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7話 変わらぬ街並み

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 コージー達は黒毛和バイソンを回収した。
 その後、コージー達は歩き出した。

「そう言えば、まだあなたの名前を聞いてなかったよね?」
「えっ?」

 コージーとファインは一緒に歩いていた。
 ここから一番近い街。まずはそこまで行ってからだ。
 情報は有限。故に、自分の足で稼ぐのだ。

 しかしながら、コージーは肝心なことを言っていなかった。
 ファインは自己紹介をしてくれたのに、コージーはまだしていない。
 だからだろうか、詰め寄られたことで頬を掻く。

「そうだっけ? あー、そうだったかも」

 コージーはふと忘れていた。
 ここは謎のゲームの中。あくまでもプログラムで構築されている。
 だからだろうか、目の前に居る超絶美少女も、NPCの一人でしかない。
 とは言え、細菌のゲーム。姉ちゃん達のことを知っているからこそ、NPCと言えど生きていると理解できた。

「俺は大神……」
「狼?」
「じゃなかった。俺はコージー。よろしく」

 咄嗟に本名を語るのをコージーは止めた。
 それもそのはず、例えNPC相手だったとしても、そこから情報が流出して個人情報がダダ洩れになると大変だ。
 自分の一瞬の過ちを収めると、ホッと胸を撫で下ろした。

「こちらこそよろしくね。ところでコージー君。黒毛和バイソンなんだけど……」
「ああ、回収したよ」
「か、回収? どういうこと?」
「どうもこうもなくて……まあ、それは後回しにしよ。とりあえず街だよ、街」

 コージーは一旦話をすり替えた。
 するとファインは首を捻るが分かったくれたようで、街のことを教えてくれる。

「えっとね。ここから一番近い街は、アメリア」
「アメリア?? それじゃあ国の名前は」
「国の名前? ミルキー王国だけど。あっ、でもね王都じゃないんだよ? 王都はここから北に少し行って中央の……」

 コージーはファインの情報を聞き流してしまった。
 それもそのはず、名前が余りにもギリギリ過ぎる。
 何処かからか怒られないか不安になると、コージーは視線だけが置いて行かれてしまった。まるで時間が抜けて行くみたいに錯覚する。

「コージー君?」
「あっ、ごめん。とりあえず街のことは分かったよ。……まさか飴が有名とかじゃないよね?」
「全然ないけど、なにと勘違いしているの?」
「そっか。そっか、そっか……それは安心したよ」

 これで最悪の言いがかりは回避できた。
 デバッカーとして関の山を超えると、コージーは今一度安堵する。
 安堵してばかりで何がバグでバグじゃないのか分からず、一人で困惑していた。

「コージー君って、ちょっと変?」
「ファインに言われたくない」
「えっ? な、なにが変なの!」
「それは自分でよく分かって……いないか」

 ファインの態度を見ていると、自分の役割は分かっているはずだ。
 けれどレベル92は伊達じゃない。
 そこにだけ目を向ければ、圧倒的に強いのだ。

「もう! 初対面の人になんで揶揄われれるの!」
「それはファインが優しいから」
「優しいからってなにをしてもわけじゃないんだよ!」
「分かってるよ」
「分かってないよー!」

 街までの道中はとにかく笑いに飛んでいた。
 しょうもない雑談ばかりで、聞いていてもまるで実にはならない。
 それでもコージーはファインの話が面白くて、聞き流すように笑っていた。



 コージー達は街までやって来た。
 否、コージーにとっては初めてで、ファインは戻って来たのだ。
 
 そこはアメリアと言う名前の街。
 ミルキー王国の首都(王都)ではなく、かなり離れた街。
 けれど様々な種族が入り乱れ、活気もあり、商売も賑わっている。とても愉快な街だ。

 その印象を一発で受けたのは、とにかく多種族が闊歩していること。
 もちろんそれはいいことで、この世界の色を濃く表している。
 とにかく面白い。コージーはあんぐりと口を開けると、ボーッと眺めてしまっていた。

「コージー君、私寄りたい所があるんだけどいいかな?」
「もちろん良いけど、俺はどうする?」
「うーん、コージー君も来ていいよ」
「俺もいいの? ちなみに何処行くの?」

 コージーはファインのことをチラリと見る。
 恐らくと言うべきか、想像が容易いと言うべきか、ファインの見た目を考えるとギルド的な所だろう。改めて想像が働くと、コクリと首を縦に振る。

「ギルド?」
「うん。私、こう見えて冒険者だから!」
「こう見えてもなにも冒険者っぽいけど……あれ、勇者じゃなかったっけ?」
「うっ、それは言わないでよ。私、勇者は勇者だけど、一番弱いから……」
「弱い? あのレベルで弱い? 他の勇者がどれだけ強いのか、ってか他の勇者ってなに?」

 コージーは自分口走った言葉に違和感を覚える。
 ヘラヘラと心の中で笑ってしまうと、ファインはコージーのことを気持ち悪そうに見ていた。

「コージー君、気持ち悪いよ」
「表情には出てないはずだけど?」
「ってことは心の中では変なこと思ってるんだ。いいよーだ。私は弱いけど、弱いなりに頑張ってるから。だから早く行こ。こんな所にいても仕方ないでしょ?」
「そうだね。それじゃあ行こっか、冒険者ギルド!」

 何故かテンションが沸々と沸き上がっていた。
 コージーはファインと絶妙にテンション感が噛み合わなかった。
 けれどそんなことは如何だっていい。とにかくまずは冒険者ギルドに行ってみることにワクワクしていた。
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