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29話 盗賊を成敗①

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 僕とリーファさんは、無事に馬車まで辿り着いた。

 そこにいたのは、悲鳴を上げたスーツ姿の男。それから対峙するように、立つ男たちが三人。
 手には鋭い短剣を握り、赤く染まっていた。

 左右を見れば、護衛と思しき冒険者が倒れている。
 それに男の人も、頬から傷を負っていていて、血が滲んでいた。

「だ、誰だお前ら!」
「通りすがりの冒険者。それ以上でも、それ以下でもないよ」

 僕は剣を抜くと、構える。
 無防備な体勢に見えて、実は気を張っている。
 無自覚ではない。そうなるように、からだ。

「大丈夫ですか?」
「あ、ああ。私よりも、彼を」

 男の人は、倒れている護衛の冒険者の方を診てほしいと懇願。
 それを受けて、リーファさんも了承。
 首を縦に振った。

「リーファさん、頼んだよ」
「任せてください。回復は、エルフにとっての、十八番おはこです」

 リーファさんの顔は、キリッとしていた。
 何って頼もしいんだ。僕は誇らしくなって、集中することにした。
 こっちの相手は怪我を負った、盗賊たち三人。
 見たところ、雇われだろう。

「君たちこそ、なに?」
「う、うるせぇ。ガキが黙ってろ」
「ガキか? まあ、そう見えるよね」
「な、なんだ?」

 僕はイラついていない。
 だけど、こう言うのを見ると、ふとイラッとするんだよね。

 僕の中に流れる血がそうさせるのか、。そんな気持ちを押し殺して、僕は

「大丈夫ですよ。僕は、そうそう殺したりしませんから。ですけど」
「な、なんなんだ。何で、こんなに……」

 盗賊たちは身構えた。
 僕の内側から、轟々と煮えたぎる殺気に恐怖しているんだ。
 これなら、殺気だけ当て続ければ、自然と泡を吹いて、気絶するだろう。

「如何するの? もしかして、僕とやる気? 僕はいいよ」
「じょ、上等だ!」

 おっ、これは予想外。
 じゃあ僕も少しだけ本気になることにしよう。

 だけど手は抜いておく。
 体と心に制限をかけて、

 よし、まだ大丈夫。
 目の色は黒い。目の奥も黒い。

 僕は剣を緩やかに構えると、男の一人を睨んだ。
 すると盗賊の男は、短剣を構えて僕に突っ込んでくると、鋭い一撃を食らわそうとした。

「死ねっ!」
「あはは。僕は死にたくないよ」

 キーン!ーー

 剣と剣がかち合う。
 鋭くて甲高い音が、空気を振動させて、震えた。
 その音は次第に激しくなり、後は力と力の押し合い。拮抗きっこうしていた。

「い、一体なにが起こっているんだね」
「こんなに強かったんですね、天月さん」

 後ろからふと聞こえてきた声。
 なよなよしていたけれど、しっかり僕を見ていた。それが如何にも不穏で、だけど温もりもあった。
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