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ゾンビ映画の助演になった気分
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「クソッ。どんだけいるんだよ!」
俺は周囲を街行く一般人達に取り囲まれていた。
しかも全員自分の意識を持っていない。
瞳の色が真っ赤に染まり、まるで血液の色だ。完全に洗脳されているのは明らかで、俺は傷付けないように頑張って立ち回る。
「来るな。邪魔だ!」
俺は片っ端から抵抗した。
男性相手には拳で全力抵抗。女性や子供はチョップで気絶させ、老人には骨を折らないように上手くあしらってやり過ごす。
異世界に来た主人公っぽくない。
完全に介護作業を始めており、俺は楽しくなかった。
むしろ楽しむなんて余裕は無く、次から次へと襲ってくる。
「スーレット様~」
「スーレット様のため~」
「この世は魔王様の、魔王様のお膝下~」
口々にスーレットの名前を口にしている。
もうこんなの確定事項で、全ての犯人はスーレットだ。
きっと長い期間を経て、ここまで準備してきたのだろうが、流石に機を窺いミスだ。
「あー、うるさいよ! スーレットスーレット、異世界に来て昨日今日の俺に厄介ごとを持ち込むな!」
怒りの沸点が急激に上昇。
珍しくガチギレしてしまいそうになるが、街行く一般人を次から次へと叩きのめす。
異世界特権がまるで役に立たず、完全に武闘派魔王様の完成だ。
「はぁはぁはぁはぁ……キリが無い」
肩を落とし、背中が丸くなってしまう。
魔王の威厳は一切無く、コスプレ姿で暴れまわり、顔中から汗が流れる。
通り雨にでも打たれました? とか言われてもおかしくない量の汗が噴き出ると、俺はぜぇぜぇ息を荒くした。
「やるか、魔法使うか」
ここまで温存してきた魔力を使ってもいい。
流石に拳で抵抗は限界が見えたんだ。
とは言え何を使えばいいか。
単発のα、波状のβ、全体攻撃のγ。ここはβかγの二択だ。
(でもなにを使う? なにを使えばいい? 炎は絶対にダメだ。やるなら……決まった!)
俺は〇,の秒数だけ思考を切り離し、使う魔法御決めた。
見れば的になりそうな人達が次から次へやって来る。
炎が火柱を上げ、烏の羽を染め上げていることになど一切気にも留めていない。
痛覚も完全に操られているのか、それならそれで好都合だ。
「β星の水流!」
俺は右手を突き出すと、手のひらから横波が溢れる。
白波を立てながら、人々を押し流すと、一切近付けない。
ましてや水流を浴びた瞬間、あまりの水量にビックリしたのか、飲み込まれて意識を失う。溺れる寸前で引き上げると、全身ビショビショになりながら、立ち上がる気力を失ってしまった。
「ヤバッ、これってトラウマものじゃね?」
頼みます、スーレット。記憶まで操っていてください。
俺は心の中でそう唱えると、水流に飲まれた人達を救出する。
同時に背後を壁のように妨げる炎。
俺の魔法により、若干だが勢いを落とす。
それでも健在な圧倒的な炎の壁に嫌気がさしつつも、かなり進展はあった。
まず一つ、この壁は水じゃ消えない。
恐らくスーレット本人を倒さない限り、消えない仕様になっている。
もう一つ、水は効率がいい。
若干だが炎の勢いを消せるだけじゃない。
襲って来る人達は、マジのゾンビゲームみたいに、正気な人を襲いに来る。
他のものには目もくれず、一直線にゆっくりとした動きでだ。そんなのボーナスが無防備にやって来ているのと同じで、波状攻撃は理に適っている。
「マジで俺、ゾンビ映画の世界にでも転移したのか?」
バカな想像力がこんな時に限って働く。
全然面白くは無いし、こんなやり口主人公じゃない。
精々助演がいい所で、俺は助演なりに、全力で応戦することを決めた。
「とりあえず、このWAVEを乗り越えるしかない!」
完全に操られた人達をゾンビに見立てる。
俺は魔法を連発して応戦する構えを見せるも、一体何人いるのか分からないが、次々襲われた。
けれど戦うしかない。それくらいしか、今の俺にできることは無いんだ。
俺は周囲を街行く一般人達に取り囲まれていた。
しかも全員自分の意識を持っていない。
瞳の色が真っ赤に染まり、まるで血液の色だ。完全に洗脳されているのは明らかで、俺は傷付けないように頑張って立ち回る。
「来るな。邪魔だ!」
俺は片っ端から抵抗した。
男性相手には拳で全力抵抗。女性や子供はチョップで気絶させ、老人には骨を折らないように上手くあしらってやり過ごす。
異世界に来た主人公っぽくない。
完全に介護作業を始めており、俺は楽しくなかった。
むしろ楽しむなんて余裕は無く、次から次へと襲ってくる。
「スーレット様~」
「スーレット様のため~」
「この世は魔王様の、魔王様のお膝下~」
口々にスーレットの名前を口にしている。
もうこんなの確定事項で、全ての犯人はスーレットだ。
きっと長い期間を経て、ここまで準備してきたのだろうが、流石に機を窺いミスだ。
「あー、うるさいよ! スーレットスーレット、異世界に来て昨日今日の俺に厄介ごとを持ち込むな!」
怒りの沸点が急激に上昇。
珍しくガチギレしてしまいそうになるが、街行く一般人を次から次へと叩きのめす。
異世界特権がまるで役に立たず、完全に武闘派魔王様の完成だ。
「はぁはぁはぁはぁ……キリが無い」
肩を落とし、背中が丸くなってしまう。
魔王の威厳は一切無く、コスプレ姿で暴れまわり、顔中から汗が流れる。
通り雨にでも打たれました? とか言われてもおかしくない量の汗が噴き出ると、俺はぜぇぜぇ息を荒くした。
「やるか、魔法使うか」
ここまで温存してきた魔力を使ってもいい。
流石に拳で抵抗は限界が見えたんだ。
とは言え何を使えばいいか。
単発のα、波状のβ、全体攻撃のγ。ここはβかγの二択だ。
(でもなにを使う? なにを使えばいい? 炎は絶対にダメだ。やるなら……決まった!)
俺は〇,の秒数だけ思考を切り離し、使う魔法御決めた。
見れば的になりそうな人達が次から次へやって来る。
炎が火柱を上げ、烏の羽を染め上げていることになど一切気にも留めていない。
痛覚も完全に操られているのか、それならそれで好都合だ。
「β星の水流!」
俺は右手を突き出すと、手のひらから横波が溢れる。
白波を立てながら、人々を押し流すと、一切近付けない。
ましてや水流を浴びた瞬間、あまりの水量にビックリしたのか、飲み込まれて意識を失う。溺れる寸前で引き上げると、全身ビショビショになりながら、立ち上がる気力を失ってしまった。
「ヤバッ、これってトラウマものじゃね?」
頼みます、スーレット。記憶まで操っていてください。
俺は心の中でそう唱えると、水流に飲まれた人達を救出する。
同時に背後を壁のように妨げる炎。
俺の魔法により、若干だが勢いを落とす。
それでも健在な圧倒的な炎の壁に嫌気がさしつつも、かなり進展はあった。
まず一つ、この壁は水じゃ消えない。
恐らくスーレット本人を倒さない限り、消えない仕様になっている。
もう一つ、水は効率がいい。
若干だが炎の勢いを消せるだけじゃない。
襲って来る人達は、マジのゾンビゲームみたいに、正気な人を襲いに来る。
他のものには目もくれず、一直線にゆっくりとした動きでだ。そんなのボーナスが無防備にやって来ているのと同じで、波状攻撃は理に適っている。
「マジで俺、ゾンビ映画の世界にでも転移したのか?」
バカな想像力がこんな時に限って働く。
全然面白くは無いし、こんなやり口主人公じゃない。
精々助演がいい所で、俺は助演なりに、全力で応戦することを決めた。
「とりあえず、このWAVEを乗り越えるしかない!」
完全に操られた人達をゾンビに見立てる。
俺は魔法を連発して応戦する構えを見せるも、一体何人いるのか分からないが、次々襲われた。
けれど戦うしかない。それくらいしか、今の俺にできることは無いんだ。
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