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第1話 やる気ない配信者

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「さてと、やるか」

 俺はパソコンを立ち上げ、動画配信サイト、μTubeを開いた。
 キーを打ち込み、ログイン画面からログインすると、マイページにアクセス。
 +をマークを見つけると、配信の準備を始めた。

「はぁー、面倒だけど、給料貰ってる以上、ある程度は稼がないと、アイツにも悪いよな」

 すぐさま別のアプリを開いた。
 無料でダウンロードできる画面キャプチャと配信が可能なソフトだ。
 後はマイクとヘッドセットを繋ぎ、俺は淡々と準備を進めた。

「サービスを設定して、サーバーを接続。アクセスを確認して……とりあえずこれでいいか」

 これである程度の準備は完了。
 今時、配信なんて誰でもやっているので、このくらいは淡々とこなす。
 とは言え、問題はここからだ。
 “コレ”を使う時は、一番嫌気が差す。

「本当は嫌なんだけど……伸びるんだよな」

 ムッとした表情を浮かべてしまった。
当然、眉間に皺も寄る。
俺はあまり好き好んで、コレをやっていないのだ。

「とは言え、お前は俺なんだよな……よし」

 ここはスイッチを切り替える。
 特注で作って貰ったヘッドセットのボタンを二回押し込むと、キャプチャ画面にアバターが表示された。
 今時も今時、何ら珍しくもない、いわゆるVTuberやVライバーと呼ばれる奴だ。

「カガヤキ・トライスティル、キラキラネームすぎだろ」

 俺は俺の名前を呼んだ。
 もちろん本名じゃない。本名をもじってさえいない。
 そこに居るのは、完全に別人。ネットの世界で活躍する配信者、カガヤキ・トライスティラだ。

「いつ見ても……俺だな」

 もちろん、カガヤキのモデルは俺だ。
 俺自身を写真で撮り、友人B衣装を描いて貰い、最後に友人Aがデータに起こした。
 まさに友達による合作なのだが……

「なーんで、俺がやることになったのか」

 未だに納得できていなかった。
 何故なら、VTuber(Virtual・μTuber)をやろうと言いだしたのは俺じゃない。
 友人Aのノリを友人Bが受取って、俺も巻き込まれてしまっただけだ。

「って、ごねても仕方ないか。行くぞ、カガヤキ」

 俺は頬をパンと叩いた。
 良い音がすると、頭の中でスイッチが切り替わる……イメージで気持ちを装った。

「それじゃあ配信開始。後は告知して……これでなんにん来てくれるか。嘘だろ!?」

 俺は突然のゲリラ配信だったが、まだ始まってもいないのに、数百人も観に来てくれていた。
 深夜れい時前なのにと思いつつ、画面端で俺と同じ顔になる分身、カガヤキの姿をジッと見つめる。
 その姿は異様で、全身黒尽くめ。頭からは角をトッピングしたヘッドホンしているが、一言で例えると、まさしく魔王。

「やっぱ、似合わないな」

 俺は自分のアバターについつい容赦のないツッコミを入れた。
 するとカガヤキもトホホな顔をする。
 完全に一心同体な俺=晃陽こうようとカガヤキは、突然のゲリラ配信で一万人を迎えることになった。
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