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8話 薬を作ります②

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 まずは薬の材料の説明から。

 サラマンハーブ。
 炎蜥蜴でお馴染みのサラマンダーに似た赤いハーブ。
 熱処理に優れていて、食べれば体内の毒素を余分な脂肪分ごと、燃やし尽くす。

 すやすや草。
 ミントみたいな色をした、小さい花の葉っぱ。
 匂いを嗅ぐだけで、気持ちが安らぐ。
 高い睡眠効果を持っていて、今回は香り付け。

 黄金ニンジン。
 今回の肝。黄金色に輝く立派なニンジン。
 Sランク素材で、一口食べればたちまち肌は治り、傷も一発で塞ぐ。
 ゴブリンやオークに辱められた人の体を元通りに戻せるほどだそう。

 それから水だ。
 これは山奥の湧き水で、毎年冬になると降り積もるスノーパウンドと呼ばれる雪が溶けたもの。

 かなりレアで、自力で汲んできた。
 一応Aランク素材で、一本辺り千二百ギルはくだらない。

「ほとんど師匠たちの仕送りだけど、貯めてきた甲斐があった」

 こういう時に役に立つ。
 全部高級品ばかりで、普通にはとても買えない。

 冒険者なら自力で採ってこれるから、まだなんとかなっている。
 お店で売れば、黄金ニンジン一本で数年は食べていけるだろう。

 だけどここはありがたく使う。
 使わずに腐って捨てたら元も子もない。
 それにどんなに高級な素材でも、使い方を間違えれば全部無駄に終わる。

 そこで僕はスノーパウンドの雪解け水を百八十度の高温にしたんだ。
 さてと、まずはサラマンハーブを砕きますか。

「乳棒で細かく砕いて。細かく、細かく。均一になるまで、細かく細かく。細かく細かく細かく細かく。少しでも大きいのがあると、気になるから、細かく細かく細かく細かく……」

 念仏のように唱え続けた。
 この方が集中できる。

「よし。すやすや草は香り付けだから少し千切って……黄金ニンジンはすり潰す……」

 細かく、黄金ニンジンをすり潰した。
 大根おろし器ならぬ、ニンジンおろし器で、細かくした。

 すると乳鉢の中には、これなんなのか? 首を傾げてしまうぐらいに細かく、結局何かわからなくなったカスが溜まっていた。

「これぐらいすり潰せばいいかな。残りは、この水を加えてと……」

 僕はまだ熱くて手で触れない瓶をタオルで巻いたまま持ち上げ、瓶の蓋を開ける。

 中で沸騰した水。
 空気に触れて、熱せられた瓶に入った亀裂が広がった。

 パリィーン!ーー

 瓶が砕けた。
 破片が入らないように気をつけながら、中に入っていたお湯を満遍なく流し、僕は残りをかき混ぜる。

「後は、全力でかき混ぜる!」

 均等に均一に、一定のペースで乳鉢の中のものを、乳棒を使って混ぜ合わせる。
 最初は沈殿していたけど、だんだん細かくなり、お湯に溶ける。

 そのタイミングを見計らい、僕は別で要していたポットの中に注ぎ込んだ。
 二度お湯を加える。
 そうすることで、ようやく人が飲めるようになる。

「これってそのまま飲むと激薬なんだよね。一回死にかけたもん」

 昔リュウラン師匠の言いつけを破ったことがあった。
 あの時は、本当に死にかけた。
 なかったら、本当に死んでたかもしれない。

 悪寒がした。
 全身が身震いに包まれて、鳥肌が立つと、頭を左右に振ってから。ティーポットとカップを持って部屋を出た。

 まあなんとかなったでしょ。
 今回こそはきっと上手くいった。
 信じれば、大丈夫。自分を強く言い聞かせて、を運んだ。
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