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第12.5話 酒場のミュシェル
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あっという間に日が暮れ、夜になっていました。
すると街の外に出ていた冒険者の人達が、一斉に街に戻ってきます。
昼間の賑わいとはまた一味違う、夜の賑わい。
裏返ったように訪れると、街でも特に繁盛している、人気の酒場は一杯になっていました。
「おー、酒だ。酒持ってこーい!」
「エール、エール二つ!」
「こっちはビールお願い!」
所狭しと、注文が殺到します。
働いているウエイトレスの人達は大変です。
てんやわんやになりながらも、いつものことのように、慌ただしく処理しています。
「アーニャ、そっちお願いワン」
「リシュワン、お皿下げてニャー」
特に二人のウエイトレスが走り回っていました。
自分の体を軸にして、回転することで、何度も何度も注文と会計を済ませている。
とんでもない速度で回転率を上げていくと、私はボーッと視線を奪われていました。
「はぁー」
それでも溜息の方が大きいです。
私は落胆して肩を落とすと、目の前のテーブルに、木製ジョッキが置かれました。
ゴトン!
「えっ?」
「なに落ち込んでるの、ミュシェル」
私の声を掛けたのは、この酒場のウエイトレスの一人。
頭から白いウサギの耳を生やし、お尻からもウサギの尻尾が生えています。
シュッと美しい顔立ちをした凛々しい女性で、私の友達です。
「ラパンさん、これは?」
「マスターのサービス。ミュシェル、なにか落ち込んでるよね?」
如何やら私のことを心配してくれているみたいでした。
まさか、心配される程、私は落ち込んでいたみたいです。
少し心苦しくなりますが、頑張って顔色を変えました。
「落ち込んではいませんよ、ラパンさん」
「嘘、下手だね。私の目に通用すると思ってる?」
「ううっ、“嘘を見抜く瞳”ですね」
「そう言うこと。なにかあった?」
ラパンさんはとても優しいです。
店内が慌ただしい中、一人私の相手をしてくれます。
テーブルの前に空いた席に腰を落ち着かせ、肘を突いて待ちます。
もちろん私はラパンさんをいつまでも拘束してはいけないと分かっています。
なので首を横に振り、ラパンさんを解放しようとしました。
「ラパンさん、私のことを気に留めないでください。代わりに、リシュワンさんとアーニャさんを手伝ってあげてください」
「「そうだワン!」ニャ!」
リシュワンさんとアーニャさんは、私に賛同してくれました。
目の色を変え、本気で怒っているようです。
一人サボるラパンさんを訝しめるも、ラパンさんは気にしません。
「頑張ってね、二人共」
「「おい!」」
ラパンさんは無視しました。
私のためにそこまでやってくれるのか、はたまたサボりたいだけなのか。
どちらとも言えませんが、店内は更に盛り上がります。
「すみませーん、キンカイサンゴのおひたし」
「こっちはビールお代わりね」
「サラマンコンダのかば焼きはまだ!?」
「「は、はい。ただいまワン!」ニャ!」
リシュワンさんとアーニャさんは忙しく働いていました。
てんやわんやになりながら、全身からたくさん汗を掻きながら、死ぬ気で戦場を駆けています。
「た、大変ですね。いつもこの酒場は」
「まあ、繁盛してるのはいいことだからね」
「ラパンさんも早く戻った方がいいのではないですか?」
「だからミュシェルの相手が終わったら戻るから。早く話して」
ラパンさんは私ににじり寄りました。
これは口を割らないとダメそうな空気です。
「えっと、その……」
「大丈夫」
パチン!
ラパンさんは指を鳴らしました。
すると周りの音が一切聞こえなくなり、私とラパンさんの周りを四角い結界が覆います。
「これで誰も私達に気が付けない。今なら毒、いくら吐いても大丈夫よ」
「結界魔法ですか。……分かりました。あの、相談なんですけど」
「いいよ。じゃあ、話して」
私はラパンさんに心の淀みを話しました。
もちろん、私自身答えが分かっていないから口にします。
内容はもちろん、カガヤキさんのことです。
「私の友達が何故か私のことを想って離れてしまったんです。どうしてでしょうか? 私、なにかしてしまったんでしょうか?」
「……待って、どういうこと?」
ラパンさんは一瞬理解に苦しみました。
眉根を寄せ、額に皺を寄せると、改めて食い気味に訊ねます。
「あっ、すみません。では、最初から……」
少し話をボカしながら、私は話そうとしました。
けれどラパンさんの前では嘘は付けません。
そこでカガヤキさんには悪いですが、真実を話しながら、私はラパンさんに答えの分からない問答を訊ねました。
すると街の外に出ていた冒険者の人達が、一斉に街に戻ってきます。
昼間の賑わいとはまた一味違う、夜の賑わい。
裏返ったように訪れると、街でも特に繁盛している、人気の酒場は一杯になっていました。
「おー、酒だ。酒持ってこーい!」
「エール、エール二つ!」
「こっちはビールお願い!」
所狭しと、注文が殺到します。
働いているウエイトレスの人達は大変です。
てんやわんやになりながらも、いつものことのように、慌ただしく処理しています。
「アーニャ、そっちお願いワン」
「リシュワン、お皿下げてニャー」
特に二人のウエイトレスが走り回っていました。
自分の体を軸にして、回転することで、何度も何度も注文と会計を済ませている。
とんでもない速度で回転率を上げていくと、私はボーッと視線を奪われていました。
「はぁー」
それでも溜息の方が大きいです。
私は落胆して肩を落とすと、目の前のテーブルに、木製ジョッキが置かれました。
ゴトン!
「えっ?」
「なに落ち込んでるの、ミュシェル」
私の声を掛けたのは、この酒場のウエイトレスの一人。
頭から白いウサギの耳を生やし、お尻からもウサギの尻尾が生えています。
シュッと美しい顔立ちをした凛々しい女性で、私の友達です。
「ラパンさん、これは?」
「マスターのサービス。ミュシェル、なにか落ち込んでるよね?」
如何やら私のことを心配してくれているみたいでした。
まさか、心配される程、私は落ち込んでいたみたいです。
少し心苦しくなりますが、頑張って顔色を変えました。
「落ち込んではいませんよ、ラパンさん」
「嘘、下手だね。私の目に通用すると思ってる?」
「ううっ、“嘘を見抜く瞳”ですね」
「そう言うこと。なにかあった?」
ラパンさんはとても優しいです。
店内が慌ただしい中、一人私の相手をしてくれます。
テーブルの前に空いた席に腰を落ち着かせ、肘を突いて待ちます。
もちろん私はラパンさんをいつまでも拘束してはいけないと分かっています。
なので首を横に振り、ラパンさんを解放しようとしました。
「ラパンさん、私のことを気に留めないでください。代わりに、リシュワンさんとアーニャさんを手伝ってあげてください」
「「そうだワン!」ニャ!」
リシュワンさんとアーニャさんは、私に賛同してくれました。
目の色を変え、本気で怒っているようです。
一人サボるラパンさんを訝しめるも、ラパンさんは気にしません。
「頑張ってね、二人共」
「「おい!」」
ラパンさんは無視しました。
私のためにそこまでやってくれるのか、はたまたサボりたいだけなのか。
どちらとも言えませんが、店内は更に盛り上がります。
「すみませーん、キンカイサンゴのおひたし」
「こっちはビールお代わりね」
「サラマンコンダのかば焼きはまだ!?」
「「は、はい。ただいまワン!」ニャ!」
リシュワンさんとアーニャさんは忙しく働いていました。
てんやわんやになりながら、全身からたくさん汗を掻きながら、死ぬ気で戦場を駆けています。
「た、大変ですね。いつもこの酒場は」
「まあ、繁盛してるのはいいことだからね」
「ラパンさんも早く戻った方がいいのではないですか?」
「だからミュシェルの相手が終わったら戻るから。早く話して」
ラパンさんは私ににじり寄りました。
これは口を割らないとダメそうな空気です。
「えっと、その……」
「大丈夫」
パチン!
ラパンさんは指を鳴らしました。
すると周りの音が一切聞こえなくなり、私とラパンさんの周りを四角い結界が覆います。
「これで誰も私達に気が付けない。今なら毒、いくら吐いても大丈夫よ」
「結界魔法ですか。……分かりました。あの、相談なんですけど」
「いいよ。じゃあ、話して」
私はラパンさんに心の淀みを話しました。
もちろん、私自身答えが分かっていないから口にします。
内容はもちろん、カガヤキさんのことです。
「私の友達が何故か私のことを想って離れてしまったんです。どうしてでしょうか? 私、なにかしてしまったんでしょうか?」
「……待って、どういうこと?」
ラパンさんは一瞬理解に苦しみました。
眉根を寄せ、額に皺を寄せると、改めて食い気味に訊ねます。
「あっ、すみません。では、最初から……」
少し話をボカしながら、私は話そうとしました。
けれどラパンさんの前では嘘は付けません。
そこでカガヤキさんには悪いですが、真実を話しながら、私はラパンさんに答えの分からない問答を訊ねました。
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