7 / 16
第1章 ティッシュの花
5
しおりを挟む
3月13日
今日は久々の飲み会の予定だったが、昨夜からの蕁麻疹の影響かあまり体調が芳しくないので自重した。久しぶりに会える人もいたのでとても残念だったが、お金の心配をしながら飲むのも粋じゃないかななどと思ってもいたので、微妙な安堵感もあった。たかだか安い居酒屋に行くだけのことなのに、と思うと何とも複雑な気分になる。こんな話、誰に言ってみたところでみっともないだけだが、それでも誰かに聞き流してもらえたら少しは気も紛れるのに。渋谷のガード下、今はもう潰れてしまったけど、あの店のアジフライが無性に食べたくなった。
メンタルの通院では特別な指導はなく、いつもどおりの薬をもらった。胃腸薬は今回は無しになった。明日は、以前本命視していた会社の7回目の面接だ。会長ではなく社長面接になったそうだ。いずれにしても今回こそ最後だろう。ここまでやって来たのだ、目一杯で行ってこよう。
3月14日
社長面接。7回目の面接所要時間は実質20分。果たしてこれで結論は出るのだろうかと不安になる。人事部長はこれで最終的な結論を出すと言っていたが、似たような話は既に何度か聞いた気がする。
来週、火曜日に面接の決まった会社はいきなり社長面接で一発勝負の短時間で決めてしまうらしい。早く結果の欲しい今となっては、ありがたい話だが、本当にそれでいいのだろうかとも思う。いい加減なマッチングは、結果もいい加減なものになってしまう可能性が高いことを、経験者は語る。
それはそうとして、第一志望の会社から最終面接の案内が来ない。これもそろそろ結論を出して欲しいのだが。来週は山になりそうだ。というか山になって欲しいものである。とにかく頑張らなくっちゃ、だ。
3月15日
明日は通院なので仕事は休み。最近よく顔を合わせる同僚のイザワ君は明日も仕事らしいのだが、私が休みなら休みたいなと言っていた。以前話した時に「正社員になるなら『フォーク(リフト)』の資格を取ったらいいです」と熱心に勧めてくれて、
「ハナサキさんなら絶対正社員になれますよ」
と太鼓判を押してくれたイザワ君。倉庫中を縦横無尽に走り回るフォークリフトは恰好良かったが、狭いスペースでモノを避けながらの運転は、相当に難しそうだった。
明日は人材銀行に登録に行ってから病院に行く。期待は薄いがとにかく一箇所決まればいいのだから少しでも可能性のあるところには網をはっておこうと思う。きっと大丈夫だと、自分で自分に暗示をかける。太鼓判を押してくれたイザワ君の為にも、私は頑張らなくちゃいけないのだ。
3月17日
つい先ほど、悪い知らせがあった。役員面接を待っていた第一志望の会社からNGの連絡だった。せめて役員面接を受けた上で結論をもらいたかった、とも思うが、それはそれでショックが大きかっただろう。縁がなかったものと思って潔く諦めよう。明日は、初トライにして恐らく最終面接になるだろう会社に行く。とにかく全力でぶつかるのみだ。いつも思うことではあるが、今度こそここが正念場だ。
週初めの月曜早々、仕事にあぶれてしまったので今日は読書の日になった。頼みの図書館が休館日だったのでやむを得ずデパートで読書をした。あまり長時間座っていて不審がられてもいけないので、適当な時間で2階から1階、そしてまた2階へと場所を移した。何故こんなに気を使いながら時間つぶしをしないといけないのだろうと思うが、他にどうしようもないのが実際だった。昼食はカロリーメイトと缶コーヒー。早くまっとうな仕事に就かないと身体まで壊しかねない。何とかしなくては。
3月18日
面接が夕方だったので学校を卒業式の準備の関係で早帰りしてきた末娘と中古品の買取屋にいった。ゲームのコインとテレカを6枚(50度数)を買取依頼したが、買い取り価格は1,520円也。テレカは新橋のチケット屋なら50度数1枚300円で引き取ってくれるのだが、ここでは250円換算。需給関係、田舎のつらさということなのだろう。娘はラブベリとたまっごちカードの束売りを買って上機嫌だった。まあそれだけでも来て良かったなと思った。
3月20日
今日は雨。お彼岸だというのにとっても寒い。またしても仕事がなかったので、末娘と図書館とデパートのゲームコーナーに行ってきた。500円で1時間遊べるコーナーに入る。ボールプールや風船でいっぱいの部屋、究極にのんびりしたメリーゴーランドや透明なプラスチックに噴水が仕込まれた滑り台、自動で上下するシーソー等どれもとてもカラフルな遊具が沢山あった。
風船の部屋にはドーナツのぬいぐるみを二つ抱えてひたすらクルクル回転して、挙句に目を回して倒れ込んでしまう謎の少年や、二つある風船の部屋の片方に全ての風船を集めて、何故か不気味な笑みを浮かべる少女など個性的な子供たちが登場。何ということもない遊び場だったが、1時間はあっという間に過ぎていった。気に入った様子だったおみやげでもらった風船が駐車場で割れてしまったのだが、
「お菓子があるからいいや」
と泣いたり悔しがったりしなかった娘を見て、随分成長したものだと感じた。もうこの春には小2になる。
3月21日
金曜日、週末であまりたくさんの入荷がなかったので、棚の整理や出荷の手伝い等でポツリポツリと仕事が入るという感じで時間が長く感じられた。それでいて最後にちょっとバタバタと仕事が入ったので何だか疲れた一日になった。来週は月曜日も同じ勤務先に行けそうだ。
エージェントから、例の7度の面接を重ねた会社はどうやらまだ結論が出ないらしいと連絡があった。一体どうなるのだろう。あまり期待し過ぎると落ちた時のショックが大きいので、もう諦めておいた方が良いのかも知れない。
(続く)
今日は久々の飲み会の予定だったが、昨夜からの蕁麻疹の影響かあまり体調が芳しくないので自重した。久しぶりに会える人もいたのでとても残念だったが、お金の心配をしながら飲むのも粋じゃないかななどと思ってもいたので、微妙な安堵感もあった。たかだか安い居酒屋に行くだけのことなのに、と思うと何とも複雑な気分になる。こんな話、誰に言ってみたところでみっともないだけだが、それでも誰かに聞き流してもらえたら少しは気も紛れるのに。渋谷のガード下、今はもう潰れてしまったけど、あの店のアジフライが無性に食べたくなった。
メンタルの通院では特別な指導はなく、いつもどおりの薬をもらった。胃腸薬は今回は無しになった。明日は、以前本命視していた会社の7回目の面接だ。会長ではなく社長面接になったそうだ。いずれにしても今回こそ最後だろう。ここまでやって来たのだ、目一杯で行ってこよう。
3月14日
社長面接。7回目の面接所要時間は実質20分。果たしてこれで結論は出るのだろうかと不安になる。人事部長はこれで最終的な結論を出すと言っていたが、似たような話は既に何度か聞いた気がする。
来週、火曜日に面接の決まった会社はいきなり社長面接で一発勝負の短時間で決めてしまうらしい。早く結果の欲しい今となっては、ありがたい話だが、本当にそれでいいのだろうかとも思う。いい加減なマッチングは、結果もいい加減なものになってしまう可能性が高いことを、経験者は語る。
それはそうとして、第一志望の会社から最終面接の案内が来ない。これもそろそろ結論を出して欲しいのだが。来週は山になりそうだ。というか山になって欲しいものである。とにかく頑張らなくっちゃ、だ。
3月15日
明日は通院なので仕事は休み。最近よく顔を合わせる同僚のイザワ君は明日も仕事らしいのだが、私が休みなら休みたいなと言っていた。以前話した時に「正社員になるなら『フォーク(リフト)』の資格を取ったらいいです」と熱心に勧めてくれて、
「ハナサキさんなら絶対正社員になれますよ」
と太鼓判を押してくれたイザワ君。倉庫中を縦横無尽に走り回るフォークリフトは恰好良かったが、狭いスペースでモノを避けながらの運転は、相当に難しそうだった。
明日は人材銀行に登録に行ってから病院に行く。期待は薄いがとにかく一箇所決まればいいのだから少しでも可能性のあるところには網をはっておこうと思う。きっと大丈夫だと、自分で自分に暗示をかける。太鼓判を押してくれたイザワ君の為にも、私は頑張らなくちゃいけないのだ。
3月17日
つい先ほど、悪い知らせがあった。役員面接を待っていた第一志望の会社からNGの連絡だった。せめて役員面接を受けた上で結論をもらいたかった、とも思うが、それはそれでショックが大きかっただろう。縁がなかったものと思って潔く諦めよう。明日は、初トライにして恐らく最終面接になるだろう会社に行く。とにかく全力でぶつかるのみだ。いつも思うことではあるが、今度こそここが正念場だ。
週初めの月曜早々、仕事にあぶれてしまったので今日は読書の日になった。頼みの図書館が休館日だったのでやむを得ずデパートで読書をした。あまり長時間座っていて不審がられてもいけないので、適当な時間で2階から1階、そしてまた2階へと場所を移した。何故こんなに気を使いながら時間つぶしをしないといけないのだろうと思うが、他にどうしようもないのが実際だった。昼食はカロリーメイトと缶コーヒー。早くまっとうな仕事に就かないと身体まで壊しかねない。何とかしなくては。
3月18日
面接が夕方だったので学校を卒業式の準備の関係で早帰りしてきた末娘と中古品の買取屋にいった。ゲームのコインとテレカを6枚(50度数)を買取依頼したが、買い取り価格は1,520円也。テレカは新橋のチケット屋なら50度数1枚300円で引き取ってくれるのだが、ここでは250円換算。需給関係、田舎のつらさということなのだろう。娘はラブベリとたまっごちカードの束売りを買って上機嫌だった。まあそれだけでも来て良かったなと思った。
3月20日
今日は雨。お彼岸だというのにとっても寒い。またしても仕事がなかったので、末娘と図書館とデパートのゲームコーナーに行ってきた。500円で1時間遊べるコーナーに入る。ボールプールや風船でいっぱいの部屋、究極にのんびりしたメリーゴーランドや透明なプラスチックに噴水が仕込まれた滑り台、自動で上下するシーソー等どれもとてもカラフルな遊具が沢山あった。
風船の部屋にはドーナツのぬいぐるみを二つ抱えてひたすらクルクル回転して、挙句に目を回して倒れ込んでしまう謎の少年や、二つある風船の部屋の片方に全ての風船を集めて、何故か不気味な笑みを浮かべる少女など個性的な子供たちが登場。何ということもない遊び場だったが、1時間はあっという間に過ぎていった。気に入った様子だったおみやげでもらった風船が駐車場で割れてしまったのだが、
「お菓子があるからいいや」
と泣いたり悔しがったりしなかった娘を見て、随分成長したものだと感じた。もうこの春には小2になる。
3月21日
金曜日、週末であまりたくさんの入荷がなかったので、棚の整理や出荷の手伝い等でポツリポツリと仕事が入るという感じで時間が長く感じられた。それでいて最後にちょっとバタバタと仕事が入ったので何だか疲れた一日になった。来週は月曜日も同じ勤務先に行けそうだ。
エージェントから、例の7度の面接を重ねた会社はどうやらまだ結論が出ないらしいと連絡があった。一体どうなるのだろう。あまり期待し過ぎると落ちた時のショックが大きいので、もう諦めておいた方が良いのかも知れない。
(続く)
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
ダブルファザーズ
白川ちさと
ライト文芸
中学三年生の女の子、秋月沙織には二人の父親がいる。一人は眼鏡で商社で働いている裕二お父さん。もう一人はイラストレーターで家事が得意な、あっちゃんパパ。
二人の父親に囲まれて、日々過ごしている沙織。
どうして自分には父親が二人もいるのか――。これはそれを知る物語。
【R15】いなか、の、じけん~ハートは意外と頑丈だった
あおみなみ
現代文学
1979年春。
小学5年生になったばかりの「久美」は、
母親にないがしろにされることを少し気に病みつつも、
平々凡々とした毎日を送っていたが、ある日突然、事件に巻き込まれる。
(軽い性的表現がありますので、閲覧にはご注意を)
僕と若葉とサッカーボール ~4歳年下の生意気な女の子は、親友だったヤツの大切な妹~
くしなだ慎吾
青春
四年前、十二歳の時に無二の親友を事故で亡くした神村綾彦(かみむらあやひこ)は、それ以来その亡くなった親友の妹である竹原若葉(たけはらわかば)を、自分の妹代わりのようにしてきた。
二人の歳の差は四歳。高一になった綾彦にとって、まだ小六の若葉は子供扱いをする相手。けれど若葉にとっての綾彦は少し様子が違って、兄代わり以上にある程度異性として意識をし始めている様子。物語はそんな二人の年代から始まる。
第4回ほっこり・じんわり大賞にエントリーしています。よろしければ応援お願いいたします。
カラダから、はじまる。
佐倉 蘭
現代文学
世の中には、どんなに願っても、どんなに努力しても、絶対に実らない恋がある……
そんなこと、能天気にしあわせに浸っている、あの二人には、一生、わからないだろう……
わたしがこの世で唯一愛した男は——妹の夫になる。
※「あなたの運命の人に逢わせてあげます」「常務の愛娘の『田中さん』を探せ!」「もう一度、愛してくれないか」「政略結婚はせつない恋の予感⁉︎」「お見合いだけど、恋することからはじめよう」のネタバレを含みます。
いつかの月ひとめぐり
おくむらなをし
現代文学
毅(たけし)は会社の金をくすねてボコボコにされ河川敷に捨てられた。
その日、父親からの連絡で聞かされたのは、兄が職場で倒れ意識不明の状態だという事。
ワケあって兄に預けていた娘の今後について話し合うため、毅は一時帰省する。
たったひと月、けれど大切なひと月の話。
◇この物語はフィクションです。全31話、完結済み。
これも何かの縁(短編連作)
ハヤシ
現代文学
児童養護施設育ちの若夫婦を中心に、日本文化や風習を話題にしながら四季を巡っていく短編連作集。基本コメディ、たまにシリアス。前半はほのぼのハートフルな話が続きますが、所々『人間の悪意』が混ざってます。
テーマは生き方――差別と偏見、家族、夫婦、子育て、恋愛・婚活、イジメ、ぼっち、オタク、コンプレックス、コミュ障――それぞれのキャラが自ら抱えるコンプレックス・呪いからの解放が物語の軸となります。でも、きれいごとはなし。
プロローグ的番外編5編、本編第一部24編、第二部28編の構成で、第二部よりキャラたちの縁が関連し合い、どんどんつながっていきます。
あの日見た空の色も青かった
木立 花音
現代文学
あの日、あの海、生きる意味を教えてくれたのは彼女だった──
多くの死者がでる重大なバス事故を起こした青年、逢坂部賢悟(おおさかべけんご)
彼は静養のため全てのものを捨て、静養のため岩手県宮古市にある景勝地、浄土ヶ浜(じょうどがはま)を訪れる。
その地で彼は、白木沢帆夏(しらきさわほのか)と名乗る女子大生と出会った。彼女の母方の実家が営んでいるという民宿で滞在期間を過ごしているうちに、次第に彼女に惹かれていく自分に気がつく。
やがて恋に落ちる二人。だが、重大な事故を起こしたという重苦しい過去が、罪の十字架となって彼の肩にのしかかる。
「二年だけ、待って欲しい」
悩み抜いた末に結論をだした翌日。彼は、白木沢帆夏の驚愕の真実に触れる──。
※表紙絵はいぬちよ様からの頂きものです。
※「景勝地 浄土ヶ浜」の挿絵はファル様。「告白」の挿絵は騰成から頂いたファンアートです。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる