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80話 謎のお返しと一つの終わり
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ウチオニ村とソトオニ村の騒動は、こうして幕を閉じた。
これまでの鬼による被害は、すぐに冒険者ギルドにも知れ渡り、その結果新聞社にもそのことはすぐに知れた。
けれど本人のことは知れなかった。
それは拒否したからだった。ただ一つ、師匠たちにだけ通じるサインを残して。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
お店は今日も繁盛していた。
テーブルにもカウンターにも、客がひっきりなしにやって来る。それからウエイターの僕とリーファさんに幾度も声をかけ続けた。
「すみませーん、カレーライス二つ。大盛りで」
「カレーライス大盛りですね。少々お待ちください」
「オレンジジュースのおかわりお願いできますか?」
「少々お待ちください」
いつもよりも客足が尽きない。
僕とリーファさんは久々に、気持ちのいい汗をかいていた。そして、ルビーさんの笑顔と、疲労感を訴える。
「はぁはぁ。いつもより、お客さんが多い」
「もう一人ほしいですね」
「うん。これじゃあ死んじゃうよ」
僕でも音を上げる。こんなに疲れるとなると、冒険者活動の比じゃない。
額からの汗が尋常じゃなく、僕とリーファさんは少し客足が減ったのを見て、すこし休むことにした。
「うわぁ、風が気持ちいい!」
「そうですね。いい風です」
僕は宿の屋根に登った。
吹き抜ける町の風が、優しく頬を撫でる。全身を駆け巡る優しい風の音に心奪われ、僕はエプロンを外した。
不意にシャツのボタンを一つ外すと、遠い空を見る。
「いい空」
「そうですね」
颯爽と、後ろにいたのはリーファさん。
後ろで手を組み、風の魔法で僕の元までひとっ飛び。
そんなリーファさんは僕の隣に立つと、不意に思い出したことがあったのか、口にし出した。それはこの間の、帰り道で貰った変のお土産の話だ。
「そう言えば、先日いただいたお面のことは覚えていますか?」
「お面? ああ、魔除けの面ね。覚えてるよ」
僕たちが貰ったのは、龍のお面だった。
白を基調としたもので、赤や黄色など鮮やかな色彩を放つ模様を持っていた。ありきたりなものじゃない、伝統品みたいだったが、リーファさんはそのお面を見て、不気味に思っていた。何せ、龍のお面なんて、不気味で仕方ない。
「私、あのお面が苦手みたいで」
「そう? 僕は好きだよ。あのお面」
リーファさんが顔を顰める。
しかし僕はまだ続けた。
「龍のお面。いかにも神聖そうだよね。鬼を祓う、魔除けの面」
「でも、気味が悪くて」
「そうかな? 僕は龍とか好きだよ」
「そうなんですか?」
「うん。だって、僕は知ってるもん」
可愛らしく、笑顔を見せた。
リーファさんは困惑していたけれど、僕は龍が嫌いじゃない。むしろ光栄なそして神聖視してしまうほど、大きくて偉大な存在だった。やっぱり師匠のことだった。
と、そんな中。僕とリーファさんは風を待っていた。
だけどこの町にも芽生えるものがある。新しい風が吹いたんだ。
「ここが、冒険者の町。マルシアね。いいところじゃん」
何気なく現れた一つの影。
黒い服にフードで顔を覆う、少女がいたことを、僕は気づくことはなかった。
今日もこの町は新しい風が吹く。
それは希望か絶望か。
それを決めるのは、誰だってない。自分でしかないのだから。
to be continued
これまでの鬼による被害は、すぐに冒険者ギルドにも知れ渡り、その結果新聞社にもそのことはすぐに知れた。
けれど本人のことは知れなかった。
それは拒否したからだった。ただ一つ、師匠たちにだけ通じるサインを残して。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
お店は今日も繁盛していた。
テーブルにもカウンターにも、客がひっきりなしにやって来る。それからウエイターの僕とリーファさんに幾度も声をかけ続けた。
「すみませーん、カレーライス二つ。大盛りで」
「カレーライス大盛りですね。少々お待ちください」
「オレンジジュースのおかわりお願いできますか?」
「少々お待ちください」
いつもよりも客足が尽きない。
僕とリーファさんは久々に、気持ちのいい汗をかいていた。そして、ルビーさんの笑顔と、疲労感を訴える。
「はぁはぁ。いつもより、お客さんが多い」
「もう一人ほしいですね」
「うん。これじゃあ死んじゃうよ」
僕でも音を上げる。こんなに疲れるとなると、冒険者活動の比じゃない。
額からの汗が尋常じゃなく、僕とリーファさんは少し客足が減ったのを見て、すこし休むことにした。
「うわぁ、風が気持ちいい!」
「そうですね。いい風です」
僕は宿の屋根に登った。
吹き抜ける町の風が、優しく頬を撫でる。全身を駆け巡る優しい風の音に心奪われ、僕はエプロンを外した。
不意にシャツのボタンを一つ外すと、遠い空を見る。
「いい空」
「そうですね」
颯爽と、後ろにいたのはリーファさん。
後ろで手を組み、風の魔法で僕の元までひとっ飛び。
そんなリーファさんは僕の隣に立つと、不意に思い出したことがあったのか、口にし出した。それはこの間の、帰り道で貰った変のお土産の話だ。
「そう言えば、先日いただいたお面のことは覚えていますか?」
「お面? ああ、魔除けの面ね。覚えてるよ」
僕たちが貰ったのは、龍のお面だった。
白を基調としたもので、赤や黄色など鮮やかな色彩を放つ模様を持っていた。ありきたりなものじゃない、伝統品みたいだったが、リーファさんはそのお面を見て、不気味に思っていた。何せ、龍のお面なんて、不気味で仕方ない。
「私、あのお面が苦手みたいで」
「そう? 僕は好きだよ。あのお面」
リーファさんが顔を顰める。
しかし僕はまだ続けた。
「龍のお面。いかにも神聖そうだよね。鬼を祓う、魔除けの面」
「でも、気味が悪くて」
「そうかな? 僕は龍とか好きだよ」
「そうなんですか?」
「うん。だって、僕は知ってるもん」
可愛らしく、笑顔を見せた。
リーファさんは困惑していたけれど、僕は龍が嫌いじゃない。むしろ光栄なそして神聖視してしまうほど、大きくて偉大な存在だった。やっぱり師匠のことだった。
と、そんな中。僕とリーファさんは風を待っていた。
だけどこの町にも芽生えるものがある。新しい風が吹いたんだ。
「ここが、冒険者の町。マルシアね。いいところじゃん」
何気なく現れた一つの影。
黒い服にフードで顔を覆う、少女がいたことを、僕は気づくことはなかった。
今日もこの町は新しい風が吹く。
それは希望か絶望か。
それを決めるのは、誰だってない。自分でしかないのだから。
to be continued
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