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妖精の森テーマパーク~お菓子の家にまつわる哀しい半獣人の詩 ③麦わら帽子の匂い
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私は、長閑な風景の中にポツンとある「お菓子の家」にまつわる、どこにも記録のない話を聞いた。この吟遊詩人の創作なのかもしれない。
「面白かったよ。どうもありがとう」
と礼を言う。しかし、たった今まで、滔々と話をしてくれた吟遊詩人は、もう跡形もなくそこにいなかった。
ああ、そうか。ここには妖精が住んでいたんだったな。私は妖精フィギュアの話を思い出し、木立の間を覗いてみた。
「あ、やっぱり。あった、あった」
木立の中でこちらを覗いてる影。10センチほどの円柱の身体に丸い頭の乗った不思議な動物のフィギュアだ。これも妖精だっただろうか。確かニロニ......。だったかな。
鼻のどこかに残っていた吟遊詩人の麦わら帽子の匂いが風に乗って飛んでいってしまうと、そこには春から初夏へと移ろっていく空気が、古の時を超えて佇んでいた。
悲壮なる運命を生きたこの姉妹にも、半獣人スニーフにも、生きていた時代に少しでも幸せな時間があったと思いたい。いや。きっとあったに違いない。だからあんなに幸せそうな寝顔を残してくれたのだろう。
私はこの「お菓子の家」を壊さずに残してくれた誰かに向けて手を合わせた。
青空が少しずつ色を変えていく。瞬く間の休日だった。明日からの仕事に妖精が出てくることはないだろうが、今日歩いたこの武蔵野の森の思い出は消えることはない。後ろをついてきている妖精たちを感じながら、私は振り向かずに森を後にした。
(完)
「面白かったよ。どうもありがとう」
と礼を言う。しかし、たった今まで、滔々と話をしてくれた吟遊詩人は、もう跡形もなくそこにいなかった。
ああ、そうか。ここには妖精が住んでいたんだったな。私は妖精フィギュアの話を思い出し、木立の間を覗いてみた。
「あ、やっぱり。あった、あった」
木立の中でこちらを覗いてる影。10センチほどの円柱の身体に丸い頭の乗った不思議な動物のフィギュアだ。これも妖精だっただろうか。確かニロニ......。だったかな。
鼻のどこかに残っていた吟遊詩人の麦わら帽子の匂いが風に乗って飛んでいってしまうと、そこには春から初夏へと移ろっていく空気が、古の時を超えて佇んでいた。
悲壮なる運命を生きたこの姉妹にも、半獣人スニーフにも、生きていた時代に少しでも幸せな時間があったと思いたい。いや。きっとあったに違いない。だからあんなに幸せそうな寝顔を残してくれたのだろう。
私はこの「お菓子の家」を壊さずに残してくれた誰かに向けて手を合わせた。
青空が少しずつ色を変えていく。瞬く間の休日だった。明日からの仕事に妖精が出てくることはないだろうが、今日歩いたこの武蔵野の森の思い出は消えることはない。後ろをついてきている妖精たちを感じながら、私は振り向かずに森を後にした。
(完)
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