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4話 心配されてしまった
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町に戻ってきた僕。
すると街行く人たちの冷ややかな視線が、痛かった。
「おいおい天月。大丈夫かよ。頭から血が出てるぞ!」
「あっ、魚屋さん。大丈夫です、これ魔物の血ですから」
「そ、そうか? 洗った方がいいぞ」
「冒険者ギルドで討伐報告をしたら、洗います。あっ、見てくださいよこれ!」
僕はさっき捕まえた魚を見せた。
袋の中には生きたままの川魚が今も泳いでいる。
三匹の魚たちは、丸々太って美味しそうだった。
「ほぇー、美味そうなオイカワじゃねえか!」
「美味しいですよね。魔物を倒した後に通った川で偶然見かけたんですよ」
ちなみに素手で魚を捕った。
だって仕方ない。
釣り竿なんて持って来てないから。
「これ、今日の晩御飯にします」
「そうか。そうだ、またいい魚が入ったらすぐに教えてやるからな!」
「助かります」
「いいってことよ。それじゃあ気をつけてな!」
魚屋さんは、天月に手を振った。
天月も手を振りかえすと、冒険者ギルドを目指してまっすぐ歩いていた。
天月が住むこの町は、〈マルシア〉と言って、王都からそれなりに離れた場所にあった。
それでもこの町はとても賑わっている。
近くの村に住む人たちは、たいていこの町に来て買い物をする。
それに物流も発達している上に、仕事にも困らない。
何せこの辺りは魔物が多くて、〈マルシア〉は凶悪な魔物と戦って収入を得る、いわゆる冒険者が比較的多い町だった。
それだけじゃない。
いろいろな種族の人が暮らしていて、とても賑やか。
冒険者の間でも仲のいい人は多いし、僕のことを慕ってくれる人(優しくしてくれる人)もいる。
だからとても暮らしやすいし、ゆるりとした生活を送るには、もってこいの町だった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
冒険者ギルドは今日も賑わっていた。
しかし僕が中に入ると、皆んなの視線が一手に集中してしまう。
だけどそんなのわかっていた。
だってこんな子が来たら、びっくりするもんね。
「どうしたんですか、天月君!」
「あっ、エレナさん。ホブゴブリン、無事に討伐しましたよ」
僕は率直にそう言った。
すると、エレナさんは僕の頬を押さえ込んだ。
どうしたんだろ?
「それは後でいいですから。とにかく頭の血。大丈夫ですか?」
「はい。これ、僕のじゃなくてホブゴブリンの血ですから」
そんなに僕の血に見えるのかな?
魔物の血ぐらい、人間の血の匂いと違うからすぐにわかるのに。
「それならよかったですけど。まさか、何か酷い目に遭ったんじゃないかと思って心配しちゃいましたよ」
「子供じゃないから大丈夫です。それに僕、こう見えてCランク冒険者ですよ?」
「それはそれです。いくらランクが高い冒険者でも、相手によっては油断して命を落とすこともあるんです。絶対に油断しないでくださいね! 怪我もですよ!」
「は、はい」
何だか心配させてしまったみたいだ。
流石に心がしゅんとなって、居た堪れない。
「次からは気を付けてくださいね」
「は、はい」
エレナさん、僕のことを子供だと勘違いしている。
確かに僕の身長は百五十しかない。だけど、これでも今年で十七になる。
「エレナさん、何歳でしたっけ?」
「えっ!? えーっと、今年で十八です」
「そうですか」
僕とあんまり変わらないじゃないか。
何だか、子供扱いされていて甘やかされているみたいで、気分が悪い。
だけどこれを利用して僕はこれまで戦って来たんだ。
自分の持ち味は、活かすべきだよね。
「こほん。それでは、討伐完了の報酬をお渡ししますね」
「すみません。僕も、もっと稼げたらいいんですけど」
「何言っているんですか。天月君、私の一ヶ月の給料より稼いでいるじゃないですか」
「そうなんですか。知りませんでした」
でも少ないと思っちゃう。
それは師匠たちの影響だ。
三人の師匠は、時々冒険者として今も活動を続けている。
いつか、あんな風になりたいなと夢を見てしまう僕だった。
すると街行く人たちの冷ややかな視線が、痛かった。
「おいおい天月。大丈夫かよ。頭から血が出てるぞ!」
「あっ、魚屋さん。大丈夫です、これ魔物の血ですから」
「そ、そうか? 洗った方がいいぞ」
「冒険者ギルドで討伐報告をしたら、洗います。あっ、見てくださいよこれ!」
僕はさっき捕まえた魚を見せた。
袋の中には生きたままの川魚が今も泳いでいる。
三匹の魚たちは、丸々太って美味しそうだった。
「ほぇー、美味そうなオイカワじゃねえか!」
「美味しいですよね。魔物を倒した後に通った川で偶然見かけたんですよ」
ちなみに素手で魚を捕った。
だって仕方ない。
釣り竿なんて持って来てないから。
「これ、今日の晩御飯にします」
「そうか。そうだ、またいい魚が入ったらすぐに教えてやるからな!」
「助かります」
「いいってことよ。それじゃあ気をつけてな!」
魚屋さんは、天月に手を振った。
天月も手を振りかえすと、冒険者ギルドを目指してまっすぐ歩いていた。
天月が住むこの町は、〈マルシア〉と言って、王都からそれなりに離れた場所にあった。
それでもこの町はとても賑わっている。
近くの村に住む人たちは、たいていこの町に来て買い物をする。
それに物流も発達している上に、仕事にも困らない。
何せこの辺りは魔物が多くて、〈マルシア〉は凶悪な魔物と戦って収入を得る、いわゆる冒険者が比較的多い町だった。
それだけじゃない。
いろいろな種族の人が暮らしていて、とても賑やか。
冒険者の間でも仲のいい人は多いし、僕のことを慕ってくれる人(優しくしてくれる人)もいる。
だからとても暮らしやすいし、ゆるりとした生活を送るには、もってこいの町だった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
冒険者ギルドは今日も賑わっていた。
しかし僕が中に入ると、皆んなの視線が一手に集中してしまう。
だけどそんなのわかっていた。
だってこんな子が来たら、びっくりするもんね。
「どうしたんですか、天月君!」
「あっ、エレナさん。ホブゴブリン、無事に討伐しましたよ」
僕は率直にそう言った。
すると、エレナさんは僕の頬を押さえ込んだ。
どうしたんだろ?
「それは後でいいですから。とにかく頭の血。大丈夫ですか?」
「はい。これ、僕のじゃなくてホブゴブリンの血ですから」
そんなに僕の血に見えるのかな?
魔物の血ぐらい、人間の血の匂いと違うからすぐにわかるのに。
「それならよかったですけど。まさか、何か酷い目に遭ったんじゃないかと思って心配しちゃいましたよ」
「子供じゃないから大丈夫です。それに僕、こう見えてCランク冒険者ですよ?」
「それはそれです。いくらランクが高い冒険者でも、相手によっては油断して命を落とすこともあるんです。絶対に油断しないでくださいね! 怪我もですよ!」
「は、はい」
何だか心配させてしまったみたいだ。
流石に心がしゅんとなって、居た堪れない。
「次からは気を付けてくださいね」
「は、はい」
エレナさん、僕のことを子供だと勘違いしている。
確かに僕の身長は百五十しかない。だけど、これでも今年で十七になる。
「エレナさん、何歳でしたっけ?」
「えっ!? えーっと、今年で十八です」
「そうですか」
僕とあんまり変わらないじゃないか。
何だか、子供扱いされていて甘やかされているみたいで、気分が悪い。
だけどこれを利用して僕はこれまで戦って来たんだ。
自分の持ち味は、活かすべきだよね。
「こほん。それでは、討伐完了の報酬をお渡ししますね」
「すみません。僕も、もっと稼げたらいいんですけど」
「何言っているんですか。天月君、私の一ヶ月の給料より稼いでいるじゃないですか」
「そうなんですか。知りませんでした」
でも少ないと思っちゃう。
それは師匠たちの影響だ。
三人の師匠は、時々冒険者として今も活動を続けている。
いつか、あんな風になりたいなと夢を見てしまう僕だった。
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