42 / 68
コメント欄を見てみよう
しおりを挟む
俺は自分の配信アーカイブを覗き見る。
もちろん、動画を観る気はほとんどない。
俺が観たかったのは、配信に集まったコメントだった。
「もしかすると、有益なコメントがあるかもしれない」
正直、俺の住む世界で配信していた頃とはまるで違う。
視聴者層が明らかに傾いていて、あまりにも上から目線。
民度が分かっていないのか、本当に自由人だった。
「とは言え、大抵は……」
天の星:いやぁー、これは愉快愉快
太陽の主:なかなか勘が鋭いですね
水の声:どうして水の魔法を使ってくれないんだ!
紅蓮の神:炎もだぞ!
雷神の太鼓:雷もだぞ。しかも戦わないとは情けない
風祭の矢: 風の魔法もよ。全く、ちゃんとよね!
……
酷い言われようだった。
あまりにも自由な発言が飛び交っていて、俺の気持ちを考慮していない。
いや、考慮なんてする気が無いんだろう。
「とは言え、視聴者層は増えてない……おっ」
黄泉の死者:ふふっ、これは闇の眷属か
天の星:おっ、黄泉黄泉。来たんだねー
太陽の主:こんにちは
黄泉の死者:ええ、こんにちは。それにしても、彼は闇の眷属の様ね
……
「闇の眷属? 俺のことなのか?」
突然現れた謎の視聴者。
“闇の眷属”という謎単語に目を奪われるも、如何やら話の流れで俺じゃない。
紅蓮の神:やっぱりお前の回し者か!
黄泉の死者:いいえ、違うわよ
水の声:それじゃあ、あれ? 闇の眷属ってことは
黄泉の死者:多分、光に抗う存在。恐らくは吸血鬼?
……
「吸血鬼?」
直接的な単語の登場に、俺は目を見開く。
配信アーカイブのコメント欄を更にスクロールする。
この“黄泉の死者”って人はかなり有益な情報を出してくれる。
「吸血鬼……ってことは、あの赤い瞳は」
太陽の主:何か証拠はあるのでしょうか?
黄泉の死者:証拠なら瞳の色
紅蓮の神:瞳の色だと?
黄泉の死者:赤い瞳を持つ人間は多い。だが、この赤は特徴的だ。現に吸血鬼の眷属化の影響を受けている
……
「あの赤い瞳、もしかして全員眷属になっていたってことか? ってことは、例の屋台が怪しいな」
瞳の色が異様な赤に飲み込まれている。
それは傍から見ても明らかで、全員があの男性、スーレットと同じ赤い瞳を持っていた。
もしもスーレットが吸血鬼ならば、答えは一直線になる。
例の屋台を発端として、街に住んでいる人達を、次から次へと眷属に変えていた。
そうすれば、自分に都合が悪い情報を見向きさせないように動ける。
何処まで眷属化した人達の意識を操れるのかは知らないが、少なくとも、俺一人を執拗に追い詰めるには充分だった。
「とは言え、どうして俺なんだ? 何か都合の悪いことでもあるのか?」
つい考え込んでしまうと、不意にミュシェルが心配になった。
あんな感じで離れてしまったが、スーレットはミュシェルを危険視している。
逆に言えばミュシェルもスーレットを危険視していて、一触即発もあり得そうだった。
「まあ、ミュシェルもそんなにバカじゃないだろ。スーレットが仮に吸血鬼だとして、今まで大事を起こしてこなかったんだ。今更……いや、それならなんで今なんだ?」
俺には考えれば考える程、負のスパイラルに落ちていく感じがした。
螺旋状に広がる坩堝に落ちると、ますますミュシェルが心配になる。
「俺なんかが心配してもな……はっ!?」
ふと視線を落とせば、気になるコメントがあった。
例の有益コメントをくれる、“黄泉の死者”だった。
天の星:にゃはは。でも、スーレットってなにがしたいんだろ?
黄泉の死者:おそらく転覆だ
太陽の主:転覆ですか?
月の巫女:どういうこと?
黄泉の死者:眷属を増やすことはあくまでも過程。魔王に対し恨みを抱かないなら、行動は起こさない。けれど今回行動を起こしたのは、きっと機を窺っていた証拠。なにか起こす
……
「やめてほしいな」
あまりにもあたりそうで怖い。
俺は身震いすると、これ以上は見ないようにアーカイブを閉じる。
仰向けになり、天井を見つめた。
不安が込み上げてくる中、俺は気にしない素振りを見せた。
「いや、きっと大丈夫だろ。ミュシェルに限ってそんな……」
ドーン!!
「はっ!?」
俺は割り切った上で考えるのを辞めた。
しかし突然遠くからけたたましい爆音が響き渡った。
空気が振幅氏、窓を突き破ってしまいそうになると、俺は体を起こした。
「今のは一体……まさかそんな筈ないよな?」
俺は客室を飛び出して外を見に向かう。
近くには窓があるのでそこまで向かうも、嫌な予感がヒシヒシと伝わり、俺は心臓が潰れそうになった。
もちろん、動画を観る気はほとんどない。
俺が観たかったのは、配信に集まったコメントだった。
「もしかすると、有益なコメントがあるかもしれない」
正直、俺の住む世界で配信していた頃とはまるで違う。
視聴者層が明らかに傾いていて、あまりにも上から目線。
民度が分かっていないのか、本当に自由人だった。
「とは言え、大抵は……」
天の星:いやぁー、これは愉快愉快
太陽の主:なかなか勘が鋭いですね
水の声:どうして水の魔法を使ってくれないんだ!
紅蓮の神:炎もだぞ!
雷神の太鼓:雷もだぞ。しかも戦わないとは情けない
風祭の矢: 風の魔法もよ。全く、ちゃんとよね!
……
酷い言われようだった。
あまりにも自由な発言が飛び交っていて、俺の気持ちを考慮していない。
いや、考慮なんてする気が無いんだろう。
「とは言え、視聴者層は増えてない……おっ」
黄泉の死者:ふふっ、これは闇の眷属か
天の星:おっ、黄泉黄泉。来たんだねー
太陽の主:こんにちは
黄泉の死者:ええ、こんにちは。それにしても、彼は闇の眷属の様ね
……
「闇の眷属? 俺のことなのか?」
突然現れた謎の視聴者。
“闇の眷属”という謎単語に目を奪われるも、如何やら話の流れで俺じゃない。
紅蓮の神:やっぱりお前の回し者か!
黄泉の死者:いいえ、違うわよ
水の声:それじゃあ、あれ? 闇の眷属ってことは
黄泉の死者:多分、光に抗う存在。恐らくは吸血鬼?
……
「吸血鬼?」
直接的な単語の登場に、俺は目を見開く。
配信アーカイブのコメント欄を更にスクロールする。
この“黄泉の死者”って人はかなり有益な情報を出してくれる。
「吸血鬼……ってことは、あの赤い瞳は」
太陽の主:何か証拠はあるのでしょうか?
黄泉の死者:証拠なら瞳の色
紅蓮の神:瞳の色だと?
黄泉の死者:赤い瞳を持つ人間は多い。だが、この赤は特徴的だ。現に吸血鬼の眷属化の影響を受けている
……
「あの赤い瞳、もしかして全員眷属になっていたってことか? ってことは、例の屋台が怪しいな」
瞳の色が異様な赤に飲み込まれている。
それは傍から見ても明らかで、全員があの男性、スーレットと同じ赤い瞳を持っていた。
もしもスーレットが吸血鬼ならば、答えは一直線になる。
例の屋台を発端として、街に住んでいる人達を、次から次へと眷属に変えていた。
そうすれば、自分に都合が悪い情報を見向きさせないように動ける。
何処まで眷属化した人達の意識を操れるのかは知らないが、少なくとも、俺一人を執拗に追い詰めるには充分だった。
「とは言え、どうして俺なんだ? 何か都合の悪いことでもあるのか?」
つい考え込んでしまうと、不意にミュシェルが心配になった。
あんな感じで離れてしまったが、スーレットはミュシェルを危険視している。
逆に言えばミュシェルもスーレットを危険視していて、一触即発もあり得そうだった。
「まあ、ミュシェルもそんなにバカじゃないだろ。スーレットが仮に吸血鬼だとして、今まで大事を起こしてこなかったんだ。今更……いや、それならなんで今なんだ?」
俺には考えれば考える程、負のスパイラルに落ちていく感じがした。
螺旋状に広がる坩堝に落ちると、ますますミュシェルが心配になる。
「俺なんかが心配してもな……はっ!?」
ふと視線を落とせば、気になるコメントがあった。
例の有益コメントをくれる、“黄泉の死者”だった。
天の星:にゃはは。でも、スーレットってなにがしたいんだろ?
黄泉の死者:おそらく転覆だ
太陽の主:転覆ですか?
月の巫女:どういうこと?
黄泉の死者:眷属を増やすことはあくまでも過程。魔王に対し恨みを抱かないなら、行動は起こさない。けれど今回行動を起こしたのは、きっと機を窺っていた証拠。なにか起こす
……
「やめてほしいな」
あまりにもあたりそうで怖い。
俺は身震いすると、これ以上は見ないようにアーカイブを閉じる。
仰向けになり、天井を見つめた。
不安が込み上げてくる中、俺は気にしない素振りを見せた。
「いや、きっと大丈夫だろ。ミュシェルに限ってそんな……」
ドーン!!
「はっ!?」
俺は割り切った上で考えるのを辞めた。
しかし突然遠くからけたたましい爆音が響き渡った。
空気が振幅氏、窓を突き破ってしまいそうになると、俺は体を起こした。
「今のは一体……まさかそんな筈ないよな?」
俺は客室を飛び出して外を見に向かう。
近くには窓があるのでそこまで向かうも、嫌な予感がヒシヒシと伝わり、俺は心臓が潰れそうになった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。
真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆
【あらすじ】
どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。
神様は言った。
「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」
現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。
神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。
それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。
あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。
そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。
そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。
ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。
この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。
さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。
そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。
チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。
しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。
もちろん、攻略スキルを使って。
もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。
下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。
これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。
【他サイトでの掲載状況】
本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
農民レベル99 天候と大地を操り世界最強
九頭七尾
ファンタジー
【農民】という天職を授かり、憧れていた戦士の夢を断念した少年ルイス。
仕方なく故郷の村で農業に従事し、十二年が経ったある日のこと、新しく就任したばかりの代官が訊ねてきて――
「何だあの巨大な大根は? 一体どうやって収穫するのだ?」
「片手で抜けますけど? こんな感じで」
「200キロはありそうな大根を片手で……?」
「小麦の方も収穫しますね。えい」
「一帯の小麦が一瞬で刈り取られた!? 何をしたのだ!?」
「手刀で真空波を起こしただけですけど?」
その代官の勧めで、ルイスは冒険者になることに。
日々の農作業(?)を通し、最強の戦士に成長していた彼は、最年長ルーキーとして次々と規格外の戦果を挙げていくのだった。
「これは投擲用大根だ」
「「「投擲用大根???」」」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました
遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。
追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。
やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。
えっ、じいちゃん昔勇者だったのっ!?〜祖父の遺品整理をしてたら異世界に飛ばされ、行方不明だった父に魔王の心臓を要求されたので逃げる事にした〜
楠ノ木雫
ファンタジー
まだ16歳の奥村留衣は、ずっと一人で育ててくれていた祖父を亡くした。親戚も両親もいないため、一人で遺品整理をしていた時に偶然見つけた腕輪。ふとそれを嵌めてみたら、いきなり違う世界に飛ばされてしまった。
目の前に浮かんでいた、よくあるシステムウィンドウというものに書かれていたものは『勇者の孫』。そう、亡くなった祖父はこの世界の勇者だったのだ。
そして、行方不明だと言われていた両親に会う事に。だが、祖父が以前討伐した魔王の心臓を渡すよう要求されたのでドラゴンを召喚して逃げた!
追われつつも、故郷らしい異世界での楽しい(?)セカンドライフが今始まる!
※他の投稿サイトにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる