんだな?」
ミュシェルと俺は別に勇者パーティーのような、選ばれし仲間でもない。ましてや絆で結ばれた親友でもない。
正直微妙な間柄なのだが、ラパンはそんな俺に不自然なことを言った。
「だったら話が早いわね。ミュシェルを助けに行って」
「ん?」
はい、意味が分かりません。ミュシェルがどうなったの前に、漠然とした結論を言われてしまった。
もちろん俺は困り顔を浮かべると、ラパンは軽い順序を説明してくれる。
「この騒動が起きた際、ミュシェルは赤い目をした住人達を相手に、必死に抵抗してみせましたよ。その結果、ここまでの鎮圧に至ったわ」
「ミュシェルが? マジか」
「「マジだワン」ニャ!」
「私達も駆り出されたものね、これが現実よ」
現実と言うにはあまりにもファンタジーだった。
けれどミュシェルは誰よりも先に対処に当たった。
元勇者パーティーのメンバーは伊達ではなく、実力もピカイチ。惚れ惚れする。
「それからミュシェルは元凶に向かったわ」
「元凶だと?」
「ええ。けれどミュシェル一人だと限界がある。戦うことに特化した魔法を持っていないからね。本当は私が手を貸したかったけれど、そんな暇は無かったわ」
「「当り前だワン」ニャ」
確かに先程までの状況を見れば、ラパンが居なくなるのは辛い。
俺もただでは済まなかっただろうから、賢明な判断だと言える。
けれどそれと引き換えに、ミュシェル一人に任せてしまった。
元凶ともなると、スーレットとの戦いになる。
どれだけの実力かは分からないが、少なくとも危険だ。一刻も早く手を貸さないと、大変なことになり兼ねない。
「マズいか?」
「それが言えるなら大丈夫だね。早くミュシェルを助けに行って」
「お、俺が? なんで」
この流れで如何して俺が助けに行くのか。
流石に場違いにも程があるだろう。
なにせミュシェルが俺のことをラパンに話したとすれば今日になり、一方的に別れてしまった後だった。そんな状況で、俺が助けに行くのはあまりにも違う。
「何故だって? カガヤキ、貴方は理由が分からないの?」
「いや、昨日今日の付き合いの俺が、ミュシェルを助けに行くのは烏滸がましい」
「ふん!」
ラパンの拳が俺の胸に飛び込んだ。
流石に二発目は喰らう気が無いので、俺は半歩下がる。
拳圧が衣装を揺らし、俺が表情を見ると、ラパンの顔色は怖かった。
「それでも貴方は仲間なの?」
「仲間って訳じゃない」
「そうだとしても、ミュシェルが信頼を置くのが貴方よ。貴方以外が行っても意味が無いでしょ?」
「それは横暴な……信頼?」
ミュシェルがそんなことを想っていたのか。こんなポッと出の俺なんかを。
卑屈になってしまうと、ラパンの拳が俺の胸に付いた。
感情が溢れ出し、俺の中に流れ込んでくると、ラパンの強い眼光が射抜いた。
「早く行きなさい。貴方をミュシェルが待っているから」
「えっ、でも何処に行けば?」
「それなら時計塔ワン!」
「時計塔に向かったのを覚えているニャ!」
「時計塔? あれか!」
そう言えば、時計塔は役所だとかなんとか話してた。
スーレットのことだ。高みの見物でも決め込んでいることだろう。
それならカチコミに行ってもおかしくない。場所が分かるなら好都合。俺はラパンに背中を押される。
「ほら、早く行って」
「わ、分かった。俺の力がどれだけ通用するかは……まあ、気にしなくていいか」
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自信を取り留め、ミュシェルの手助けに走った。
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