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13話 雨の洞窟に辿り着き

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 雨は未だに止みやしない。
 それどころか、さっきよりも強くなる一方で、視界は最悪。
 だけどこんなところで使

 僕は血の跡と薄っら残る臭いを頼りに、走っていた。

 だけどさっきから延々と降り頻る雨のせいで、どんどんと痕跡が薄くなる。
 そのせいで痕跡を探すので一苦労。
 精神をすり減らす。

「えーっと、次はこっち」

 だけど僕はまるで動じない。
 こういう細かい作業は嫌いじゃないし、繊細なのはいいことだ。

 気がつけばかなり遠くまで来ていた。
 町からは大体十五キロ程。
 近くには、いつも狩場にしている森がある。

「あそこにあの森があるから、こっちじゃない?」

 いつもの森の端っこが、薄らとちょっとだけ見えていた。
 鬱蒼とした深緑の葉。
 遠くで雨も降っているのに、感覚的に覚えている。

 長らく使ってきた狩場だからか、記憶にも新しい。

 そのおかげで僕は森を目印にした。
 森を中心にして、痕跡を辿る。
 すると、何の偶然か、森に続いているではないか。しかもこれ、結構新しい。

「足跡も近くにある。これは、オークのかな?」

 大きな人間ではない足跡がいくつも並んで、しかも森の方。
 この方向に進んだとして、森に行ったのは間違いないが、一体何故。

「でも血の跡も続いてるから、こっちに行ってみよっか」

 僕は雨でずぶ濡れの体を引きせよ、いつもの狩場の森を目指した。
 だけど今日はちょっと違う。
 森の端っこに向けて、泥を跳ねさせた。

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 いつもの森にやってきた。
 特に名前はない。

 夜も遅くでかなり暗く、灯りがないとよく見えない。
 僕は雨の中で火を使えないので、仕方なく魔法を使う。

「《ライト》」

 光の初級魔法。
 小ちゃな光の球が浮かび上がり、暗闇の中を照らし出す。

「うわぁ。夜来るとこんな感じなんだ。結構危ないね」

 夜の景色は昼とはまるで違う。
 点々と生えた木たちが、不気味だった。

 おどろおどろしいが、僕は気にしない。
 だって師匠たちと一緒に夜の森の中には何度も入ったことがある。
 あの時は本気で死にかけた。

「死にかけること多かったけど、そのおかげか全然怖くないや。よーし、早く血の跡を追って……おっ!?」

 すると血の跡が滴っていた。
 かなり濃い。最近のものだ。
 しかもこれ、オークの血だよ。
 つまり向こうも怪我をしているわけだ。

「話し合いで解決は無理だろうから、最悪に備えておこう」

 森の中を進み、しばらく行くと、崖沿いに小ちゃな洞窟がある。

 しかもこの中に血が続いていた。
 かなり広い洞窟のようで、奥の方から灯りが漏れる。

「こんな洞窟あったんだ。知らなかった……」

 僕は洞窟にこっそり近づくと、警戒しながら中を覗き込む。
 見たところ罠はない。
 僕は意を決して飛び込んだが、その間も気配は常に消すようにしていた。
 
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