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第6話 転移者特権がつまらない件

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「えっと、それでは改めてお聞きしますが、貴方は本当に魔王ではなく、ただの可哀想な人でしょうか?」
「可哀想な人は辞めてほしいな。俺は晃陽、天河晃陽。とは言え、この格好的に宙の魔王、カガヤキ・トライスティルの方が、しっくりくるか?」

 俺は自己紹介をした。
 するとミュシェルは口に手を当て、思い出した様にハッとなる。

「あっ、私も自己紹介がまだでしたね。ご丁寧にありがとうございます。改めまして、私はミュシェル・エスメールと申します」
「エスメールって苗字なんだな。ふーん」

 まあ、感想はない。
 ここが俺の住んでいる世界とは異なる世界なのだから、そんなのは普通だ。
 特に驚くこともせず、淡々と流した。

「それにしてもカガヤキさんは、自分のことを宙の魔王と称しているのですね」
「あっ、もうカガヤキなんだ」
「はい。その方が通りがいいでしょうから」

 何が通りがいいのかさっぱり分からない。
 独特の異文化交流だなと思いつつ、俺も流す。
 例え他の転移者が日本人だとしても、こんなコスプレ野郎を日本人だと認識してもらえるかすら分からないので、実際にこの目で直接見るまでは、カガヤキで通すことにした。その方が、何かと都合もよさそうだ。

「まあ、宙の魔王っていうのは、あくまで設定だからな」
「設定? それにしてはユキムラさん達を、軽くあしらっていたみたいですが?」
「本気で殺し合いなんてする気ないだろ。それに、強さの秘密は俺にも分からない」
「……転移者特権」
「なんって?」

 何だろう、それっぽいキーワードが聞こえた。
 ミュシェルは、転移者特権ギフトと呼ばれる不思議な力を教えてくれた。

「転移者には、特別な力、転移者特権が与えられると聞きます」
「転移者特権ね」
「確か文献によると、転移者によって、与えられる能力は異なるそうですが、その人に近しいものが与えられるとか、なんとか?」
「近しいもの……あー、あああああっ!?」

 ミュシェルの言葉で全部ピンと来た。
 つまりこれはアレだ。
 俺自身、カガヤキになってしまったのは他でもない、俺が配信中に転移したせい。この設定最強魔王の力は俺の転移者特権として与えられた、ってことになる。

「なるほど、全部ピンと来た。全部繋がった。けど、なんか嫌だな」
「嫌なんですか?」

 ミュシェルには分からないだろう。
 なにせ、俺の想像していたものと違う。
 もっと面白い能力かと思えば、面白くもない能力。簡単に言えばアレだ、分かりやすくチートすぎて、やる気が起きなくなる。

(もっと変な能力の方が面白いんだけどな。なんで、なんでもできる系の……まあいいか)

 とは言え、今更言っても交換不可。
 俺は諦めることにして、残念な最強過ぎる力を噛み締める。

「とりあえず俺の能力の秘密は分かった。で、ここからが一番重要なんだけど」
「はい、な、なんですか?」
「なんで警戒するんだよ」

 ミュシェルは命の危機を感じた。
 何故か後退りをすると、俺が襲ってくるとでも思ったらしい。バカだな、そんな淫乱なことする訳ないのに。

「ここは何処で、この世界はなんなの?」
「は、はい? ここは魔王城ですよ。サウサー大陸の外れに位置する辺境です」
「ごめん、分かんないわ」

 ミュシェルは何を当たり前のことを無反応をする。
 もちろん俺に分かる筈もない。
 情報だけが細切れに送られてくると、俺は腕を組んで理解を示す。

「サウサー大陸の魔王城。うん、やっぱ分かんないや」
「なんで分からないですか!」

 逆にミュシェルに怒鳴られる。
 けれどそんなの当たり前だ。
 何の因果もない、ましてや来たくもない、そんなよく分からない場所に転移させられた俺の気持ちになってみろ、絶対に分からなくなる。

 俺は理解は早い方だ。
 もちろん納得は……できない方だ。
 友人A &Bに嫌でも叩きつけられた高校時代の知識を引っ張り出すと、俺は必死に理解をした。
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