生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ユウ

文字の大きさ
上 下
4 / 86

4話 心配されてしまった

しおりを挟む
 町に戻ってきた僕。
 すると街行く人たちの冷ややかな視線が、痛かった。

「おいおい天月。大丈夫かよ。頭から血が出てるぞ!」
「あっ、魚屋さん。大丈夫です、これ魔物の血ですから」
「そ、そうか? 洗った方がいいぞ」
「冒険者ギルドで討伐報告をしたら、洗います。あっ、見てくださいよこれ!」

 僕はさっき捕まえた魚を見せた。
 袋の中には生きたままの川魚が今も泳いでいる。
 三匹の魚たちは、丸々太って美味しそうだった。

「ほぇー、美味そうなオイカワじゃねえか!」
「美味しいですよね。魔物を倒した後に通った川で偶然見かけたんですよ」

 ちなみに素手で魚を捕った。
 だって仕方ない。
 釣り竿なんて持って来てないから。

「これ、今日の晩御飯にします」
「そうか。そうだ、またいい魚が入ったらすぐに教えてやるからな!」
「助かります」
「いいってことよ。それじゃあ気をつけてな!」

 魚屋さんは、天月に手を振った。
 天月も手を振りかえすと、冒険者ギルドを目指してまっすぐ歩いていた。

 天月が住むこの町は、〈マルシア〉と言って、王都からそれなりに離れた場所にあった。

 それでもこの町はとても賑わっている。
 近くの村に住む人たちは、たいていこの町に来て買い物をする。
 それに物流も発達している上に、仕事にも困らない。
 何せこの辺りは魔物が多くて、〈マルシア〉は凶悪な魔物と戦って収入を得る、いわゆる冒険者が比較的多い町だった。

 それだけじゃない。
 いろいろな種族の人が暮らしていて、とても賑やか。
 冒険者の間でも仲のいい人は多いし、僕のことを慕ってくれる人(優しくしてくれる人)もいる。

 だからとても暮らしやすいし、ゆるりとした生活を送るには、もってこいの町だった。

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 冒険者ギルドは今日も賑わっていた。
 しかし僕が中に入ると、皆んなの視線が一手に集中してしまう。

 だけどそんなのわかっていた。
 だってこんな子が来たら、びっくりするもんね。

「どうしたんですか、天月君!」
「あっ、エレナさん。ホブゴブリン、無事に討伐しましたよ」

 僕は率直にそう言った。
 すると、エレナさんは僕の頬を押さえ込んだ。
 どうしたんだろ?

「それは後でいいですから。とにかく頭の血。大丈夫ですか?」
「はい。これ、僕のじゃなくてホブゴブリンの血ですから」

 そんなに僕の血に見えるのかな?
 魔物の血ぐらい、人間の血の匂いと違うからすぐにわかるのに。

「それならよかったですけど。まさか、何か酷い目に遭ったんじゃないかと思って心配しちゃいましたよ」
「子供じゃないから大丈夫です。それに僕、こう見えてCランク冒険者ですよ?」
「それはそれです。いくらランクが高い冒険者でも、相手によっては油断して命を落とすこともあるんです。絶対に油断しないでくださいね! 怪我もですよ!」
「は、はい」

 何だか心配させてしまったみたいだ。
 流石に心がしゅんとなって、居た堪れない。

「次からは気を付けてくださいね」
「は、はい」

 エレナさん、僕のことを子供だと勘違いしている。
 確かに僕の身長は百五十しかない。だけど、これでも今年で十七になる。

「エレナさん、何歳でしたっけ?」
「えっ!? えーっと、今年で十八です」
「そうですか」

 僕とあんまり変わらないじゃないか。
 何だか、子供扱いされていて甘やかされているみたいで、気分が悪い。
 だけどこれを利用して僕はこれまで戦って来たんだ。
 自分の持ち味は、活かすべきだよね。

「こほん。それでは、討伐完了の報酬をお渡ししますね」
「すみません。僕も、もっと稼げたらいいんですけど」
「何言っているんですか。天月君、私の一ヶ月の給料より稼いでいるじゃないですか」
「そうなんですか。知りませんでした」

 でも少ないと思っちゃう。
 それは師匠たちの影響だ。
 三人の師匠は、時々冒険者として今も活動を続けている。
 いつか、あんな風になりたいなと夢を見てしまう僕だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...