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11話 何があったって話②
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僕は話を聞くことにした。
少女はゆっくりとことの真相を話し出す。
「私は旅人です。冒険者をしながらお金を稼ぎ、稼いだお金であちこちを回っていました」
「君も冒険者だったんだ。じゃあもしかして、クエスト中に?」
「うん」
小さく頷き返す。
確かに冒険者はトラブルがつきもの。
たとえクエスト中であれ、時として危険な目にも遭う。
最悪の場合、命の保証はない。
「私はある商人の護衛を複数の冒険者や騎士と一緒にこなしていました。その道中です。突然雨が降り始め、奴らは現れた」
「奴らって?」
少女の表情が固まり、ピクリとも動かなくなる。
それでも、唇をキュッと結んで、話したくないらしい。
「もしかして、人間?」
「違います。私たちを襲ったのは、魔物の群れです」
魔物の群れ。
確かにそのパターンはよくある。
普通に最初に思いついたが、そんなベタなことはないと思い、除外していた。
だけど答えは魔物らしく、けれど相手はなんだ。
群れを作る雨の日にも関係なく襲ってくる魔物。
うーん、候補が多すぎる。
「オークです。私達はオークの群れに襲われたんです」
「オークが!?」
「はい。オークです」
僕は驚いてしまった。
だけど少女の言っていることは、真実らしく、奥歯を強く噛み締めた。
(オーク……でもなんでオーク?)
僕の中に疑問が残る。
確かにオークは人を襲うし、その奇怪な見た目のせいでゴブリンなどと同種として扱われ、特に女性に酷いことをすると言われている。
だけど真実は違う。
たとえゴブリンであろうと、それはあくまで個体差の問題で、そういう実例があるだけ。
ゴブリンもオークも確かに人間を襲う魔物ではあるが、必ずじゃない。
それに行動原理がおかしい。
なぜって? そんなのオークの目的は一つしかない。
「もしかして食料を狙った?」
「それは分かりません。でも、私以外の冒険者と騎士は皆殺され、私も命からがら逃げてきました。冒険者として、依頼主を放っておくなんて、失格ですよね」
「そんなことないよ」
僕は少女の手を強く握った。
すると不安そうな顔をして、僕の顔を見る。
「冒険者が危険と判断したり、依頼主が勝手な行動や、クエストに関係のない行動で命を落としたりしたら、それは全部無効。今回は突然のことで、話的に依頼主はもう死んじゃったんでしょ? だったら気に病む必要ないよ」
「でも……」
「でも、じゃないよ。そういうこともあるって話。とにかく、運が悪かったってことで受け入れるしかないよ」
僕の言っていることは、結局自分勝手なことだった。
だけど、仮に僕が遭遇したらどうなるかな。
状況を見て撤退?
いや、それも一つの可能性だけど、血反吐を吐いてでも追走するかも。
僕はそんな人間紛いだと、気づいていた。
だからこそ、今心の中はスッとしていて、それでいて胸糞悪い気分だった。
「とにかく君は悪くないよ。だからもっとやるべきことに目を向ける」
「やるべきこと……鞘を取り返すこと!」
「それもそうだけど、もっと大事なことがあるでしょ」
僕は少女のおでこを押して、そのまま横にした。
少女の体はピクリとも動かなくなる。
「えっ!?」
「疲れてるんでしょ。酷く雨に打たれたんだ。少しは体を気遣って、休めたほうがいいよ」
「でも、もしかしたらまだ生きている方が」
「いない」
僕は断言した。
そうでも言わないと聞きやしない。
「いないって……そんな」
「とにかく君は安静にすること。いいね」
僕はそう言いつけ、部屋を出た。
最後まで部屋には重苦しくて、悲しい空気が充満していた。
僕は一瞬にして魔力を防御のために使い、ドアノブに手をかける。
チラッと後ろを振り返ると、横たわったまま涙を浮かべる少女の顔があったのが、心の奥底にびったりとへばりついてしまっていた。
少女はゆっくりとことの真相を話し出す。
「私は旅人です。冒険者をしながらお金を稼ぎ、稼いだお金であちこちを回っていました」
「君も冒険者だったんだ。じゃあもしかして、クエスト中に?」
「うん」
小さく頷き返す。
確かに冒険者はトラブルがつきもの。
たとえクエスト中であれ、時として危険な目にも遭う。
最悪の場合、命の保証はない。
「私はある商人の護衛を複数の冒険者や騎士と一緒にこなしていました。その道中です。突然雨が降り始め、奴らは現れた」
「奴らって?」
少女の表情が固まり、ピクリとも動かなくなる。
それでも、唇をキュッと結んで、話したくないらしい。
「もしかして、人間?」
「違います。私たちを襲ったのは、魔物の群れです」
魔物の群れ。
確かにそのパターンはよくある。
普通に最初に思いついたが、そんなベタなことはないと思い、除外していた。
だけど答えは魔物らしく、けれど相手はなんだ。
群れを作る雨の日にも関係なく襲ってくる魔物。
うーん、候補が多すぎる。
「オークです。私達はオークの群れに襲われたんです」
「オークが!?」
「はい。オークです」
僕は驚いてしまった。
だけど少女の言っていることは、真実らしく、奥歯を強く噛み締めた。
(オーク……でもなんでオーク?)
僕の中に疑問が残る。
確かにオークは人を襲うし、その奇怪な見た目のせいでゴブリンなどと同種として扱われ、特に女性に酷いことをすると言われている。
だけど真実は違う。
たとえゴブリンであろうと、それはあくまで個体差の問題で、そういう実例があるだけ。
ゴブリンもオークも確かに人間を襲う魔物ではあるが、必ずじゃない。
それに行動原理がおかしい。
なぜって? そんなのオークの目的は一つしかない。
「もしかして食料を狙った?」
「それは分かりません。でも、私以外の冒険者と騎士は皆殺され、私も命からがら逃げてきました。冒険者として、依頼主を放っておくなんて、失格ですよね」
「そんなことないよ」
僕は少女の手を強く握った。
すると不安そうな顔をして、僕の顔を見る。
「冒険者が危険と判断したり、依頼主が勝手な行動や、クエストに関係のない行動で命を落としたりしたら、それは全部無効。今回は突然のことで、話的に依頼主はもう死んじゃったんでしょ? だったら気に病む必要ないよ」
「でも……」
「でも、じゃないよ。そういうこともあるって話。とにかく、運が悪かったってことで受け入れるしかないよ」
僕の言っていることは、結局自分勝手なことだった。
だけど、仮に僕が遭遇したらどうなるかな。
状況を見て撤退?
いや、それも一つの可能性だけど、血反吐を吐いてでも追走するかも。
僕はそんな人間紛いだと、気づいていた。
だからこそ、今心の中はスッとしていて、それでいて胸糞悪い気分だった。
「とにかく君は悪くないよ。だからもっとやるべきことに目を向ける」
「やるべきこと……鞘を取り返すこと!」
「それもそうだけど、もっと大事なことがあるでしょ」
僕は少女のおでこを押して、そのまま横にした。
少女の体はピクリとも動かなくなる。
「えっ!?」
「疲れてるんでしょ。酷く雨に打たれたんだ。少しは体を気遣って、休めたほうがいいよ」
「でも、もしかしたらまだ生きている方が」
「いない」
僕は断言した。
そうでも言わないと聞きやしない。
「いないって……そんな」
「とにかく君は安静にすること。いいね」
僕はそう言いつけ、部屋を出た。
最後まで部屋には重苦しくて、悲しい空気が充満していた。
僕は一瞬にして魔力を防御のために使い、ドアノブに手をかける。
チラッと後ろを振り返ると、横たわったまま涙を浮かべる少女の顔があったのが、心の奥底にびったりとへばりついてしまっていた。
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