異世界で最強になった俺が偽魔王になってみた。~魔王キャラVTuberの俺が配信していたら、異世界転移してしまい、マジの魔王扱いされたんだが?

水定ユウ

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 俺は自分の配信アーカイブを覗き見る。
 もちろん、動画を観る気はほとんどない。
 俺が観たかったのは、配信に集まったコメントだった。

「もしかすると、有益なコメントがあるかもしれない」

 正直、俺の住む世界で配信していた頃とはまるで違う。
 視聴者層が明らかに傾いていて、あまりにも上から目線。
 民度が分かっていないのか、本当に自由人だった。

「とは言え、大抵は……」


天の星:いやぁー、これは愉快愉快
太陽の主:なかなか勘が鋭いですね
水の声:どうして水の魔法を使ってくれないんだ!
紅蓮の神:炎もだぞ!
雷神の太鼓:雷もだぞ。しかも戦わないとは情けない
風祭の矢: 風の魔法もよ。全く、ちゃんとよね!
……


 酷い言われようだった。
 あまりにも自由な発言が飛び交っていて、俺の気持ちを考慮していない。
 いや、考慮なんてする気が無いんだろう。

「とは言え、視聴者層は増えてない……おっ」


黄泉の死者:ふふっ、これは闇の眷属か
天の星:おっ、黄泉黄泉。来たんだねー
太陽の主:こんにちは
黄泉の死者:ええ、こんにちは。それにしても、彼は闇の眷属の様ね
……

「闇の眷属? 俺のことなのか?」

 突然現れた謎の視聴者。
 “闇の眷属”という謎単語ワードに目を奪われるも、如何やら話の流れで俺じゃない。


紅蓮の神:やっぱりお前の回し者か!
黄泉の死者:いいえ、違うわよ
水の声:それじゃあ、あれ? 闇の眷属ってことは
黄泉の死者:多分、光に抗う存在。恐らくは吸血鬼?
……


「吸血鬼?」

 直接的な単語ワードの登場に、俺は目を見開く。
 配信アーカイブのコメント欄を更にスクロールする。
 この“黄泉の死者”って人はかなり有益な情報を出してくれる。

「吸血鬼……ってことは、あの赤い瞳は」


太陽の主:何か証拠はあるのでしょうか?
黄泉の死者:証拠なら瞳の色
紅蓮の神:瞳の色だと?
黄泉の死者:赤い瞳を持つ人間は多い。だが、この赤は特徴的だ。現に吸血鬼の眷属化の影響を受けている
……


「あの赤い瞳、もしかして全員眷属になっていたってことか? ってことは、例の屋台が怪しいな」

 瞳の色が異様な赤に飲み込まれている。
 それは傍から見ても明らかで、全員があの男性、スーレットと同じ赤い瞳を持っていた。

 もしもスーレットが吸血鬼ならば、答えは一直線になる。
 例の屋台を発端として、街に住んでいる人達を、次から次へと眷属に変えていた。

 そうすれば、自分に都合が悪い情報を見向きさせないように動ける。
 何処まで眷属化した人達の意識を操れるのかは知らないが、少なくとも、俺一人を執拗に追い詰めるには充分だった。

「とは言え、どうして俺なんだ? 何か都合の悪いことでもあるのか?」

 つい考え込んでしまうと、不意にミュシェルが心配になった。
 あんな感じで離れてしまったが、スーレットはミュシェルを危険視している。
 逆に言えばミュシェルもスーレットを危険視していて、一触即発もあり得そうだった。

「まあ、ミュシェルもそんなにバカじゃないだろ。スーレットが仮に吸血鬼だとして、今まで大事を起こしてこなかったんだ。今更……いや、それならなんで今なんだ?」

 俺には考えれば考える程、負のスパイラルに落ちていく感じがした。
 螺旋状に広がる坩堝に落ちると、ますますミュシェルが心配になる。

「俺なんかが心配してもな……はっ!?」

 ふと視線を落とせば、気になるコメントがあった。
 例の有益コメントをくれる、“黄泉の死者”だった。


天の星:にゃはは。でも、スーレットってなにがしたいんだろ?
黄泉の死者:おそらく転覆だ
太陽の主:転覆ですか?
月の巫女:どういうこと?
黄泉の死者:眷属を増やすことはあくまでも過程。魔王に対し恨みを抱かないなら、行動は起こさない。けれど今回行動を起こしたのは、きっと機を窺っていた証拠。なにか起こす
……


「やめてほしいな」

 あまりにもあたりそうで怖い。
 俺は身震いすると、これ以上は見ないようにアーカイブを閉じる。

 仰向けになり、天井を見つめた。
 不安が込み上げてくる中、俺は気にしない素振りを見せた。

「いや、きっと大丈夫だろ。ミュシェルに限ってそんな……」

 ドーン!!

「はっ!?」

 俺は割り切った上で考えるのを辞めた。
 しかし突然遠くからけたたましい爆音が響き渡った。
 空気が振幅氏、窓を突き破ってしまいそうになると、俺は体を起こした。

「今のは一体……まさかそんな筈ないよな?」

 俺は客室を飛び出して外を見に向かう。
 近くには窓があるのでそこまで向かうも、嫌な予感がヒシヒシと伝わり、俺は心臓が潰れそうになった。
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