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1話 女勇者、追放される

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「ファイン、お前はこのパーティーから出ていけ!」

 少女は少年にそう言いつけられてしまった。

「ま、待ってよ。出て行けってどういうこと?」
「言葉の通りだ。お前はこのパーティーには相応しくない。役に立たない奴は追放だ!」
「そ、そんな……」

 少女は少年に言いつけられてしまい、口を噤んでしまう。
 唇をプルプルと震わせると、悔しくて仕方がない。

 少女の名前はファイン。ファイン・ピーチフル。
 こう見えて、勇者だ。
 その顔立ちは整っている上に可愛らしい。
 格好はまるで勇者のようで、装飾品の類がたくさん身につけられていた。

「ブレイン君、私は頑張ってるよ?」
「頑張ってるだけで勇者が務まると思うのか?」

 ファインが口にした少年はブレイン。ブレイン・パイナッポー。
 ファインと同じく勇者であり、勇者同士数人の仲間達と共にパーティーを組んでいた。
 ツンツン頭はまさにパイナップル。
 背中には巨大な剣を背負っており、この世界では剣の勇者として名を馳せていた。

「そ、それは……」
「第一ファイン。お前は勇者として、なにもしていないだろ」
「そ、そんなこと……ちゃんと戦ってるけど」
「ふん。戦うだと? お前がまともに戦って、街の人達を守ったことがあるのか? 無いだろ」
「ううっ」

 ブレインの言うことは一言一句合っている。
 正しすぎて私は口を噤んでしまう。
 何も言い返せないのは、私自身がブレインの言う通り、まともに戦った挙句、勝利を掴み取った覚えがないのだ。

「で、でも!」
「それにだ。永遠の勇者なんて、なんの意味がある。飾りだけの勇者なんて、不必要だろ。なぁ、みんな?」

 ブレインは他の仲間達に委ねる。
 するとブレインの萎縮される睨みに視線を奪われ、コクリコクリと首を縦に振る。

 完全に味方は居ない。
 ファインは一人ぼっちにされてしまう。

「み、みんな?」
「「「……」」」

 残念なことにだんまりだった。
 ファインは完全に孤立してしまう。
 目を泳がせるかつての仲間達にファインは唇を噛むと、グスンと鼻を鳴らす。

「分かっただろ。お前はいらないんだよ」
「いらないって……それじゃあ私はどうしたら……」
「ふん。せいぜい勇者の皮を被って生きていけばいいんじゃねぇの?」

 ブレインはファインの感情を逆撫でる。
 しかしただ逆撫でる訳じゃない。
 完全にバカにしたような言い分で、ファインも苛立つが、奥歯を噛みながら、今にも腰の剣を抜刀したくなる。

「私は、私は……くっ!」

 ファインは膝を突いて崩れてしまう。
 しかしブレインはそんな心底傷付いたファインを前にしても、一切余談にしない。

「それよりファイン。お前の剣、最後に俺に譲れよ!」
「はっ!?」

 ブレインはファインに口走った。
 心が痛い。グサリと突き刺さったまま、ファインは嫌な顔をした。

 むしろと言うべきか、それも致し方ないと言うべきか、ファインはブレインに抗議を入れる。
 そんなバカげた真似を、ファインがするはずがない。

「この剣はダメ!」
「なんでだよ。永遠の勇者が持っていていいものじゃないだろ!」
「剣の勇者だからって、選定の剣を欲しがるのは良くないと思うから!」

 ファインが手にしていたのは選定の剣。
 そんな剣は、たとえ剣の勇者であろうが許されない。
 だからこそ、ファインはブレインのことを叱った。

「うるさい! 永遠の勇者が持っているなんて剣の勇者である俺が、世間が、絶対に……」

 ブレインはファインの剣を奪おうとする。
 しかしファインは強引に離れると、その場から引き下がる。
 グッと足を引くと、お互いに膝を突いてしまった。
 
「「うわぁ!」」

 ファインとブレインは転んでしまった。
 尻餅を突いて、ファインは目から涙を浮かべる。
 ポタポタと床に涙の粒が滴っていた。

「私、もっと、強くなりたい……みんなに慕われるんじゃなくて、私が私であるために……ために、ぐすん」

 ファインは泣きじゃくってしまった。
 ポタポタと流れる涙の粒。
 気持ちがブルーになってしまい、ファインの涙が選定の剣に触れた。

 ポチャン!

 ファインの涙が剣に触れた。
 すると選定の剣がカタカタと揺れる。
 ファインはその異常性に目を見開くと、首を横に振ってしまった。

「あれ?」
「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」」

 急に選定の剣が眩く輝く。
 視界を奪われる眩い煌めき。
 雷撃が降り注ぎ、雷鳴がピカリと音を奏でた。

「な、な、な、なに!?」

 ファインは見たことがなかった。こんなことになるなんておかしい。
 急激な光が真白くなり、この場にいる全員の視界を奪い去ると、頭の中が空っぽになる。

「一体……な、なにがどうなって!」
「なにが起きてるの?」

 ファインもブレイン達も頭を悩ます。
 むしろ考えることさえできなくなる。
 それだけの眩く白い輝き、その中には幾つもの黒い影も浮かび上がっていたが、そんなことは一切気にならず、むしろ気にしてられないほどで、ファイン達は一時的な光に囚われるのだった。
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