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閑話 美味い酒
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そろそろ夏です。
そうめんが恋しくなる頃になりました。そんな中、久々に出かけていたホズキがようやく戻ってきました。
頼んでいたものは買ってきてくれたでしょうか?
少し不安です。
そんな私の心配をよそに、薪割りに満足げな笑みを浮かべ、汗を流すファイ。
額の汗を軽く拭い、少し熱いのか、もふもふの耳と尻尾を掻きむしりました。
「ファイ、あまり爪を立てないでください。怪我をしますよ」
「でも熱いんだよ。私獣人だから」
「それはそうですが、私だって角が伸びて散々なんですよ」
「何言ってるの。本当はその尻尾でしょ?」
ファイも私も、それからホズキも、全員何かしらの特徴を持っていました。
そんな人間とは異なるものを持っていますが、普段は仕舞っています。魔法です。
「それより、ホズキは遅いですね」
「うーん。どこかで寄り道でもしてるんじゃないのー?」
「貴女じゃないんですよ。無口なホズキが、人前に出るなんてことありませんよ」
私はそんな話をしていました。
ファイも納得して首を縦に振りますが、視線を横切って、ホズキが帰ってきます。
「お帰りなさい、ホズキ」
「ただいま」
相変わらず無口です。
喋る言の数も、少なくてコミュニケーションが難しいと思うかもしれませんが、慣れればわかります。
そこで私が気になったのは、ホズキの大荷物。
頼んでいたものでしょうか? いえ、ひょうたんが吊るされていますね。
「ホズキ、これは?」
「酒。かなりの上物」
お酒でしたか。
それはそれはホズキの好物ですね。
とは言っても、嗜む程度なので、普段は酔ったりしません。酔ったりしたら、人の迷惑になりますからね。精進しなければならない。のですが。
「くんくん。あれ? ホズキこのお酒って、ヒノワのヒノワ酒だよね?」
「うん。米から作った上物だと言った」
それはかなり珍しい。
この土地でも、様々なものは取れますが、お酒となると厳しい。
ですが一応お酒が無限に湧く泉があります。
そこで汲んだものとは訳が違います。何せ、ヒノワの最高級蒸留酒なのですから。
「早速飲んでみましょうか?」
「わかった」
「やったぁー!」
ホズキはひょうたんの蓋を開けた。
コルクで蓋をされていたが、それが取られると、中で液体の音がする。
心地の良い音だ。
盃の中に、透明な液体が注がれ、酒の酔わせる匂いと、甘い果実の香りがした。いい酒は果物のような匂いがする。
「うわぁ! このお酒、美味しい」
「それはそうですよ。なんたって、最高級? これは、もしかして!」
「そう、一酒造」
「やっぱり!」
私は立ち上がった。
ホズキ、貴女凄いことをしましたね。そんなこととは露知らず、ファイは首を傾げていますが、私はホズキの優雅に盃を口に充てる姿に見惚れていました。
「あの一酒造でしたか」
「ねぇねぇ、一酒造って?」
「ヒノワで最も古く、最も酒造りが上手いとされる酒造ですよ。なかなかお酒を買うこともできないところです」
「そうなんだぁー!」
「それにしてもホズキ、どうしてこんなお酒を?」
「知り合いだからだ」
一人お酒を飲むホズキ。顔色は良好。
嗜むお酒の色を見て、美味いと言っていました。
そうめんが恋しくなる頃になりました。そんな中、久々に出かけていたホズキがようやく戻ってきました。
頼んでいたものは買ってきてくれたでしょうか?
少し不安です。
そんな私の心配をよそに、薪割りに満足げな笑みを浮かべ、汗を流すファイ。
額の汗を軽く拭い、少し熱いのか、もふもふの耳と尻尾を掻きむしりました。
「ファイ、あまり爪を立てないでください。怪我をしますよ」
「でも熱いんだよ。私獣人だから」
「それはそうですが、私だって角が伸びて散々なんですよ」
「何言ってるの。本当はその尻尾でしょ?」
ファイも私も、それからホズキも、全員何かしらの特徴を持っていました。
そんな人間とは異なるものを持っていますが、普段は仕舞っています。魔法です。
「それより、ホズキは遅いですね」
「うーん。どこかで寄り道でもしてるんじゃないのー?」
「貴女じゃないんですよ。無口なホズキが、人前に出るなんてことありませんよ」
私はそんな話をしていました。
ファイも納得して首を縦に振りますが、視線を横切って、ホズキが帰ってきます。
「お帰りなさい、ホズキ」
「ただいま」
相変わらず無口です。
喋る言の数も、少なくてコミュニケーションが難しいと思うかもしれませんが、慣れればわかります。
そこで私が気になったのは、ホズキの大荷物。
頼んでいたものでしょうか? いえ、ひょうたんが吊るされていますね。
「ホズキ、これは?」
「酒。かなりの上物」
お酒でしたか。
それはそれはホズキの好物ですね。
とは言っても、嗜む程度なので、普段は酔ったりしません。酔ったりしたら、人の迷惑になりますからね。精進しなければならない。のですが。
「くんくん。あれ? ホズキこのお酒って、ヒノワのヒノワ酒だよね?」
「うん。米から作った上物だと言った」
それはかなり珍しい。
この土地でも、様々なものは取れますが、お酒となると厳しい。
ですが一応お酒が無限に湧く泉があります。
そこで汲んだものとは訳が違います。何せ、ヒノワの最高級蒸留酒なのですから。
「早速飲んでみましょうか?」
「わかった」
「やったぁー!」
ホズキはひょうたんの蓋を開けた。
コルクで蓋をされていたが、それが取られると、中で液体の音がする。
心地の良い音だ。
盃の中に、透明な液体が注がれ、酒の酔わせる匂いと、甘い果実の香りがした。いい酒は果物のような匂いがする。
「うわぁ! このお酒、美味しい」
「それはそうですよ。なんたって、最高級? これは、もしかして!」
「そう、一酒造」
「やっぱり!」
私は立ち上がった。
ホズキ、貴女凄いことをしましたね。そんなこととは露知らず、ファイは首を傾げていますが、私はホズキの優雅に盃を口に充てる姿に見惚れていました。
「あの一酒造でしたか」
「ねぇねぇ、一酒造って?」
「ヒノワで最も古く、最も酒造りが上手いとされる酒造ですよ。なかなかお酒を買うこともできないところです」
「そうなんだぁー!」
「それにしてもホズキ、どうしてこんなお酒を?」
「知り合いだからだ」
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嗜むお酒の色を見て、美味いと言っていました。
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